第99回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 米子北vs山梨学院
新年最初のレビューは高校サッカーのレビューを書きたいと思います。
山梨県を代表し、戦っている山梨学院の頑張りを伝えていきます。
山梨学院は3年ぶり7回目の出場となる。
最高成績は88回大会の初出場で果たした優勝となる。
主なOBとして、ヴァンフォーレの岡西選手、宮崎選手の他に東京オリンピックの出場も期待されるFC東京の渡辺選手や横浜F・マリノスの前田選手がいる。
1回戦の相手は鳥取県代表の米子北高校。
11年連続16回目の出場となる。
最高成績は96回のベスト8ととなる。
主なOBとして、元日本代表の昌子選手やFC町田ゼルビアの佐野選手がいる。
両チームは3年前の96回大会の初戦で対戦をしている。
山梨学院には宮崎純真選手、米子北には佐野海舟選手と後にJリーグ入りする2年生を擁していた。
山梨学院が年代別代表にも呼ばれていた加藤拓巳選手(2022年より清水エスパルスへの加入が内定)の得点で先制するも米子北が2得点を奪い、逆転勝利を挙げた。
その後は米子北にとって最高成績となるベスト8まで勝ち上がった。
山梨学院にとっては因縁の相手となる。
1.耐える展開
スタメンはこちら。
山梨県出身者はスタメンには一瀬選手(甲府U15出身)、ベンチに中根選手となる。
米子北の佐野選手は町田の佐野選手の弟となる。
風上に立った米子北がロングボールで押し込む展開となる。
前線にロングボールを入れ込み、セカンドボールの回収とハイプレスで主導権を握りたい米子北。
山梨学院は風下とあり、耐える展開であるが米子北のハイプレスにペースを掴めない。
20分には米子北がCK崩れから決定機を迎えるも熊倉選手が立ちはだかり、先制を許さない。
飲水タイムまでの決定機は20分の米子北の場面のみ。
お互いに空中で行ったり来たりの展開が続いた。
局面局面で米子北が数的優位を作り、試合を優位に進める。
個々人に目を向ければ、山梨学院の選手の方が技術や個の能力は高いように感じるが米子北の選手はそれを凌駕する運動量と粘り強さで山梨学院に自由を与えない。
次の決定機も米子北。
29分に熊倉選手のGKをクリアしたボールが山梨学院最終ラインの背後に落ち、崎山選手のヘディングは枠の外へ外れた。
風上を活かした形からの決定機となった。
山梨学院としては久保選手と野田選手の2トップでボールを収めることが出来れば、一方的に押し込まれることは無かったが米子北のプレスバックの速さに自由を与えてもらえず。
風上を活かし、押し込む形を作るも得点を奪いきれなかった米子北。
やりたいことができなかったが、耐え切った山梨学院という構図で前半を終えた。
2.アクシデント
後半に入っても米子北のペースで進む中、山梨学院は切り札を投入し状況を打破しにかかる。
53分に野田選手と久保選手に代えて笹沼選手と茂木選手を投入する。
笹沼選手(3年)、茂木選手(2年)は共にFC東京U15深川から山梨学院に進学してきた選手。
中学生の頃から共にプレーしてきたコンビで試合の流れを変えにかかる。
60分には茂木選手がプレッシャーを米子北のGK長崎選手に掛けに行くも足がもつれ、交錯してしまう。
遅れて交錯したことからイエローカードが提示されるが、このプレーで長崎選手は負傷してしまう。
トレーナーからバツが出て、交代を要求するも本人の気持ちで続けることを選択する。
この選択が後に勝敗を分けることになる。
山梨学院にもアクシデントが発生する。
一瀬選手が足を吊り、交代を余儀なくされる。
62分に一瀬選手と廣澤選手を代え、中根選手と山口選手を投入する。
しかし、アクシデントはこれだけでは済まない。
板倉選手が味方の谷口選手とヘディングで被ってしまい接触。
頭部に大きなたんこぶが確認できたが、骨折や脳震盪の可能性もあるだけに無事を願いたい。
これにより66分に板倉選手に代えて加藤選手を投入することとなる。
米子北のロングボールを跳ね返し続けてきた両CBを共に負傷で失ってしまうこととこの段階で交代回数を使い切ってしまう苦しい展開となる。
試合後の山梨学院長谷川監督のコメントより。
『一瀬が疲労したのは想定外。板倉が頭をぶつけて交代したのは想定外の想定外。まったく予想していない状況のアクシデント。正直、これは大変だと思った』
だが、この交代で投入された加藤選手が大きな働きを見せる。
新井選手のロングスローという山梨学院の武器から緊急投入となった加藤選手が値千金の得点を挙げる。
ロングスローに対し、GKの長崎選手が飛び出すことができなかった。
試合後の米子北中村監督のコメントより。
『GKが足を痛めて一歩出られなかったと思うと、交代させておけばよかった。私の判断ミスです』
結果的に長崎選手は73分に交代となるだけに、中村監督のコメントにあるように万全では無かった長崎選手を交代しておけば防げた失点であったかもしれない。
だが、痛みを押して出場を続けた長崎選手を責めることはできない。
試合後の山梨学院長谷川監督のコメントより。
『身長が伸びて身体の使い方に苦労していた彼に、『焦れないでやり続けろ』と言い続けてきた。その努力の証だと思う』
試合後の山梨学院加藤選手のコメントより。
『セットプレーはウチの武器。ロングスローは飛ぶと分かっていたので良い位置にいられたと思う』
『ファーストプレーをしっかりやろうと思っていて、それが得点になったのでいい感じに試合に入れた』
苦労しながらも努力と準備を怠らなかったからこその得点となった。
試合後の山梨学院長谷川監督のコメントより。
『代わりに入った選手が、また輝くのが今年の山梨学院の強み。全員が全員、色を放ってチームを作っていくのが今年の強み』
アクシンデントがありながら、途中投入された選手のゴールで勝ち切った山梨学院。
選手層の厚さで米子北を上回った。
前半を耐え抜いたこと、アクシデントが勝負を分ける結果となった。
3.あとがき
3年前の雪辱を晴らす試合となった。
序盤から米子北の土俵で戦う苦しい展開となり、アクシデントも重なりながらも2回戦進出を決めた。
今年度唯一の全国大会。
一試合でも多く戦えることを期待したい。
米子北は愚直に戦う姿勢は見事であった。
サッカーを続ける人も引退する人も今後の活躍を願っています。
MOM 熊倉匠
決定的なシュートも防ぎ、得点を許さなかった。
両CBを負傷で欠く苦しい展開も熊倉選手がいれば安心できる存在感は見事であった。
また、精度の高いフィードでカウンターの起点にもなり守備だけでなく攻撃でも貢献した。
偉大なキャプテンである。
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