大人になってからの青春
職場の同年代の人たちと呑みに行った。
それぞれとはちょくちょく呑みに行ったりしていたが、
3年も一緒に働いているのに、そのメンバー全員で呑むのは初めてだった。
話のテーマは、学生の頃に流行していたもの、青春時代の淡い想い出、、
趣味、嗜好、性格、育った地域すべてが違う4人なのに、
思いだす記憶はどれも似通っていることばかり。
17時半から呑み始めたはずなのに、気付いたら23時になっていた。
店内にいる客も徐々に減っていくなか、私たちの勢いは落ち着くどころか
増していく一方だった。
お店の閉店時間が近づき、会計を済ませて出てきた私たちは
冷めやまぬこの熱気をどうにかしたいと思い、
ふと目の前にあった学生時代からよくお世話になっていた某格安カラオケ店に入った。
最初は当たり障りなく、NiziUやAdoとか流行りの歌を歌っていた。
それはそれで楽しかったが、私はあえて、
西野カナの「会いてくて、会いたくて」を選曲。
それをきっかけに全員の頭の中が一気にタイムスリップ。
あの頃、カラオケに行けば嫌というほど歌っていたAKB48、サスケ、一青窈、HYなどを当時の空気感のままで歌いつくした。
踊る人もいれば、合いの手を入れる人、ハモる人と各々に盛り上がった。
本当に学生時代に戻った感覚だった。
時間はあっという間に過ぎていき、終了5分前の電話が室内に鳴り響いた。
最後だからみんなで歌える曲を選ぼうということになり、
誰しもが歌ってきたであろう合唱曲の定番「旅立ちの日に」を選曲。
「当時、担当していたパートを歌おう」との声があがり、
全員ソプラノ担当だったはずなのに、
いざ曲が始まると、思い思いにそれぞれが好きなパートを歌い始め、
よく分からないことになっていた。
でも、それが良かった。
外に出るとかなり時間が経ったのか、先ほどとは比べ物にならないくらい、ひんやりとした外気に触れて、思わず身震いをした。
人通りはなく、街もすっかり静まり返っている。
時刻を確認すると、iphoneのディスプレイには”2:20”と表示されており、
時の残酷さに驚いた。
一気に現実に引き戻された私たちは、明日も仕事や用事があることを思い出し、急足で別れを告げそれぞれの帰路へと向った。
時間がこんなにも経つのが早いと感じたのはいつぶりだろう。
大人になるにつれて、仕事が忙しくなり、コロナも流行り、
このような遊び方をするということも少し減っていた。
何より今日は職場の人たちと、まるで一緒に青春を過ごしてきた仲間なんじゃないかと錯覚するくらいに、はしゃぐことができたのが嬉しかった。
愛おしい思い出がまたひとつできたなと思いつつ、
私は身体が冷え切る前に、急いで自転車を漕いで家を目指した。
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