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J2第41節 レノファ山口FC戦 プレビュー
昇格の可能性が潰えることもあり得た前節だが、京都が引き分け甲府が勝ったことで今節に繋がった。
京都が王手をかけていることに変わりはないが、できることは目の前の試合に勝つことだけ。
今節も勝利し、最終節に繋がることを願うだけだ。
1.前回対戦
甲府ホームで行われた一戦は先手を取られるも追いつき、勝ち越されるも追いつきというシーソーゲームの末、共に勝ち点1を分け合う一戦となった。
試合内容については以下のレビューご覧ください。
2.対戦成績
過去7試合の対戦は甲府の3勝3分1敗と甲府優勢となっている。
アウェイ維新みらいふスタジアムでは甲府が3戦全勝と得意としている。
J2に降格した2018年に初めて対戦。
以降7度の対戦結果となる。
ホームチームが勝てない外弁慶対決となっている。
3.前節
甲府
秋田の土俵に乗り、秋田のストロングポイントで上回った甲府が荒木、長谷川の得点で勝ち点3を掴んだ。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
山口
アウェイ松本に乗り込んでの一戦。
山口は敗れた前節北九州戦と同じメンバーで臨む。
立ち上がりは共にシンプルに前線を活用していく。
徐々に山口が佐藤謙介を中心にボールを繋ぎ、攻め手を探る展開となる。
最初にチャンスを作ったのは松本。
左サイドを外山が縦に抜け、クロスを上げると伊藤翔が関の前で触るも関が防ぐ。
山口の最初のチャンスは15分。
関のゴールキックに高井が抜け出すと圍の位置を見て、ダイレクトボレーを放つがゴールの上へと外れてしまう。
19分には松本に決定機。
CKの流れから外山のミドルシュートがゴール前の伊藤翔の足元へ。
関と一対一の形からシュートを放つが、関が防ぐ。
ビルドアップからピッチを横に広く使う山口に対し、松本はシンプルに前線のターゲット目掛けて長いボールを入れることでピッチを縦に広く使うことを狙う構図で試合が進んでいく。
36分に山口は佐藤謙介のパスに抜け出した高井が個人技からシュートを放つが、圍が防ぐ。
共に得点は取れず前半を終える。
後半に入り、松本がボールを保持し山口陣内でプレーする時間が多くなる。
55分にはCKからチャンスを作る。
セルジーニョのキックを渡部がクリアするも拾った橋内から前へ横パスを送る。
前がゴール前に入れると常田がコースを変えるが、枠を捉えられず。
57分には山口にチャンス。
草野が背後へ抜け出すが圍が飛び出し、クリアをするもこぼれ球を拾った橋本が無人のゴールへダイレクトでシュートを放つが惜しくも外れてしまう。
61分に松本は河合に代え、安東を投入する。
この交代で松本はシステム変更を行う。
中盤が逆三角形の形から佐藤、安東のボランチにセルジーニョがトップ下の形となる。
64分に松本に決定機。
関からのフィードを受けた高井の落としを奪うとショートカウンターへ。
安東のラストパスを受けた榎本が関と一対一を迎えるが、関が防ぐ。
このピンチを防ぐと今度は山口が続けてCKを獲得するが、シュートまで持っていくことができない。
飲水タイム明けに松本は榎本と外山に代え、阪野と田中パウロ淳一を投入する。
すると74分にスローインの流れから安東が右サイドを突破するとマイナスのクロスを入れる。
セルジーニョが合わせ、松本が先手を取る。
76分に山口は草野に代え、梅木を投入する。
攻撃的な選手を投入し、追いつきたい山口だが松本が山口陣内でプレーする時間が多くなる。
この時間を凌ぐと82分にはCKの流れから高井がミドルシュートを放つも圍が防ぐ。
ここから山口が続けてCKを獲得する流れとなる。
85分には渡部のヘディングがクロスバーに阻まれるが、直後のCKでゴールをこじ開ける。
