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犬猫のマダニ予防が重要である理由

皆様は愛猫・愛犬のマダニ予防はしてますか?
そしてマダニから感染するSFTSという怖い病気を知っていますか?

ここ数年で、フィラリア・ノミ・マダニをまとめて予防できる薬が主流になってきたので、知らないうちに予防できいた方も多いかもしれません。


今回の記事は

  1. マダニ予防をまだ行なっていない方

  2. 都心に住んでいるのでマダニ予防は必要ないと考えられている方

  3. マダニが媒介する感染症について不安に感じている方

  4. マダニ予防を行うべきか悩まれている方

に向けたものになっています。


マダニ予防の重要性や方法・マダニが媒介する疾患についての理解が深まり、マダニ予防を行う後押しになれば幸いです。


<マダニとはそもそもどんな生き物なのか>

マダニは脚が8本あるので昆虫ではなく、クモやサソリに近い生き物です(昆虫は6本脚です)。

マダニは「卵⇨幼ダニ⇨若ダニ⇨成ダニ⇨産卵」というサイクルで生活しています。

秋~冬にかけて「卵」から孵化し、「幼ダニ」「若ダニ」と成長し、春から夏にかけて「成ダニ」の活動が活発になります。

マダニにはたくさんの種類がいますが、
日本に生息する多くのマダニが「幼ダニ」「若ダニ」「成ダニ」のすべての発育段階で動物に寄生・吸血します。
そして吸血時に原虫・ウイルス・細菌などの病原体を媒介します。

<日本全国安心できない!マダニの生息域>

日本にはフタトゲチマダニ・キチマダニ・シェルツェマダニ・クリイロコイタマダニを代表とするたくさんの種類のマダニが生息しています。

そして様々なマダニが日本全国に生息しています。
暖かい地域・寒い地域・都会など、ここに住んでいるから大丈夫という場所はありません

  • 公園

  • 河川敷

  • キャンプ地

  • あぜ道

マダニは様々な場所に潜んでいるので注意が必要です。
私は東京23区で臨床医をしていますが、公園や土手などで散歩している子などで、毎年数件はマダニの寄生と遭遇します。

<マダニが媒介するペットの感染症について>

ここではマダニが媒介する代表的なペットの感染症について書いていきます。

・バベシア症
バベシアという原虫が赤血球に寄生し、貧血を起こしてしまう病気です。
バベシアはマダニの吸血時に感染します。
発熱・元気消失・食欲不振・粘膜が白くなる・濃い尿(ビリルビン尿)が出るなどの症状を認めます。

・エールリッヒア症
細菌(リケッチア)が白血球に感染してしまう病気です。

・ヘモプラズマ感染症
ヘモプラズマという病原体が赤血球に感染してしまう病気です。
ヘモプラズマが感染した赤血球は体内で異物として認識され壊されてしまい、そのせいで貧血を起こします。
発熱・元気消失・食欲不振・粘膜が白くなるなどの症状を認めます。

・ライム病
ボレリア菌が引き起こす病気で、発熱・食欲不振・元気消失などを認めることがあります。

・SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
ここ数年話題の病気です。
次で詳しく解説します。

代表的なものを書き出してみましたが、他にも様々な疾患があり、
人間にも感染を生じるもの(人獣共通感染症)もたくさんあるので甘く見てはいけません。

<SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは>

この病気に関して重要なポイントは3つです。

  • Point1)人間にも動物にもマダニが媒介して感染すること

  • Point2)致死率が高い病気であること

  • Point3)流行地域について

Point1)人間にも動物にもマダニが媒介して感染する

SFTSはマダニが媒介するウイルス感染症で、人間だけでなく様々な動物に感染する人獣共通感染症です。
もちろんペットにも感染し、近年では猫や犬から人間へ感染した事例も報告されています。
特にネコ科動物の感受性が高いと考えられています。
日本だと主に「フタトゲチマダニ」「タカサゴキララマダニ」によって媒介されますが、その他多くのマダニからもウイルス遺伝子が検出されています。

Point2)致死率が高い病気

現在犬猫のSFTSに対して有効な治療法は確立されていません。
抗生剤による二次感染の予防、輸液による脱水の改善などの対症療法が行われます。
発症から約7日以降で徐々に回復に向かう子と、それまでに亡くなってしまう子がいるようです。

致死率は

  • 猫:約60%

  • 犬:約40%(症例数が少ないので参考値)

  • ヒト:約27%

非常に高い致死率を誇っています。

point3)流行地域

現在、猫と犬のSFTSの発生報告は国内では西日本が中心ですが、
関東や東北・北海道では安全なのでしょうか?

