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おとーたんは普通の仕事じゃないの?


夫は、まるで高度成長期の昭和サラリーマン
24時間働く男代表者みたいな男(今はもう定年ご隠居さんなのだが)

自分の父親フミオが、あまり働かない博打好き〈宜しければ↓エピソード書いてます〉

だった反動か
私はとてもよく働く人と結婚した。

しかし
反動が回転して、それはそれで大変。
後から気付いた。


会社のためならエンヤコラ。
土日祝日?盆暮れ正月?子供の運動会?

関係ありまっせん蜂

夏休み家族揃ってドライブ中でも
時差ありまくりのハワイでも

仕事の電話ウェルカム
カムカムエブリデイ
エブリシング
エブリウェアーてな調子である。

優先順位は会社が常に一番だった。

娘3歳のとき。

まだそのじぶんは
「オヤジ臭っせぇ」などとは言わない。笑

日曜日だったが、その日も夕方から仕事(イベント系なので、土日がとくに忙しい)

せめて散歩でもしながら、近所まで見送ることに。嬉しそうに手を繋ぐ娘。

そして、夫がじゃあねと手を離したときだ。

突如

つむじからトマトピューレ飛び出した?みたいな声で

「おとーたーん! また来てねー! おとーたーん、また、うちに、あそびにきてねー!!」

海峡の別れかみたいに声を振り絞る。

やめれ娘よ

ここら周囲は古い民家多いねん、古い女房たちもようさんおるんよ。(当時、私はまだ若い女房枠にギリ入っとるから笑)

んまぁぁあの家は愛人宅だったのね。と、さっそく噂されかねない。

私は娘の口を塞ぎ
抱えるようにして家へ戻った。

彼女の認識では
おとーたんと呼ぶこの人はたまに家に遊びに来る人。切ない笑い話である。


娘が小2くらいでは、こんなことが。

夫の働きぶりは相変わらずで、夜中帰宅だから娘が晩御飯を夫と一緒に食べることはほぼ無い。

そしてエンタメ系会社に多いであろう、朝は遅め。自分が学校へ行くとき、お父さんは寝ている。娘はそれが【普通】だと思っていた。

ある平日の夕方遅め。
振替休日かなんかで、娘と二人ちょっと遠出した帰りだった。ちょうどラッシュ時にぶつかってしまった。

駅に着くたび、お父さんみたいな年代の人がどんどん乗ってくる。車内はギューギュー詰めになっていく。

ラッシュ初体験の娘

突然あの甲高い声で(小学生なっても彼女はハイキーだった)

「ママーどうして、こんないっぱい? なんで人がたくさん乗ってくるの?」

子供の身体だ。右へ左へ押され続けて不満が出た。こちらもちょい機嫌悪い。子育てしてて、ラッシュっをすっかり忘れていた。時間配分を考えなかった自分を戒めながら、つい早口で答える。

「これはラッシュって言ってみんなが会社終わって家に帰る時間なの。だから混むの」

すると、私のカバンに手を入れ携帯で現在時刻をみた娘が

さらなる高音を発した。

「えー? もう会社終わったの? まだ6時半だよ! なんでこんな早く仕事終わるの?」

と質問してくる。

そりゃそうだろ。お父さんがその時間に帰ってくることはnever無い。真っ当な疑問だ。

毎日、この手の質問あるいは他の脈絡ない質問が山ほどくるから

子供相手はほんま疲れますんや。それが仕事でも母親業でも、育児休暇中の男性でも。すべての質問に優しくかつ丁寧な対応など、なかなか出来んのよ。

またもついついポンポン答えてしまった。

「早く終わってんじゃないの、普通の会社はみなこれくらいの時間なんだよ」

同時に超音波ボイスが響いた。

「ええええええ!!!!! じゃあお父さんの会社ってフツーじゃないの? 〇〇(自分の名)のお父さんて、普通の仕事じゃないのおおあお?」

やめれ娘

ここは満員電車の中じゃ

答えてあげたいけど、ムリじゃ。
話なごうなるしな。

べつにおまんのトト様は、反社組織でもなんでもないよ、いたって普通の会社や。普通やけんど、イベントやコンサートっちゅうのがあるからの。その仕事は時間的に普通じゃないんよ、そやな、そこは普通とはいえんな。

けど世の中には、早い時間に終わらん仕事もよーけあるんや。だから、ここにいる人が普通で、おまんのトト様が普通やないってことじゃないんやでぇぇ。

心で説明するが言葉にしなかった。かりに、この場で小声で説明したとしても、した分だけ、また彼女の高音声質問が車内に響くだろう。

して。

やってはいけないと思いつつ(子供の質問に答えず)あわてて誤魔化す。

「あ、何か食べて帰ろうか? ハンバーグ? カレー?(このさい)マック?」

まだまだ可愛い年齢だった。いとも簡単に食べ物に釣られてくれる。

「わぁ、じゃカレー食べたい、デニーズいきたい♪」

お父さんの会社が普通かどうか
それはもう、どうでもよくなったみたいだ。
ナイス👍デニーズありがとう。

ややこしい質問攻めから脱した。

私はやれやれと胸を撫で下ろす。うちの子に普通の会社員たちを見せたらあかん。これからはラッシュに気をつけよう。

と、ふと窓を見たら
そこに映り込む車内の会社員たちから

ガン見されていた。無言の質問攻め。

「この子のお父さんは普通じゃないのーー?」


                終わり


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