池上のキックをニアで梅木が反らすとファーサイドの高井がボレーシュート。
ここは圍が防ぐが、こぼれ球を渡部がゴールに叩き込み山口が追いつく。
87分には両チーム交代を行う。
松本は伊藤と橋内に代え、鈴木と野々村を投入。
山口は田中と高木に代え、佐藤健太郎と石川を投入する。
92分には山口が池上に代え、岸田を投入。
共に選手交代を行い、活性化を図るが得点は無く勝ち点1を分け合うこととなった。
4.今季成績
両チーム比較
勝ち点76で3位甲府と勝ち点42で14位山口の一戦。
甲府は昇格の可能性を残し、山口は残留を確定させていない。
共に勝ち点3が欲しい一戦となる。
甲府
3勝1分1敗で現在3連勝中と崖っぷちに追い込まれながらも踏みとどまっている。
甲府の特徴に可変システムがある。
3バックの中央を務める選手が中盤に上がる形が目立つが、左サイドでも可変を見せている。
泉澤の起用時には泉澤がサイドに張ることで荒木が中央に侵入する形を多く見せていた。
泉澤離脱後は起用された選手によって形を変え、立ち位置を入れ替えながらローテーションさせ相手の目先を変えている。
右サイドではWBの選手の上下動がメインとなるが、プレーエリアの分布を見てみると左サイドでのプレー頻度が多いことがわかる。
左サイドにおけるプレー率を見てみるとコンビネーションプレーの率がリーグトップクラスとなっている。
逆に右サイドを見てみるとコンビネーションプレーの率が低く、ドリブルの率が高くなっている。
ここからわかるのが、左サイドではローテーションしながら複数人で相手を撹乱し右サイドへ展開して個人の仕掛けによる打開からゴールに迫る形を狙いたいということ。
では、その形は結果に直結しているのか。
まずは左サイドでのチャンス構築率を見てみたい。
ゴール率はリーグトップ、シュート率は4位と左サイドはリーグトップクラスの成績を残している。
一方で右サイドではどうか。
共に15位と右サイドはリーグでも中位以下となっている。
左で崩し、右で仕留められる形が作れていればより得点は増やせた。
山口
2勝2分1敗と勝ち越している。
3試合連続で残留を争うライバルとの試合が続いたが、1勝1分1敗と五分五分の成績となっている。
残留を目指す上では勝ち点差を考えても充分な成績ではないか。
シーズン通してのスタッツを見てみたい。
間接FKの本数がトップとなっている。
これは主に相手にFKを与えることが多いからであり、データから見ると山口はDFラインが高いチームと言える。
また、山口の特徴はボール保持率の高さ。
パス数と共にリーグ6位とボールを保持したいチームである。
以下の表はリーグ内における自陣でのポゼッションの割合を示したもである。
新潟、東京ヴェルディ、大宮についで高くなっているがいずれのチームと比較してもシュート率は低くなっている。
自陣でポゼッションする時間は長いが、シュートに繋げられる回数は少なくなっていることがわかる。
自陣でのポゼッションからのチャンス構築率を見てみたい。
シュート率は低いが、ゴール率はリーグでの中位と得点に結びつけている回数はシュートの数と比較すると高くなっている。
だが、得点数の内訳を見るとパスからの得点はあまり多くない。
最も得点を奪っているのはセットプレーからとなる。
甲府はセットプレーからの失点が多いだけに山口としては得意のセットプレーからチャンスを作りたい。
5.予想スタメン
甲府
前節から3人の変更と予想した。
山口は秋田のように特殊なチームではなく、フィジカルバトルが求められる相手ではないため関口、長谷川、宮崎をスタメンに戻すと予想。
また、ベンチには三平が戻ってくる可能性もある。
山口
前節と同じスタメンと予想した。
大宮戦以降、左WB以外は固定されており大きな変更は考えにくい。
6.注目選手
甲府
関口正大
豊富な運動量やリーダーシップを発揮し、チームに貢献しているルーキー。
堅実なプレーを見せているが、結果という面で見ると物足りなさも残る。