実は人間でも感染の流行は西日本に限られていましたが、2021年に静岡県・千葉県で感染が確認されていて、
今後は猫・犬でも広がっていく可能性が十分に考えられるので、西日本以外でも安心はできません。

<ペットのマダニ予防について>

ここまでは、マダニが媒介する病気についてお話ししてきましたが、これらの病気のリスクを減らすためにもしっかりとしたマダニの予防をしていきたいですよね。

マダニは秋から冬にかけても「幼ダニ」「若ダニ」が増えるため、暖かい時期だけではなく通年での予防が必要となります。

普段の生活で気をつけるポイントとしては、

1:散歩ではなるべく茂みなどは避けましょう
犬の散歩ではマダニとの接触の機会を減らしましょう。
外に出てしまう猫だとこの対策は難しいかもしれません。

2:外から帰ってきたらブラッシングをしましょう
吸血前のマダニであればブラッシングで体毛に潜むマダニを落とすこともできます。
散歩帰りの犬や、外から帰ってきた猫のブラッシングを習慣化してみてください。

3:動物用のマダニの予防薬を使用しましょう
基本的には毎月一回、予防薬を使いましょう。

マダニの予防薬には

  • 経口タイプの薬

  • スポットタイプの薬(皮膚に直接つける)

主にこの2タイプの予防薬があります。

特に緑が多く、どうしてもマダニが好むような場所を避けられない様であれば、これらの予防薬を使用した上で市販の動物用虫除けスプレーなどを使用してあげるとより安心です。
その他の虫からも身を守ることができます。

注意点として、

①一般的に市販の製品は『医薬部外品』であり、動物病院で処方される『医薬品』である予防薬に比べ効果が劣る場合がある。
②マダニを予防の対象としていない薬もあるため、予防薬をすでに使用している場合はそのお薬がマダニにも効果のあるものであるか確認しておきましょう。
予防薬を使用しているのに寄生されてしまうこともあるので、薬だけで安心せずに他の対策も行いましょう。
④マダニは寒い時期にも活動しているので、予防は通年で実施しましょう。

<マダニの寄生を発見したら>

皮膚に付いている吸血中のマダニは強い力で咬み付いています。
これを無理に引っ張ってしまうとマダニの胴体だけが取れ、口器が皮膚内に残ってしまうことがあるので注意が必要です。
残ってしまうとその後の炎症の原因になるため、マダニをご自身で取り除こうとせず出来るだけ動物病院で処置してもらうようにしてください。

また、マダニを手でつぶすのも絶対にしないようにしてください!
マダニの持っている病原体が広がり、ご自身や動物の感染につながってしまう可能性があります。

どうしても病院を受診されるのが難しい場合は、ペットのダニ取り用のピンセットを使用して取り除きましょう。
取り除いた後はしばらくその部分の皮膚をチェックし、赤み・腫れ・熱感・痛みなどが出ないか観察しておくようにしてください。

<まとめ>

  • マダニは日本全国に生息しているため、都会でも安心はできない

  • マダニから人やペットに感染する病気がたくさんある

  • SFTSという病気は人間にもペットにも感染する、特に猫で致死率の高い重大な人獣共通感染症

  • 予防薬は毎月、そして通年で使用する必要がある

  • 予防薬にはたくさん種類があるので出来るだけ動物病院でその子に合ったものを処方してもらいましょう

  • 寄生したマダニを発見したら、ご自身で処置せず動物病院へ行きましょう

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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