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人と動物の体を比べてみよう②顎のひみつ
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みなさんはオトガイという言葉を聞いたことがありますか。これは下顎の先端の部分のことを指す解剖学用語です。
そして下顎の骨にある神経や血管、これらが通る穴にはオトガイ神経やオトガイ動静脈、オトガイ孔など名前がついています。
動物の解剖の教科書を開くと、家畜にもオトガイ孔など”オトガイ”という言葉がついている部分が複数あります。
しかし、実は人間の下顎の先の出っ張った部分にあたるオトガイというのは動物には存在しません。えっサルなどは?と思われるかもしれませんが、”ニホンザル 頭蓋骨”などで検索をすると、確かにサルでも下顎の先は人間のように出ていません。
動物の解剖学用語で使われるオトガイという言葉は人体の解剖学用語を借りてきたということですね。解剖学用語というと堅苦しい感じがしますが、実際のペットの診療現場でも重要です。トイ・プードル 等の小型犬では乳歯がうまく抜けず残りの乳歯を抜く手術をすることがあります。その過程で必要な処置の一つに局所麻酔があります。基本的に抜歯は全身麻酔ですが、ある神経を局所的に麻酔することで全身麻酔に必要な薬の量を減らしたりといったメリットがあるのです
下顎の抜歯を行う時に局所麻酔を施す場所の一つがオトガイ神経で、いわゆるオトガイ神経ブロックというものです。犬にはオトガイがないのに、オトガイ神経を麻酔するなんて、人間の解剖用語を借りてることで起きる言葉のあやとはいえなんだかおかしいですね。
さて、なぜオトガイは人間だけの特徴かというと、食べ物を柔らかくする技術を身につけた人間は歯の大きさや数が減って歯をしまうスペースが少なくなり、その部分の退化が遅れて残ったのがオトガイと考えられています。
もしかしたら動物でも自分の咀嚼の力以外の理由で柔らかい食べ物が手に入る期間が何代にもわたって続けばオトガイができるかもしれませんね。
参考
・加藤嘉太郎, 山内昭二, 新編家畜比較解剖図説 上, 養賢堂, 2003年
・WSAVA疼痛の判別、診断と治療のガイドライン, https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/Pain-Guidelines-Japanese.pdf 2022/08/06参照
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