鳥のお母さんはすごい!骨髄に骨を作る
産卵中の鳥にはものすごい秘密があります。ご存知の通り卵はカルシウムの塊です。動物病院だとよくインコの卵詰まりなどで調子が悪くなった子がきますが、カルシウムの摂取不足でぶよぶよの卵だと通過障害が起こりやすくなります。
さて、こういった理由で繁殖中の鳥にとっては自分の体から卵にいかせるカルシウムの調達は非常に重要です。
産卵準備中の鳥は骨髄の中に骨が形成されます(骨髄骨)。
骨髄とは長く大きな骨の中にあるスポンジ状の組織で、酸素を全身の組織に運んでくれる赤血球や病原微生物やエラーを起こした自分の細胞を取り除いてくれる白血球、怪我した時に止血するのに重要な役割を持つ血小板などを作っている場所です。
卵の殻を作るのに大量のカルシウムが必要なので、一時的な貯留場所として骨髄に骨ができ、そこから卵につかうカルシウムが供給されます。こうした骨髄にできる骨のことを骨髄骨と読んでいます。
骨髄骨は脛骨や大腿骨などの比較的大きめの骨の中の骨髄でよくみられますが、それ以外の全身の骨でも観察できます。
雌の鳥類の産卵期のみにみられる特徴なので、エストロジェンなどの性ホルモンが関わっていることが示唆されています。
身近なところでは、養鶏場から人の口に入るまでの間に生産された鶏卵の10%程度が軟卵や破卵で利用できていないとされています。この軟卵や破卵の発生は骨髄骨が正常に機能しないことで起こることも知られています。赤ちゃんを胎盤で育てて産む私たち哺乳類にはまた想像できない苦労を鳥たちはしているのです。
参考: 西村宏一, 2000, 応用編:家禽の成長に伴う肢骨の化骨化と骨髄骨の発現,Science Imaging Systems Application Note No.16, FUJIFILM
楠原征治, 鳥類の卵殻形成における骨髄骨の機能解明に関する先駆的研究