![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/113381965/rectangle_large_type_2_74e3680335bb90ebde9e61ccf7a7047d.jpg?width=1200)
ソウル親子留学2003年⑥福笑いとちびまる子ちゃん
2003年。私はソウルで新年を迎えた。
しかし韓国のお正月は旧暦、2月なので町はいたって普通通り。
メロン(4歳)だけがご機嫌さんだ。なぜなら明日メロン父がソウルへ来るから。お父さんと会うのは約ひと月ぶり、よほど嬉しいのか早朝から何度もつぶやく。
「早く明日にならないかな〜」
そして
「お父さん、忘れないで持ってくるよね?」
メロンのお楽しみはもうひとつ。
1週間ほど前
メロン父がおもちゃを買ってきてくれるというので、子供雑誌を一緒に眺めていたときだ。
「これが欲しい! これ、なんていうおもちゃ?」
と聞かれた。覗き込むと『福笑い』だった。
「えー福笑い? おままごとセットとかキティちゃんとかにすれば?」
「いいの、これがいいの、ふくわらい!」
福笑い一点張りの4歳。かくしてメロン父は師走の東京にて、昨今あまり売ってない『福笑い』を探し回ったそうだ。
ソウルへ来てくれた福笑いにもとい父にメロンは大喜び。ロッテワールドで遊び美味しい参鶏湯を食べ、最終日は部屋でゲームざんまい。
久しぶりの父と子の団欒だが2泊3日はあっという間、
私たちは別れるときメロンが泣きじゃくると想定した。だから土産の中で、このタイミング(帰る間際)用にメロンが大好きな『ちびまる子ちゃんビデオ』を隠し持っていた。
「何時に帰るの?」
メロンが時間を気にし始めたので
「そうそう、これも持って来たよ。ジャーンちびまる子ちゃん」
ワァと飛び上がるメロン。早速ビデオを見始める。
「あはは、ホントちびまる子好きだねメロンは。じゃ、お父さん帰るね、あ、でもまたすぐ来るからね」
しかし、父の言葉にメロンはいっさい反応しない。テレビに顔を向けたままだ。
「メロン、メロン? お父さん帰るよ」
玄関で靴を履きながら再度声をかけるがそれでも振り向かない。
固まっている。
こ、これは、大泣きの前兆か。
ジリジリと緊張が走る。
ドアを開けたメロン父、目を潤ませながらもう一度
「じゃあねーメロン、お父さん行くよ、またすぐ会えるからねーママの言うことちゃんと聞くんだよお……メロン! バイバ」
その時だ。
一瞬だけ振り向いたメロン
「オッケーバイバイあ、お父さん寒いから早く閉めて」
ガラガラスッテン。私たちは新喜劇スタイルで倒れた。
泣かれるのを心配してたのに、あっさり早くドア閉めてくれと言われたメロン父。心外及びプチ憤慨の顔で帰っていった。
アパート下まで見送った私は、しかし4階の部屋まで一気に駆け戻った。
メロンはきっといま、ひとりで泣いている。寂しさを紛らわせるため、あんな態度をしたに違いない、ああ健気な子や、あかん、母も泣いてまう。ごめんなメロン、母のわがままで父と離ればなれしちゃってさー
息を切らして、ドア前に到着した。
ら、
「ヒャハハ! 馬鹿じゃん、そんなことしてええ、ちびまる子ちゃんっなにしてんのぉ(と、玄関の私に気付き)あ、ママ! ほら見てちびまる子ちゃんね、こんなことしてるんだよアハハハ!」
嘘やろめっちゃ笑てるやん。
ちびまる子ちゃんの威力
半端なかった。
【すごいじゃろ ワシの孫だよ ちびまる子】
by友蔵
続く