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私たちはそんなに簡単には壊れない

夫が少しずつ元気になっている。
それが目に見えるようでうれしい。


この勢いで、仕事に復帰してほしいとか思わない。今のまま、ゆっくりしてくれていればいい。
充電が切れてしまったスマホにどっすどすの電流を流したい。
また満タンになってほしい。そういう力を感じてほしいというだけ。


私たちは日本人の夫婦ではないから、いつもビザというものが付きまとう。婚姻ビザというのは強くなくて期限がある。永住権を取るのはあまり容易ではない。


どちらにしても、更新だの申請だので、どちらかが「きちんとした仕事」をしていないといけなくて、それはフルタイム、正規雇用、企業のサイズなどが影響するけどいまは二人とも無職なわけだからどっちにしても難しいだろう。


期限は来年の9月ごろで、それより3か月前くらいには申請しないといけない。だから春頃までにはいろいろ決着をつけないといけなくてそれがだめならドイツへ舞い戻る。それしかない。


ドイツという国は、住むのが本当に難しいと感じだけど、一つだけいいのは外国人に寛容なことだ。夫が日本に住むよりも、私がドイツに住むほうがビザ的にはずっとずっと簡単だ。


まあ、今はそんな話より夫の健康の方を優先している。どこかの国には結局流れ着くわけで。太平洋の真ん中でボートに乗って浮かびながら暮らしてください、とはならない。


顔色もよくなり、好きなものをよく食べてよく寝る。
目がまた青くなってきた(目が青い人と付き合ったことがある人はわかると思うけど、体調が悪いと深緑とか灰色になる。金髪も少し色が濃くなったりする。私たちも黒いからあまり気づかないだけで、体調によって瞳や瞳孔の色が変わっているかも)


私は金髪とか青い目とか憧れたことはなくて(イタリア系のスパイラルカールにはあこがれたことがある)、でもやっぱり目を見るとすごい青いので驚くことがある。喧嘩をしながら、相手の言い分を聞いているときに「すごい色の目をしているな」と感心していて、あまり聞いていないのがバレて火に油を注ぐこともある。


とにかく、夫の話。
身体が休まると、次のアイデアが出てくるようだ。
夫は今までやりたかったことを一つずつするようになった。まずは哲学書を読み漁ること。そしてそれに対する評論をポットキャストで話したり、ブックチューバ―のごとく、本の紹介動画を作ることなど。今週もやっている。


それから自分でアプリ開発も始めた。仕事をしながらメンタルを正常に保つための助けになるようなアプリを作りたいらしい。デジタルデトックスを少し助けられるような簡単な設定ができるアプリができるようだ。


私は自分のやりたいことをするのにとても時間がかかった。自分を幸せにすることは悪いことだ、と長くブレーキを踏んだ。同時に、前に進みたい、とアクセルも踏んだ。


ブレーキとアクセルを同時に踏み続けて、すっかり壊れた。でも、何年か修理してなんとかなった。人間というマシンはごちゃごちゃ散らばったり、精密に入り組むけど、簡単には壊れないようにできている。うちのばあちゃんは今年90歳になった。90年間、とくに大病せずに普通に生きている丈夫なマシンだ。


人はそんなに簡単には壊れない。
壊れているようで壊れていない。芯のところではガソリンが温められていて、次の一歩を待ってる。才能が発揮される機会をうかがっている。


慌てなくていい。自分だけの方法とタイミングで。かならず、何とかなるって思える日が来るよ、と隣で見守っている。


遠くに住む友達に、いまから小包を出してきます。
太平洋の向こう側から、私の本を買ってくれました。無事に届くといいなって祈りながら、とりあえず出してきてみます。行ってきまーす!

行け!モントリオールまで




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