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【窓コラム】モリス『いちご泥棒』4社比較
2023年、ウィリアムモリスデザインのカーテンが新たに2社発売になりました。カーテン業界はまだ様子見という感じです。販売する立場から4社の違いを同一柄である『いちご泥棒』で比較してみたいと思います。
ウィリアムモリスのデザインで最も有名な『いちご泥棒(Strawberry Thief)』について、説明はマナトレーディング様より引用いたしました。
--以下引用--
モリスの夏の別荘「ケルムスコット・マナー」の庭で、いちごをついばむ鳥たちを温かな目線で描いたモリスの代表作。合わせ鏡のような左右対称のパターン構成が特徴。オリジナルはマートン・アビー工房において最初に作られた多色使いのインディゴ抜染プリント生地。
--ここまで--
ここからは4社のいちご泥棒たちを比較してみます。
マナトレーディング
マナトレーディングではイギリスからコットン100%にプリントの生地を輸入しています。多色プリントで大変発色がきれいですが、コットンなので防炎については薬剤による後加工を施せば防炎認証を取得することができます。しかし防炎後加工は色や風合いが変化してしまうので躊躇してしまいます。生地巾はW138㎝。タテリピート:53㎝・ヨコリピート:46㎝。生地巾に対して3柄入ります。
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川島織物セルコン Morris Design Studio
川セルの『モリスデザインスタジオ』は、サンダーソンデザイングループのライセンスのもと、そのデザインをジャガード織物で再現しています。「織物だからこそ表現できる、圧倒的な色彩の豊かさと立体感」という説明を正に具現化しています。高密度で織り上げたしっかりとした質感はカーテンとして存在感・重厚感を放っています。マナトレーディングの輸入品に比較すると、プリントとジャガード織ということで質感が全く別物であることと、日本の住宅に合わせて柄を小さめにしている点が特徴です。縫製についてもワンランク上のフィーロ縫製という仕様になります。生地巾はW139㎝。タテリピート:40.4㎝・ヨコリピート:34.8㎝。生地巾に対して4柄入ります。
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リリカラ V&A
リリカラはV&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)の監修により製作されたこちらもジャガード織のファブリックです。これまで、モリスといえばサンダーソンのアーカイブという認識が一般的でしたが、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の所蔵アーカイブということです。モリスのデザインが収蔵されていることで、そのデザインを自由に使っていいということではなく正当な表示をしてより多くの使用が可能になっているのです。またモリスはV&Aのレストランの内装を依頼されたこともあり、ミュージアムとは深い関わりがあるのです。今でもモリスルームとして親しまれているようです。
V&A監修によるリリカラのいちご泥棒ですが、川セルのジャガード織に比べると生地の密度が低いのですがカーテンとしては十分な厚みを持っています。色合いは若干ブルーみが強い印象でクールな色彩です。グレイッシュカラーが流行っている日本のインテリアにはコーディネートしやすいかもしれません。そして、価格が他に比べてリーズナブルなので手に取りやすいと思います。生地巾はW138㎝。タテリピート:41.5㎝・ヨコリピート:34.5㎝。生地巾に対して4柄入ります。川セルと同様に日本の住宅のスケールに合わせています。
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サンゲツ MORRIS CHRONICLES
2021年にサンゲツからサンダーソンデザイングループ社とのデザイン契約締結の発表がありました。SDG社の代表的ブランドの「MORRIS&Co」の日本を含む東アジア・東南アジア全域のライセンス取得ということが話題となりました。SDGは言わずと知れた英国のインテリア商材をデザイン・製造・販売する会社で、Zoffany、Sanderson、Morris &Co.、Harlequin、Scion、Anthology、Clarke & Clarkeというブランドを有する会社で、150年以上のデザインアーカイブ1万点以上を所有しています。その中でも、MORRIS&Coについてはモリス商会が第二次世界大戦で会社を閉鎖した時にサンダーソン&サンズが版権を買い取り、MORRIS&Coブランドとして引き続き販売した経緯があります。V&Aは製品を収蔵しているのですが、SDGは製品化に関するデザインアーカイブを所有しているというところで違いがありそうです。
今回発表された『MORRIS CHRONICLES』ですが、サンダーソンデザイングループとの協同により、日本の住宅に合わせてリデザインされています。いちご泥棒ファブリックですが、2倍ヒダカーテンに縫製した時の柄の出方を考慮したリピートになっています。
生地巾はW150㎝。タテリピート:60㎝・ヨコリピート:50㎝。生地巾に対して3柄入ります。リピートサイズを川セルやリリカラと比較すると大きめです。(川セルの場合は、フィーロ縫製という特別仕様で縫製していますので柄の出方はもちろん考慮されています。)
川セルモリスのいちご泥棒に慣れている専門店スタッフからすると、鳥が大きいという印象が強いという意見が多いです。
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同じデザインですが、各社でクオリティや色味が違います。また、同デザインでも別色展開やモノカラーで現代的再解釈した『PUER MORRIS』などがあります。モリスカーテンについては専門店で比較検討することをおすすめします。もちろんヴェスタショップでも承っておりますのでお気軽にご相談ください。