逆サイドの荒木が3ゴール7アシスト記録しているのに比べると2ゴール2アシストと少なくなっている。
ゴール前に絡む回数は多く、チャンスも多いだけに松本戦のような得点を期待したい。
ゴール前での恐さが増すと関口自身の価値も高まっていく。
山口
橋本健人
現役の慶應ボーイ。
特別指定選手として昨シーズンから出場を重ね、大学4年生ながらJリーグではすでに16試合の出場と経験を積んでいる。
パワフルなドリブル突破や左足のキックはJ2でも屈指のレベルにある。
近い将来、より高いカテゴリーでのプレーが期待できるタレント。
昇格争いをしている甲府相手に自分自身の力を試し、チームを勝利に導きたい。
7.展望
残留争いに巻き込まれた中で、渡邉晋前監督が退任し名塚善寛ヘッドコーチが監督に就任した山口。
就任後2試合は連敗を喫したが、その後5戦負け無しとまだ残留を確定させてはいないが残留争いからは抜け出した。
監督が代わり、山口のサッカーに変化が生じたかというと大きな変化はない。
渡邉前監督の元で築き上げた、立ち位置にこだわりボールを保持する姿勢は変わっていない。
ビルドアップの際の山口はボランチが一人DFラインに下がり、ボールを動かしていく。
3バック+ボランチでビルドアップを行っていくが、CBの両脇の選手がサイドに開き、SBのような振る舞いを見せる。
また、GKの関もビルドアップに積極的に参加していく。
サイドで幅を取る役割はWBが担い、シャドーの選手は中央に立ち縦パスを引き出すことを狙う。
ビルドアップの肝となるのは中央にポジションを取る3人。
CBの渡部とボランチの田中渉からは積極的に縦パスを通すことを狙い、佐藤謙介はサイドにボールを散らし的を絞らせない。
山口が最初に狙うのは背後であり、次いでライン間の縦パスとなる。
最前線の草野がDFラインと駆け引きし、裏抜けを狙う。
このように草野が一発で背後を取り、チャンスを作るのが最初の狙い。
タイミングが合わず、草野を活かすことが出来なくても草野の飛び出しに対しDFラインが下るだけでも効果はある。
DFラインが下がることで空いたライン間にはシャドーの2人がポジションを取り、縦パスの受け手となっていく。
山口のビルドアップの際には渡部、田中渉、佐藤謙介の3人には自由を与えてはいけない。
佐藤謙介からライン間にポジションを取った池上に縦パスが入り、幅を取った高木を経由してボランチの田中渉がミドルシュートを放った場面。
SB化したCBのヘニキが背後を回ったこともあり、DFが引き付けられたが山口は流れの中からはサイドからのクロスで最も得点を決めているだけにサイドで幅を取ることで相手にクロスを警戒させた。
この場面のように幅を取った選手を囮にすることもあるが、サイドへボールを運ぶと幅を取ったWBが縦に仕掛けてクロスを入れていくことが多くなる。
両サイド共に縦への突破を持ち味としている選手を配置しており、強引に突破する力強さも持っている。
中央には1トップ2シャドーに加え、先程の場面のようにボランチの田中渉も高い位置を取るためゴール前には人数も掛けてくる。
特に橋本の突破から逆サイドに高木が飛び込む形は警戒が必要となる。
ゴール前に人数を掛けることもあり、ボールを失った後の山口は後方にスペースがありカウンターを許すことが見られる。
ボールを奪ったらリラが積極的に背後へ飛び出し起点を作りたい。
また、ボランチ脇も空くため長谷川と宮崎の両シャドーが前向きにボールを受け、速い攻撃を仕掛けていきたい。
ご覧のようにDFラインの背後やボランチの脇にスペースがあることがわかる。
ボールを奪ってのカウンターという場面を多く作りたい。
山口最大の得点源がセットプレーとなっていることは先程見ていただいた。
約半数がセットプレーからとなっているが、主にキッカーを務める池上から精度の高いボールが入ってくる。
また、田中渉の左足も精度が高い。
どちらも前節から。
