★夜間救急の費用はなんで高い?
夜間救急は、通常の診療とは異なり、特殊な体制のもとで成り立っています。そのため、診療費が高額になりがちですが、それには明確な理由があります。
夜間救急の費用が高額になる理由
1. 常に一定のスタッフを配置する必要がある
夜間救急では、日によって来院数が大きく変動するため、「今日は多そうだからスタッフを増やそう」といった調整ができません。そのため、万が一に備えて常に一定のスタッフを配置する必要があり、人件費の負担が大きくなります。
2. 幅広い専門知識を持つ獣医師が求められる
夜間救急では、心臓病・発作・異物誤飲(内視鏡)・交通事故など、あらゆる分野の緊急症例を一人の獣医師が診療できなければなりません。これだけのスキルを持つ獣医師を雇うには、相応の待遇が必要です。
そして、通常、これほどの知識・経験を持つ獣医師であれば、夜間に働かなくても十分に仕事ができるレベルの人材です。
そのため、夜間診療を任せるとなると、それが診療費にも反映されるのは当然のことです。
3. 獣医師やスタッフの負担が大きい
夜間救急は、獣医師やスタッフのプライベートや健康を犠牲にして成り立っている側面もあります。例え日勤に比べて給料が割高でも、人が集まりにくいのが現状です。それだけみんな夜間、働きたくないのです。当たり前です、獣医師も人間だもの。
勤務のその日一日だけ昼夜逆転しているわけではなく、休みの日も昼夜逆転生活だったり、それでも休みの間に生活リズムが戻ってしまい結果寝不足、、みたいなのは少なくありません。
夜間に急変した動物を診る病院は必要不可欠ですが、夜間診療が続けられるためには、適切な診療報酬が必要なのです。
「夜間もみてくれる病院がもっと増えればいいな!という何気ない飼い主さんのつぶやきに
「今ある夜間救急ですら人が足りてないのに、、それでも費用や待ち時間に文句言われるのに、、どうやって人を増やせと、、」と敏感に反応してしまう可哀想な生き物と化してしまいます。
救急病院だからと言って必ず受け入れれるわけではない
数が増えたとはいえ、夜間救急の病院は数が限られているため、人間の救急医療と同様に「満床」になることがあります。
意外と「満床なんて、どういうこと?」と言われることがありますが、医療は限られた資源です。
入院室の数は決まっていますし、重症例が多ければ見切れないので、患者さんの安全を優先して部屋が空いていても最悪断ることがあります。
まだ見ぬ患者さんより、目の前の患者さんが優先です。
その場合、入院が必要な状態でも受け入れることができないので、他の病院を案内することもあります。お金儲けが目当てなら部屋が空いてれば、他院を案内などせず、受ければいいですが、実際そうではありません。
ただ大体どこかの近くの夜間救急が満床になると、その余波が周りにもきて、一つの病院だけでなくどこも受け入れしてもらえない状態になることがあります。
(病院同士、直接連絡はしてないはずなのに何故か若干察しはじめるので頑張ってキャパ超えてても受け入れようとはします。マジありがとう他院って思ってる)
なので、前もって夜間救急調べてるのはいいことですが、夜間救急あるから大丈夫!ではなく、極力お世話にならないようにしてもらうことがすごく大事です。
適切なタイミングでの受診が大切
夜間救急に駆け込むケースの中には、朝から体調が悪かったにもかかわらず、日中に受診せず、夜になって急に不安になって来院するというケースもあります。
もちろん、夜間に急変することもありますが、このような場合、日中の診療時間内に受診することで、夜間救急の混雑を防ぎ、より適切な治療を受けることができたはずです。それでも、夜間でそれを理由に受診拒否することはありません。
ただし、朝からある症状であれば、状態は安定していて待てるものと判断されるため、必然的に優先順位は低くなります。
他に、重症例がいれば後回しになり、待てども待てども全く呼ばれないということになりますが、例えクレームを入れてもそれは早まることはありません。
何故なら、夜間救急は本当になくなってしまう危ない状態の子が何頭も来るからです。
例え、待ち時間に飼い主さんが怒って帰っても「帰れるくらい元気なのか、よかった」くらいにしか思いません。
「待てる」と判断された場合は、重症の子から対応するため、来てもらうのは全然構わないけど
例え何時間でも待ってもらうことがある
それが救急です。
その性質を理解した上で、受診していただければと思います。
★夜間救急を適切に利用するために
夜間救急は、飼い主さんの不安を解消し、動物の命を救う重要な役割を果たしています。しかし、その仕組みをご家族も理解し、適切に利用することが求められます。
夜間救急は、獣医師やスタッフの献身によって支えられています。心ない言葉やクレーム、踏み倒しが積み重なると、実際に夜間診療を縮小する病院もあります。それにより、受け入れ先が減ってしまえば
結果的に「自分の愛するペットの首を絞めることになる」ことを理解してほしいです。
また、日中から具合が悪かったのであれば、費用や待ち時間のことを考えても「大切な家族のために、できるだけ早めの受診を判断をする」ことが、飼い主さんご自身と動物の負担を減らすことにつながります。
ただ、もしも、夜間救急を余儀なく受診されることがあった際には、これらのことを頭の片隅に置いて
遠慮なく電話をしていただき、受け入れ可能か確認の上、受診してください。
きっと、夜間救急の獣医さんたちが最善を尽くしてくれると思います。