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モウヤラネー!と叫ぶ

連日投稿していた短編ですが、ついに、これで終わりです。

せっかく何万字も書いたので、ちょっと思い出話をしたいと思います。こう言うものは、みなさんが抱いた印象というものがありますので、それを壊さないように、あまり答え合わせのようにならないようにしたいと思います。


創作を書いて一言
ツカレターー!!モウゼッタイカカネーー!!


言い訳

はじめから言い訳でスタートですが、本当は9編書く予定でいました。7編で終わったのは、8話目があまりに殺伐とした物語になってしまい、この短編集と雰囲気が合わないと思ったから。そして9話目は書いている途中でぎっくり腰になり、まともに座って書けなくなったから、と言う理由でした。もし、期限内にぎっくり腰がきちんと治れば、もしかしたら書くかもしれませんが、あまり悪化させたくないので、7編で終わりにすると思います。


1 カプチーノ
先日、鰻屋さんで悔しい思いをした話をnoteに書いたと思います。あの時、「この損した感覚を何かに生かさないと勿体無い、本当にただ損しただけで終わってしまう!」とけち臭い私は思ったわけです。だから、この、鰻屋に来た体験談を何かしらの形で昇華させたかった、と言うのがもともと『カプチーノ』を書いたきっかけでした。

カプチーノはミルク(白)とコーヒー(黒)が混ざっていますね。言ってみればグレーということです。特に色々な経験をすでに積んだ人が始める恋というのはおそらく、あまり簡単なものではなくて、幸せとか失恋した、とかクリアに判断できないという特徴があると思います。(読者の方の中にすでに気づいてくれた方がいますが)性格についても、誰がいい人で誰がやな人なのかあまりわからなかったり、そもそもハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわからなかったり。そういう、曖昧さに加えて、「でもわかったから、何?」っていうことばかりを抱えた大人たちが繰り広げる群像劇としてグレー色はぴったりだと思いました。でも、グレーってなんか寒くて悲しいイメージがあります。だから、カプチーノっていうちょっと暖かくて、可愛らしい名前にしておきました。

『カプチーノ』を書きながらよく聞いていた曲




2 コマンド シフト ゼット
読みにくかった方も多いかと思います。でも「一番好き」と言ってくれた方もいました。
実は、名本くんにはモデルがいて、高校の同級生です。(彼はこの物語を読んだら自分がモデルだとすぐに気づくだろうな)理香子ほどきつい当たり方はしませんでしたが、私はその子がすごく親切にしてくれているのに、それを大切にしませんでした。
私のことが好きなら、それくらいするのは当たり前、と思っていたし、その子も特に嫌がらなかった。だからいいと思っていました。その子に彼女ができても、私に彼氏ができても、その子とはたまに会って(私は東京、その子は関西にいました)何かを買ってもらったり、化学の話をしてもらいました。私は化学の話はとても好きなくせに勉強は大嫌いで、だから、その子がしてくれる化学の話を楽しみにしていました。
私はその子のことがとても好きだったと思う。ただ、自分の身に起こることにあまりにも圧倒されすぎていて、それどころではなかった。
その子がわざわざ東京まで会いに来てくれた時。なんか、すごく並ばないといけない美味しいお菓子があって、私のために並んで買ってきてくれた時でした。私はどういう顔をして会えばいいのかわからず、そもそもうつ病でほとんどアパートから出ない毎日だったので、ドタキャンしました。その子は「せっかくなのに」と食い下がりましたが、住所を教えることはせず「◯◯くんが自分で食べて」と言って半ば追い払う形で終わりました。
多分優しい子なので怒っていないとは思いますが、私は改めて、たくさんの人に迷惑をかけながら生きてきたんだなあ、と思いながら書いていました。
とにかく、すごくいい子でイケメンで高学歴で文句ありませんでした。勿体無いことをしました。

