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ツバメ夫婦の離婚に関わる因子は?!

ツバメ離婚

昨日近所の軒下に巣を作っていたツバメ夫妻の子ツバメの巣立ちの瞬間に立ち会うことができました。
午前10時頃で、3羽いた子ツバメの最後の子が巣立つところでした。やはり初めて飛ぶ瞬間は怖いようで巣の縁にとまったまま逡巡していましたが、勇気を出して飛び立ちました。次の日も、その翌日も巣を見に行きましたが親鳥も子供たちの姿もみえませんでした。

1シーズンの繁殖回数は1〜2回、ごく稀に3回繁殖するツバメもいるとのことなのでもう6月も中旬なので厳しいかもしれませんが2回目の子育てが観察できるか期待しながら巣を見守りたいと思います。
ということで、1回繁殖が終わった巣も再利用される可能性があるので撤去しないでくださいね♪

ツバメはオスメスペアで子育てしていて仲睦まじくとても微笑ましいですよね♪鳥における離婚とはペアの双方が生きているにもかかわらずわかれてしまうことと定義されています。
前の繁殖相手と再度ペアを組むメリットとしては、都度繁殖相手を探すコストが削減でき再度ペアを結成できれば子育てを早く開始できることが挙げられます。日本でみられるツバメ(Hirundo rustica)は長距離を渡る短命の一夫一妻制の鳥です。

人間でも”お互い結婚を意識したカップルが結婚する”とよく言われますね。ツバメにおいて婚姻関係の結成や維持重要なものはなんでしょうか?

日本の新潟県において、ツバメの離婚の原因とメカニズムについて調査した研究があります。ここでは2005年から二千七年にかけて、168ペアを虫取り網で捕獲して姻族のリングと色リングをつけてツバメの個体を認識できるようにしました。そして再外尾羽(outermost tail feather)、つまり尾羽の一番外側の長い羽根の長さや抱卵斑(brood patches ,巣作りの季節に鳥のお腹側の羽が抜けて皮膚が露出した部分)、総排泄口突起(cloacal protuberances )の確認をして雌雄を分けました。

そして各ツバメが観察エリアで見られた最初の日を”到着日”としてペアの離婚との関連をみました。各ペアの”繁殖成功”は最低でも1羽のひなの巣立ちがあった時と定義し、”繁殖失敗”は1羽の巣立ちもなかった場合と定義しました。
”離婚”は繁殖を成功させたペアのオスメス双方が翌年も生存していることが確認できているにもかかわらず、双方が別のパートナーと繁殖した場合に定義しました。

前年繁殖を成功させたペアのうち1羽の生死が不明で、残った1羽が別のパートナーと繁殖した場合は”未亡人”としました。昨年ペアを組んで繁殖成功させたペアが翌年も同じペアで繁殖した場合を”再会”としました。

観察期間中、各ツバメが確認できた26ペアのうち離婚率は65.4%でした。離婚率は前年の繁殖が成功できたかどうかでは統計学的な差はありませんでした。子育てがうまくいかなかったペアでも離婚率には影響しないということですね。北米の研究では繁殖の失敗のあと離婚がみられたとのことですが(Shields 1984)、日本のツバメでは違う結果が得られたのが興味深いですね。差があったのは産卵する卵の数で、離婚したペアでは中央値4.86個に対して再会ペアでは5.44個でした。

オスはメスよりも早く日本に到着し、同じ日に日本に到着したペア(n=4ペア)は全て再会を果たす、つまり前年に続いて翌年もペアを結成して繁殖を開始しました。
メスがオスよりも10日以上早く着いた例では全例(n=6)が離婚した一方、オスがメスよりも10日以上早く着いた例では8ペア中3ペアのみが離婚しました。これは統計学的な解析でも差が認められました。離婚率はオスとメスの到着日がずれるにつれて高くなっていることから、ツバメの離婚率には前年の繁殖成功率といったことよりも日本に到着するタイミングが同じことが重要なようです。

過去の別の研究ではメスは到着後3日以内にパートナーを探すとのことですので(Møller1985)、この研究のようにオスが早めに着いていると再会しやすくなるようです。人間以外の生物でも婚姻関係にはタイミングが重要なのかもしれませんね。


参考文献
Arai, E., Hasegawa, M. & Nakamura, M. 2009. Divorce and asynchronous arrival in Barn Swallows Hirundo rustica. Bird Study 56: 411-413.

・ツバメの子育て状況調査2013~2015, https://www.wbsj.org/activity/conservation/research-study/tsubame/result2015/, 結果報告, 2022/06/19参照

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獣医師ふー『ペットに中毒を起こす物質』
犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。