あなたには、人をわくわくさせる力がある
これは、私がいままでに絵の評価として言われた言葉の中で最もうれしくて自分の中に大切に残している言葉です。
私は、絵を描いています。毎日描いていて、でも今までは自信がなくてnoteにもどこにも、あまり公開をしないでいました。公開をして、もし反応が薄かったとき。
次の絵にまた移れるのか不安だったのかも、と振り返って思います。
いまから３年ほど前、とある絵のワークショップへ行きました。
２日間だけで、それも半日ずつしかやらない、とても小規模な地元のワークショップでした。田舎なので、場所がなくいつも公民館。そして、参加者はおじいさんとおばあさんばかりでした。
私は、ひとりだけ若くて、ひとりだけみんなと違う描き方をしていましたから、なんとなく浮いていて、だれも話しかけてきませんでした。だれかが（おそらく勇気を出して）「飴ちゃん、いる？」と差し出してくれたけど、それを受け取るだけで食べず、もくもくと描いていた。だから、ちょっと厄介に思えたかもしれません。
午前は描いて、午後はみんなの絵を見る、という時間になり、先生と一緒にああでもない、こうでもない、といいながら一枚ずつ講評されて行きました。そして私の絵の番になった時に先生は
「うーん、上手くはないんだけどねえ。どうしてこんなに見てしまうんだろう」と言いました。初心者ですか、描き始めたばかりですか、と聞かれた。おそらく、本当に下手だったんだと思う。私は、１７歳のころから自己流ですがやっています、と答えました。
その先生は、ワークショップが終わったあと、私のところに来て個人的にいろいろと講評をしたり、技を教えてくれたりしました。
そして最後に「でも、今の僕の言ったことはすべて忘れて」と言いました。
こんなおいぼれのアドバイスを真に受けていたら、あなたのこの絵はダメになってしまう。いま言った技もつまらないから使わないで。あなたの絵には人をわくわくさせる力がある。それをどうか失わないように続けてください。
「絵を描くとき、いつも自分に問いかけてみて」とも言いました。
自分は本当にわくわくしているか、誰かやなにかのために描いていないか。今のこの、熱量と線を発展させていければ、絵だけで必ずやっていけるようになる。
そして「うらやましいなあ」と言いました。その方は中部地区の二科展で非常にいい成績を収められている先生だったので、恐縮しましたが、いまでもうれしくて覚えています。
なにが言いたいのかと言うと、絵を描くことがどれだけ好きとか、それがどれだけ得意かなんてことは忘れていない溶けないと思うのです。それよりも、自分のつくるものにどういう力があるのか、自分の反応と鑑賞者の反応をどれだけすり合わせたいか、ということを常に考えるべきだと思う。そしてその力を責任をもって発揮していく。
例えば人の反応を気にする、というとネガティブに聞こえます。そんなことは無視して前に突き進まないといけない、という人もいると思う。でも私は、それは必要なことなのかなって思うときがあります。例えば
①だれかに何かを言われてしまったらどうしよう
というものがあります。相手の反応がネガティブであること前提で考えているから心配になるわけでえす。でも
②もしあの人に見せたら、どんな風に心を動かしてくれるだろう。
というものもあります。相手の反応をポジティブかあるいはニュートラルに考えている人です。
①は筆を止めるけど②は先に進める。その人のために描くんじゃなくて、自分の描いているときの気持ちを共有してくれる誰かがいるということを信じるんです。
絵をいやいや描く人、というのは実はなかなかいないんです。こんなのは役にも立たないことですから、義務感を持ってやるシチュエーションなんてあまりない。もちろんわがままなクライアントを抱えたりすればそうなるかもしれませんが、絵は基本的に本人が描きたいから描くシーンが多いと思います。
だったら、その気持ちが相手に伝わってもいいんじゃないか。そう思います。描いた時と完成した時の、なんとも言えない、言葉では表せない気持ちを、そのまま届けることを意識しながらやるべきなんだと思います。
今日は、マンゴーの絵を描きました。マンゴーなんてものは、こんな真冬にはありませんし、果物屋で見るような高級品は私じゃ買えません。
目の前にある果物をここ１か月ほど描いていた私が、なぜ目の前にない、食べたくも何ともないマンゴーを描いたのか。
あれと同じです。コンビニにはいって、おにぎりを買おうとしていたのに、全然違うものを買って出てきたようなあれです。食べたくもないから鞄にしまうんだけど、なぜか納得はしている。
その行動に名前はあるのかな。その行動に理由は必要なのか、必要ならばどんな理由なのか。
マンゴー。よかったら考えてみてください。私も考えてみます。