『コマンド シフト ゼット』を書きながらよく聞いていた曲




3 埃のはなし
この話はもともと、浮気をされた「私」だけの物語のはずでした。現在と過去を受け入れて、失恋から立ち直っていく、という。ただ、それではあまりにありきたりなのと、途中「浮気をした方の優子はどうやって生きるんだろう」と考えたら、つぎつぎと浮かんだのでそれを書いていったという感じです。2人の人生を1つの短編の中に編み込むように書くのはこれが初めてでした。
短期ですがシンガポールやマレーシアに住んでいたことがあるので、その時の喧騒というか、市場の活気みたいなのを出来るだけ思い出して書きました。
あと、ちょっと私の文章には古臭い匂いが漂う?気がしていて、ウーバーの存在を入れることで現代らしさが出てきたらいいかなと思いました。オニオンリングは私が大好きなので食べたいなあ、と思いながら書きました。
埃の味は、どうやって書こうかな、と思ってさすがに埃を口に入れるガッツはなかったので、その辺にある紙の切れ端や消しかすをぐちゃぐちゃに丸めて口の中でしばらく噛みました。

『埃のはなし』を書きながらよく聞いていた曲




4 ジゼルについてほんの少しのこと
この話は一番最初に完成しました。実は、短編集を書くつもりはなくてエッセイを書いて出そうと思っていました。それが、私の絵に関するエッセイでした。私は普段、絵を描いて過ごしていますが、文章にしてみると「こんなに苦しんでいたのか!」と驚き、これはただの重苦しいエッセイになるだけだな、とボツにしました。
そのあと、描いた桃色の兎(本当に描いていたんですよ)が現実世界に姿をあらわす、ちょっとしたファンタジーを書いてみようと思い立ったのが、この短編を書くきっかけであり、このオムニバス集を始めたきっかけでした。絵の中にいた者と恋愛関係になるというのは、画家なら一度は考えたことがある(はず)ものです。
これを書いて、改めて、私は創作ではなくエッセイ向きだなあ、なんて独り言を言っていたものです。
ちなみに「私」は男にも女にもとれる、中性的な人にしました。

『ジゼルについてほんの少しのこと』を書きながらよく聞いていた曲




5 魚たち 海たち
以前書いた創作、「勝負」の完全版です。もともと、こっちを先に書きました。ピリカ文庫のためにちょっと削ったのです。ただ、ばあちゃんの存在と、朝日の中でカレーパンを食べるシーンにどうしても未練があって、完全版を出したいなあ、と思っていたら、オムニバス集を作ることになったので、そのうちの1話にしよう、と加えました。うまく馴染んでいると思います。
えんちゃんというキャラクターをどこまで甘くするか、ちょっと迷いました。ただの甘々なお兄ちゃんという風では、物足りないのかな、と思いながら加減したと思います。
今書いていて思いましたが、私はどの話にしても、自分のタイプの男性を書いているような気がします。だから「この男、俺みたいだな」って思ったら、もしかしたらあなたは私のタイプの人かもしれないです。

『魚たち 海たち』を書きながらよく聞いていた曲




6 I love you
これは、以前にエッセイとして書いたものです。それを東京バージョンにして、少しフィクションを入れて再編集しました。実は、この話がオムニバスを書くきっかけというか、背中を押してくれた気がします。はじめ、何話も連続して書くなんて無理だと思っていました。私はこの話がすごく好きだったので「この話を出すために他の話を書こう」と思いました。
だから、他の話たちは、この話を出すための飾りというか、前置きみたいなものです。

『I love you』を書きながらよく聞いていた曲





7 彼女は私のものだった
全てのうち1話くらいはセックスシーンを入れたい、と思っていました。その条件として、①すごく短いセックス②オーガズムに達したかどうかわからないセックス③できれば同性の④あまりエロくなくて一瞬セックスをしているかどうかわからない、普通のシーンとセックスシーンの境目があまりわからないように書く
というものがありました。それが叶えられそうなのがこの話だったので、書いてみました。結果、全ての短編の中で一番好きになったので、オムニバス集のタイトルとし、最後に持ってきました。

『彼女は私のものだった』を書きながらよく聞いていた曲



最後に

全ての話を通じて伝えたかったことはありますが、(繰り返しですが)答え合わせみたいになるのが嫌なので、皆さんが感じたことを優先するのが一番いいと思います。そもそも、全部の話を読んでくれた方、本当にありがとうございました。とても嬉しかったです。まだの方は、1つでもいいので、ぜひ気になるやつを読んでみてください。



最後まで読んでくださりありがとうございました。
そして何より、短編を出したときにコメントくださった方々ありがとうございました。書きながらすごく励みになりました!


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