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J2第4節 愛媛FC戦 プレビュー

開幕から3戦負けなし、2連勝中で迎える第4節の相手は愛媛FC。
昨シーズンのアウェイ愛媛戦は、愛媛まで行きながらも当日に試合が延期された。
まずは無事に試合が行われることを願う。

愛媛とは以前から選手の行き来が多くあり、縁があるチーム。
現在のチームにも甲府には有田、野澤が愛媛から加入しており、愛媛には内田、横谷が甲府から加入している。

1.対戦成績

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初対戦は2008年。
これまで17度の対戦を経てきたが、甲府から見て9勝5分3敗と相性が良い相手と言える。

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アウェイ、ニンジニアスタジアムでの一戦は3勝3分2敗と五分の成績。
だが、敗れた試合は2008年と2009年となっており、アウェイでは直近5試合負けていない。

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J2に降格して最初のシーズンはホームで敗れたものの、伊藤監督就任後は初戦で引き分けて以降、3連勝中。
甲府にとっても、伊藤監督にとっても相性が良い相手となる。

2.前節

甲府

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天敵栃木との一戦は、栃木の土俵に立ち相手を上回り勝利を収めた。
内容についてはレビューをご覧下さい。

愛媛

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愛媛はアウェイで長崎との一戦。
長崎がボールを握り、愛媛がブロックを敷き耐える展開となる。
長崎は愛媛の右SB茂木の裏のスペースからチャンスを作っていく。
亀川、ルアンのコンビを止められない愛媛だが、徐々にボールは持てるが長崎が前進できない展開となっていく。
ワンチャンスを物にして愛媛が先制に成功する。
右サイドからカットインした川村がミドルシュートを放つと、こぼれ球に吉田が詰めて先制に成功する。
立ち上がりは長崎が優位に試合を進めていたが、愛媛が対応し前半の終盤には愛媛が試合をコントロールする展開となり、前半を終える。
後半に入り、長崎が次々にチャンスを作っていくが秋元の活躍もあり得点を許さない。
だが、我慢できたのも5分だけ。
富樫がDFラインの背後へ飛び出し、秋元よりも先にボールに触れゴールに吸い込まれた。
その後も何度も長崎がチャンスを作るも秋元が立ちはだかる。
68分には昨シーズンまで甲府でプレーした内田健太が投入される。
茂木のクロスからチャンスを作るも得点には至らない。
82分には交代枠を使い切り、勝ち点3を狙いにいく。
終盤には共に決定機を作るが両GKが立ちはだかり、引き分けに終わった。

3.今季成績

両チーム比較

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3戦負けなしの甲府と3戦勝ちなしの愛媛。
監督就任3年目と就任1年目のチームで完成度の差が結果にも表れている。

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概ね甲府の方が良い数値となっている。
リーグでの順位通りのスタッツと言えるだろう。
愛媛が上回っているのはクロス数、スローイン数、クリア数、ペナルティエリア侵入数。
このデータからわかるように今シーズンの愛媛はシンプルにゴール前に入れていくチームであることがわかる。

甲府

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目立つのはゴールやシュートといった得点に繋がる数値。
昨シーズン得点力不足に悩まされていたが、今シーズンは3試合で5得点と得点力不足解消に目処が立ってきた。
FWの得点、流れの中での得点の少なさは課題となるが、セットプレーの強さはリーグ屈指となっている。

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ピンクがセットプレーからの得点となっているが、リーグトップの3得点を挙げていることがわかる。
荒木が2アシストの内CKから1アシスト、野津田が1アシストで大宮戦でも1得点演出しており2人の優れた左足のキッカーが得点力向上を支えている。

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守備については被シュート、被チャンス構築率がリーグトップとなっている。
リーグ5位の2失点であるが、データから見るとリーグで最も守備が堅いチームと言える。
失点はクロスからとセットプレーからとなっているが、共にファーサイドでマークが外れフリーで先に触られての形。
千葉戦では高さのある相手選手に対し、メンデスと荒木の関係性が良くなく上から叩かれてしまった。
この点はコミュニケーションを取ることで解消していけるだろう。
栃木戦の失点はCKからニアでクリアしきれなかったボールが背後に流れ、先に触られてしまい失点。
ゾーンで守るチームはファーサイドが空いてしまう。
この場面では大外で守っていた山田がボールウォッチャーとなっていて、自分の外から現れた選手に気づいていなかった。
どちらも防げる失点なだけに、より集中力を保つことで強固な守備は築ける。

愛媛

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ほとんどの数値がリーグ平均を下回っている。
突出した特徴があるチームではないが、クリア数と30mライン侵入回数に対してペナルティエリア侵入回数が多いことが特徴となっている。
これはなるべく敵陣にボールを送り込みたいことの証である。

今シーズンの愛媛は残留に向けて現実的な戦い方を志向している。
失点を減らし、勝ち点を稼いでいきたいところだが3試合で喫した失点は5つ。
リーグで4番目に多い失点数となっている。