まず、1つ目はシンプルに渡部の高さを活かした場面。
前線には高さが無い山口だが、DFラインの3人は高さがあるため警戒が必要だ。
2つ目は得点場面だが、ニアサイドで反らすことでコースを変えファーサイドにフリーの選手を作ることができている。
直接ゴールを狙うこともでき、目先を変えることもできる。
セットプレーが得意なチームであるだけにパターンをいくつも持っている。
ボール保持を許した後の山口は523の形で構え、ブロックを形成する。
DFラインは高い位置に設定され、全体的にコンパクトさを保ちブロックの中を強固にしている。
ブロックの中は強固な山口だが、DFラインが高いこともあり背後への飛び出しには弱い。
この場面のようにDFラインは高く、前方への意識が強いため背後が疎かになることがある。
最前線の選手の裏抜けに対してはDFラインが高いこともあり、オフサイドに掛けることも多いが2列目から飛び出してくる選手に背後を取られることが見られる。
長谷川や宮崎が背後へ飛び出す回数を多く作っていきたい。
また、シャドーも高いポジションを取るためシャドーの裏にもスペースがある。
可変を行いながらそのエリアを長谷川や野津田が侵入することで縦パスを引き出し、前進を図りたいが山口としても警戒を強めてくるので左サイドでローテーションを行いながら山口を撹乱させたい。
前々節の松本戦のように宮崎がサイドに張ることで高木をロックし、荒木を浮かせる形を作りたい。
池上が荒木にプレッシャーを掛けに行けば、野津田を使い前進を図ることができる。
状況に合わせ、池上を動かし左サイドを起点とした攻撃で前進を図りたい。
ボールを奪いに行く際の山口はボールの流れに合わせてプレスを掛けていく。
内を消しながらプレスを掛けていくよりもリターンパスを消す形でプレスを掛ける。
だが、中央からは前進を許さないように間を締めボールへアプローチしていく。
リターンパスを消し、全体で方向を統一させながらサイドへ誘導しボールを奪いに来る。
山口としては左サイドでは甲府の選手を捕まえにくいため、奪い所とするのは右サイドの関口となるだろう。
関口がプレスを掻い潜り、突破できると一気に裏返すことができる。
山口はクロスからの失点が最多となっているだけに甲府はサイドを打開し、クロスからチャンスを作りたい。
この場面ではクロスを入れた選手への寄せも甘く、ゴール前では相手をフリーにしている。
クロスを上げる局面ではある程度の自由があるだけに冷静にゴール前の状況を認識し、正確なクロスを供給したい。
特に右のWBを務める高木は攻撃的な選手であり、献身性は備えているが守備を得意としているタイプではない。
この場面では高木はボールウォッチャーとなっており、背後を簡単に突かれている。
宮崎に高木を食いつかせることで荒木や野津田が背後を取り、クロスを入れていく形を作りたい。
だが、チャンスを作ってもゴール前には関という高い壁が立ちはだかっているだけにゴールを奪うことは容易ではない。
毎節のように関はスーパーセーブを見せている。
今節も関に防がれる場面はあるだろうが、焦れずにこじ開けられるまでチャンスを作り続けたい。
高い壁ではあるが、越えないことには奇跡は起こせない。
8.あとがき
ここまで昇格の可能性を残していることは素晴らしい。
2連勝した上で京都が2連敗しなくてはいけない状況は厳しすぎる条件ではある。
それでも可能性はゼロではない。
まずは目の前の試合に勝ち、千葉が京都を倒すことを祈りたい。
山口はまだ残留は確定させていない。
昨シーズン最下位であったことを考えると現在14位は立派な成績である。
監督交代もあり、難しいシーズンではあったが今節勝つことで自力で残留を決められる立場にあるだけに、ホーム最終戦で勝って残留を決めたい。
まだまだ諦めない!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。