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レモンを描いたら不覚にも「希望」がにじんでしまった話

希望とか、そういうの苦手です。
そんなのあるかどうかわからないし、掴めるわけじゃないし。
言葉だけで浮遊しているだけってなんかずるい気がします。



気持ちいい朝の光の中で


昨日、レモンの絵が完成しました。
半年かかってしまいました。

私はレモンを描いているはずでした。切ったレモン、断面に種がちらちら見えるレモンです。


なにせ半年もラップをかけて、また外して描いて、を繰り返していたんです。ご覧の通り、ちょっと皺皺なんです。
きりふきで水をかけたり、工夫はしたんですが、やはり表面から水分が飛んでしまいました。



画材はパステル。表面が少し粉っぽく立体的になるのが特徴です


私は、ただレモンを描こうと始めたのでした。でも、たぶんレモンを描こうとしていたんじゃないと思います。


このレモンは、今、完成だけを見てもらっていますが、ここまで紆余曲折ありました。いろいろなレモンを体験したレモンなのです。

物悲しいレモン、退屈で変哲のないレモン、はじけたようなヴィヴィットなレモン、かっこつけて鎮座するレモン。


それらを経て、ようやく、こんなレモンになりました。皆さんの目にはどんなレモンに映りますか。


私は、これを完成した時、希望が見えました。もしかしたら逆かも。希望が見えたから、ここで止めることにしたのです。

なんかプロっぽい良い方で恐縮ですが、絵は好きな時に止めることができるし、逆に続けようと思えば紙が破れるまで続けることができます。


私が、ここで止めたかったのはどうしてだろう。
この半年、希望が見えたことはあっただろうか。
どうして、レモンに希望がにじんできてしまったのか。


そんなことを考えながら、画版から外しました。ただの紙の上のレモンは、こうして一枚の絵になりました。


私は、この絵が描けたことをとても誇りに思います。色、形。その向こう側にある、なにかもっと別の、レモンではないものを私は見たかっただけなのだと思います。


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