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失点が多くなっている要因にシュートを多く打たれていること、チャンスを多く作られていることがわかる。
現状では和泉監督の目指すサッカーにおいての完成度は低いと言える。

4.予想スタメン

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甲府
前節採用した352システムが良かっただけに、継続も考えたが今節は今シーズン目指していることをベースに戦うと予想した。
メンバーは大宮戦のメンバーから野澤に代えて野津田と予想したが、有田に代えて山田を起用し、最前線に三平を入れる形であれば前節の352との併用もできる。
野津田のボランチ起用はシーズンに入ってから一度も試してはいないが、キャンプでは主にボランチで起用されてきた。
前節、荒木と泉澤との関係性が良かったことと守備面での貢献度が高かったことから今節は先発でボランチ起用と予想した。

愛媛
愛媛も前節良かっただけに、継続したメンバー起用を予想した。
GKの秋元が試合途中で太ももを痛めていたため、欠場も予想していたが練習に参加しているようなので起用には問題はなさそう。
個の能力においてはJ2屈指の長崎相手に秋元の奮闘があったとはいえ、最少失点で守り抜いたことは自信となったはずである。
また、和泉監督になり今シーズンの愛媛の戦い方を示す試合ともなっただけに前節のメンバーで続けて臨むことを予想した。
内田、横谷と甲府に在籍経験のある選手がいるだけに出場機会があるのかも楽しみとなる。

5.注目選手

甲府
有田光希
昨シーズンまで通算5シーズン愛媛で過ごした。
契約満了となり、愛媛を退団し今シーズン甲府へ加入。
愛媛には通算で5シーズン在籍し、リーグ戦では34得点を挙げた。
今シーズンはまだ得点がないが、慣れ親しんだニンジニアスタジアムで甲府初ゴールを挙げたい。
また、予告している「ヴァンくんポーズ」でのゴールパフォーマンスも注目となる。

愛媛
川村拓夢
広島から期限付き移籍で加入し、2年目のシーズン。
高萩洋次郎、森脇良太、長沼洋一といった選手が愛媛に期限付きで加入し、飛躍し広島へと戻っていった。
昨シーズンまで甲府でプレーした内田健太もその一人。
今シーズンの川村は愛媛の攻撃陣の中心となっており、第2節の千葉戦では得意の左足から豪快なミドルシュートを決めた。
前節もミドルシュートから得点に繋げており、得点に繋がるプレーを増やし、チームに勝ち点をもたらす働きが求められる。

6.展望

大枠で括れば、ここまで対戦してきたチームは全チーム同じグループとも言える。
その中でも愛媛は前節の栃木のように振り切った戦い方をするチームではなく、大宮のように徹底してSB裏のように明確な狙いどこを決めるチームでもない。
オーソドックスなタイプのチームであり、対戦してきた3チームの中では、千葉に近い特徴のチームではないかと思う。

『われわれは昨季21位のチームで、なおかつ昨季の主力が複数抜けた中でのスタート。まわりからは降格候補の筆頭と言われている。キレイなサッカーをして勝つことだけではなく、粘り強く、最後まで走り切って不格好でも勝点を取っていく。そういう声をかけ合いながらスタートしている。その片りんを、今日お見せすることはできたのかなと思う。』

長崎戦後の和泉監督のコメントだが、愛媛が目指しているサッカーをこのように表現している。
昨シーズンまでの川井監督体制では、キレイなサッカーを目指していただけに今シーズンは違った戦い方を志向していることがわかる。

『前半、前から守備に行こうとしていたが、相手のCBが大きく広がってビルドアップをしていく中、全部前から行くのは難しいと思い、前半の飲水タイムで前から行けないときはブロックを作ってコンパクトにした状態で全体でプレッシャーを掛けていこうと修正した。』

こちらは千葉戦後の和泉監督のコメントとなるが、守備ではハイプレスをベースに時間帯や展開に合わせ442でブロックを作る戦い方にも対応する。
また、相手のビルドアップに合わせ、前線からのプレスの仕方を変える。
千葉戦は陣形を変えず、CBとボランチでビルドアップしていく所を2トップがボランチへのパスコースを制限しプレスを掛けていた。

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和泉監督のコメントにあるように、千葉がGKやボランチをビルドアップに組み込むことでCBが開くことになると前からのプレスを控え、ブロックを構えるやり方を見せた。

長崎戦はボランチが一人後方に降りる形でビルドアップするのに対し、吉田と近藤が縦関係となり吉田と両サイドの忽那、川村で長崎のビルドアップを牽制し近藤が運動量を活かし、カイオセザールに自由を与えない守りを見せた。
サイドの守備は主にSBが担っていた。

