腹部の超音波ガイドブロック <其の1>
目次
はじめに
腹部ブロックの目的
腹部ブロックの解剖学
腹部ブロックの種類と概要
腹横筋ブロック TAP Block
腹直筋鞘ブロック RS Block
腰方筋ブロック QL block
まとめ
今回の英単語
この記事は、腹部の超音波ガイドブロックに関する基本的な解剖学的知識から、各種ブロックの概要を掲載しています。それぞれのブロックについての詳細な情報、具体的な手技、動画は、別途掲載予定です。
また章の最後に、腹部ブロックで重要な英単語が記載されています。
ぜひ勉強にお役立てください。
1. はじめに
腹部ブロックは、周術期の疼痛管理や慢性的な腹部疼痛の治療 (e.g. 急性膵炎)などさまざまな目的で、人医療または獣医療で使用されています。これらのブロックは、神経ブロックや麻酔技術の一環として、超音波ガイド下で行われることが一般的です。私の所属する施設では、開腹手術や乳腺切除などの症例を対象に、全身麻酔下で実施されており、周術期の急性疼痛を緩和することが期待されています。
1-1. 腹部ブロックの目的
腹部ブロックの主な目的は、腹部の手術や治療に伴う疼痛を軽減することです。これにより、患者はより早く回復し、手術後の合併症や長期的な痛みを最小限に抑えることができます。また、術後のオピオイドの必要量を減らすことで関連した合併症を減らすことも期待されています。
1-2. 腹部ブロックの解剖学
腹部ブロックが一般的な区域麻酔と大きく異なる点は、ターゲットとする神経の周りに直接局所麻酔薬を注入するのではなく、神経が分布しているプレーンに少し離れた場所から薬を十分な量注入し、複数の腹部を支配する神経を同時にブロックすることです。この方法は「Plane Block」と呼ばれています。したがって、腹部ブロックを実施する際には、腹部の筋肉の層と神経の配置を理解することで、エコー上のどこをターゲットにするべきかが容易に理解できるようになります。
さて、以下の図は腹部を輪切 (Transverse) にした解剖図です。
これを参照して腹部の筋肉・神経の配置を具体的にイメージしてみましょう。
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