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★獣医師のフードの選び方(前編)

`※この記事はご家族向けです。診療相談はお受けしておりません

こんにちは。
本日は1番自分が獣医師になってから聞かれる内容で身近なフード選びについてです。
この話のためだけに、情報発信したいなーと思うようになったと言っては過言ではないです笑
というくらいご飯の内容は本当に大事です。


獣医師のコバナシ
ちなみにフードの選び方に関しては、獣医学部では栄養学の授業はあるものの、実際のフードの選び方などは実際臨床(いわゆる診療)にでてから学ぶことが殆どです。
大学の先生には申し訳ない気持ちですが、私の出身校では「楽に単位が取れる」略の楽単の一つでした。
そして、大体臨床に進む学生は非臨床系の勉強が疎かになりがちなので、臨床に出てから苦しむ羽目になるため、卒後個人の勉強度合いに左右されやすい分野の一つです。
臨床志望の学生の皆さんは、基礎系もしっかり勉強しような、お姉さんとの約束だ!

※療法食を与える場合、変更する場合は獣医師に必ずご相談ください

今は幸いなことにネットでも療法食が簡単に手に入ってしまう時代になりました。
それゆえに、素人判断で療法食を開始、変更してしまう方もいらっしゃいます。
導入にも書いたように、ご飯はとても大事です。
適切でない食事の選択は病気を引き起こす可能性が十分にあります。
自分の愛犬、愛猫のことを大事に思うのであれば、個人での判断はおやめください。
これからの内容を読んでいただければ、その理由が十分わかるかと思います。


⒈総合栄養食と療法食の違い

「ほにゃらら系に配慮しています」のご飯と療法食の違い

まず大前提として
・総合栄養食
・療法食
の2つに大別されます。

総合栄養食とは、それ単体で必要な栄養素が取れますよ、と言ったものになります。
特になんの病気も持っていない、いわゆる健康な子が食べているご飯であり、大体が子犬・子猫、成犬・成猫、避妊去勢済み、シニアの年代別に作られていることが多いかと思います。
犬種用フードも総合栄養食です。
ここで一つ気をつけなければいけないのは、「泌尿器系に配慮しています」系だったりの文言になります。

療法食というのは、いわゆる「食事療法が適応になる病気にかかってしまっている子」が必要な食事です。療法食はそれ自体が「薬と同じ」扱いです。
薬と同じ扱い、というのは、適切な扱いをしなければ逆に病気を引き起こすリスクもあるものです

療法食の尿ケア系のご飯と市販の泌尿器系に配慮しているご飯を一緒に思われてる方がいますが全くもって違います。

◎よくある質問コーナー

Q  療法食を総合栄養食と混ぜて与えてもいいですか?
A  獣医師から療法食を処方されている場合は、混ぜて与えると正直全く療法食の意味がありません。
アレルギーを仮定してもらえればわかりやすいですが、アレルゲンが入っているご飯とアレルゲンが入っていないご飯を混ぜて与えると、例えアレルゲンが入っていないご飯を半分与えていてもアレルギー反応は起こりますよね。
折角、めちゃくちゃ高い療法食を買ってもらっていても結局再発した、、などの要因になり、1番無駄な結果に終わります。
また、おやつなども同様で全てやめる必要があり、療法食単体のみで生活してもらうことになります。
↑これだけきっちりしないと意味がないのに、なんとなく良さそう、で療法食を購入している場合は大体おやつを食べてたりするので本当にお金の無駄です、、、

Q療法食を混ぜて与えてもいいですか?
A 療法食のmixもやめた方がいいです。切り替えの時はもちろん混ぜて構いませんが、偶に消化器系と腎臓ケア系のご飯を混ぜて与えています!と言われることがあります。
ただ、療法食は消化器系と腎臓に効く魔法の成分が入ってるわけではなく、消化器系は低脂肪食で、腎臓は蛋白制限食になります。低脂肪食は脂肪制限の代わりに蛋白分を多くしています。蛋白制限食は蛋白を制限している代わりに、脂肪分を多くしています。
なので混ぜると結局いいとこを打ち消していることになり、それは総合栄養食でいいよ、、、ということになります。他のフードも同じで、いわゆる病気それぞれにあった偏食をさせているので、健康な子にとっては不要ですし、病気になるリスクも出てくるわけです。また混ぜると偏っているものが均されてしまうので療法食の意味がなくなってしまいます。
また今日は消化器、今日は腎臓、みたいな与え方も全く意味がありません。療法食は1種類で与えてはじめて治療効果を最大限引き出せるものです。仮にフードに飽きやすい場合でも、メーカー違いの同系統のご飯のみがいいです。(ただメーカーにより治療戦略もやや異なるものもあるので完全に一緒ではありません)

Q 療法食だけで食べてくれません
A 病気によってトッピングしてもいいものだったりをお伝えすることも出来るので、獣医師にご相談ください。またそれでも難しい場合は、食欲増進剤などによって少し食べやすくすることも可能です。

<まとめ>
・市販のほにゃららに配慮している系のご飯は、基本的にどんな子が食べてもデメリットがなく、その代わり本当に療法食が必要な子にとってはほぼ無力です。
・療法食はフードによっては健康な子に与えると病気を引き起こす可能性があり、また必要な子は生涯その療法食を食べ続ける必要があるもの、です。

→なので獣医師に相談なく勝手に療法食の開始、変更を行うのは、逆に病気にしてしまったり、治療を中断しせっかくコントロールできていた病気を再発させてしまうことにつながります。

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