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下の動画は長崎戦の失点場面。

図のようにプレスを掛け、相手を捕まえにいくが、最終ラインは数的同数となっているため、相手に質で上回られると失点に繋がる危険性がある。

甲府は長崎のように可変をしてビルドアップを行うことが予想される。

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甲府は可変をする中で、立ち位置で相手を釘付けにし、ビルドアップを数的優位で進めたい。
愛媛は中盤の数的不利を解消しようと両サイドが絞って対応すると、サイドでは一対一の状況となっており、ドリブル突破や背後を突くことができれば一気に敵陣深くまで侵入することが可能となる。
また、サイドへのパスコースを消しにいくと、中盤の数的優位を活かし前進が可能となる。
釘付けにしていた相手守備選手を引き出すことで空いたスペース、人を活かしながらゴールに迫る形を作り出せる。
あとは相手を剥がせるかにかかっている。

また、愛媛はクロス対応に問題を抱えている。

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失点パターンを見ていただければわかるが、愛媛の失点で一番多いのはクロスからとなっていることがわかる。

千葉戦の失点場面だが、得点を決めた鈴木選手は完全にフリーとなっている。
ボールホルダーへの寄せも甘く、マンツーマンで守っているがマークを外している。
このような場面は長崎戦でも見られた。

毎節クロス対応について触れているが、日本全体の課題なのかもしれない。
あるいはJ2リーグとしての課題か。
サイドの裏にはスペースがあり、SBで先発することが予想される茂木と前野は攻撃的な選手なだけにサイドの守備には課題を抱えている。

愛媛が今シーズン大きく変わった点は攻撃面だろう。
川井監督から和泉監督に代わり、攻撃の狙いは大きく変わった。

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こちらは昨シーズンの成績。

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こちらは今シーズンの成績となる。

パス数とボール保持率は大きく減少していることがわかる。
甲府の伊藤監督と似たような思考を持ち、立ち位置とボール保持にこだわった川井監督であったが和泉監督はよりシンプルな攻撃を構築している。

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こちらは今シーズンと昨シーズンのプレーエリアのマップとなる。
昨シーズンに比べ、高い位置に濃い色が多くなっているのがわかる。
ボール保持にこだわっていた昨シーズンは後方でボールを持つ時間が長かったからであり、今シーズンはシンプルに前線にボールを送り込むことが増えたことで後方でボールを保持する時間が減ったためとなる。

シンプルに前線に送り込む中で、吉田のポストプレーを起点に2列目の選手に前向きな状況を作ることで速く攻め切ることが多くなった。
時間を掛けた場合には両SBの攻め上がりを使い、クロスからチャンスを作っていく。

最大の狙いはハイプレスからのショートカウンター。

こちらは長崎戦での得点場面。
先程触れた長崎のビルドアップに対する守備から中盤へ誘導し、人数を掛け奪いきり得点へと繋げた。
この形は和泉監督が狙いとしている守備から攻撃へ連動した一連の流れと言える。

ビルドアップは基本的には相手の守備者より一人多く配置し行う。
千葉戦ではボランチが後方に降りることで行っていたが、スムーズにはいかず。

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長崎戦では左SBの前野を後方に残し、CBと3人で行う形へと変更することで改善された。

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歪な形だが、このようなイメージ。
近藤がフリーマンであること、川村がインサイドに入り、空けたスペースに茂木が入ってくることは明確であったが、他の選手はボールの位置や個人の判断によって違いはあった。
千葉戦では左SHにボランチが本職の川村が入ったが、長崎戦ではアタッカーの忽那が入り、役割を変更した。
川村は中央のエリアに入り、中盤と前線を繋ぐ中継役を担うとともにフィニッシュ局面に関わる役割を担っていたが、忽那はサイドからドリブルでの仕掛けを託された。
逆に右サイドに川村が移ったことで、中央へと侵入する川村の空けたスペースに茂木がオーバーラップし、クロスを供給する場面も見られた。

甲府としては起点となる吉田のところで潰し、2列目の選手に前を向かせないようにしたい。
栃木戦で見せた球際やセカンドボールの争いは愛媛戦にも活かされるだろう。

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後方では数的優位の状況を作れているため、吉田を起点とするパスに対し、DFラインと中盤で挟み込む形を作れる。
また、セカンドボールの争いにおいても数的優位を活かすことで回収は容易となる。

試合展開としては甲府が優位に試合を進められるかと思う。
3試合続けて先制点を得ているが、今節も先制し試合をコントロールできる展開へと持っていきたい。
川村や吉田、近藤と前線にはタレントもいるだけに決めきれずに焦れてしまう展開は避けたい。

7.あとがき

前節の栃木戦とは異なり、伊藤監督が目指す形を全面に押し出す試合となるだろう。
昨シーズンは4バックのチーム相手に苦手意識を持っていたが、3試合連続で4バックかつハードワークベースのチームであり、昨シーズン勝ちきれなかったタイプの相手に3戦負けなしときている。
今節の愛媛も似たような傾向にあるチームと言え、苦手を克服したのかが問われる一戦となる。
チームとして4バック効力の糸口を見つけ、全体で共有し戦えているだけ結果を残していくことで自信にも繋がり、チームとして勢いが出てくるだろう。

今回は無事に試合が開催されることを願って、3連勝しましょう!






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