フォカッチャのくぼみよ、さようなら
夏は暑くて辛いけど、一ついいことはパンが好きなだけ焼けることだ。
とくにフォカッチャ。フォカッチャは、指でくぼみを作りそこにオリーブオイルを注いでローズマリーを刺すのだけれど、冬に発酵させてもなかなか膨らまず、指で押してもくぼみができない。
夏の終わりは、フォカッチャの終わり、ということなのである。
この夏、たくさんのフォカッチャを焼いた。
生地の中に刻んだハーブを入れるのが我が家のやり方だ。
それはオレガノだったり、イタリアンパセリだったり、バジルだったりする。全て、庭でとれたての新鮮なものに限る。
生地に入れて焼くと、噛むほどに涼しい、いい香りがするのである。それは食欲を刺激して、次の一口、またひとくち、と食べ進めたくなる。
上に乗せるのはなんでも自由。それこそ、ローズマリーとゲランドの塩。これが一番シンプルでかつ旨い。塩の味をダイレクトに感じながら、オリーブオイルの香りやローズマリーのちょっとした苦味が付いてくる。
本場イタリアでは、さらにオリーブオイルに浸して食べるんだとか。やってみると、本当につぎからつぎへ、ぱくぱくと止まらない。
思い切って、ピザ風にしてみるのもいい。
採りたてのルッコラをばらまいて、パルメザンチーズをばらばらかける。生ハムを豪勢に用意して、惜しみなく乗せる。レモン汁とオリーブオイルをかけて出来上がりだ。
チョリソーが手に入るのであれば、刻んだチョリソーととろけるチーズを上にかけてオーブンでカリッと焼いてしまうのもいい。いわゆるピザパンのようなものだが、手作りのフォカッチャで作ればそれはそれは、美味しいものである。
このように、無限に楽しみ方があるフォカッチャだが、今年すっかりハマってしまったものがあった。それは
焼きもろこしフォカッチャ
真夏のギラギラと照りつける中で収穫された甘い大きなトウモロコシを用意して、実だけ削ぎ落とす。それをバターでじっくり揚げ焼きし、最後に醤油をたらり。
粗熱をとって、生地に混ぜ込むのである。
香ばしい醤油が香るバター風味のフォカッチャときたら。いくつあっても足りない、つい手が伸びてあっという間になくなる。
さて、そんな話をしていたら、今年最後のフォカッチャが焼きたくなってきた。畑へ出て、これもまた今年最後だろう、大葉のイタリアンパセリを収穫する。その場で手でちぎり、生地の中へ。よくこねて、発酵。オリーブオイルをひいた天板の上に出し、さらに発酵。
おそらく気温が上がらないため、あまり膨らまないことが予想されるので、べちゃんこフォカッチャでも美味しく食べられるようなメニューがいい。そうだ。フォカッチャサンドはどうだろう。
生ハム?トマト?ルッコラ?レタス?チーズ?うーん。どれも違うような気がする。
何かあたらしいものがいいかもしれない。そうだ。
かぼちゃを半分、ごろりとそのまま圧力鍋で蒸す。皮も合わせてよく潰して、ペーストにしたら、クリームチーズとバター、少々の塩を混ぜてよく練る。仕上げはシナモンとカルダモンを一振り。
フォカッチャにはお決まりのオリーブオイルを染み渡らせて、モッツァレラチーズを並べる。その上にかぼちゃペーストを塗って、くるみ。蜂蜜をかけて出来上がりだ。
まだ温かいサンドをひとくち。もっちりした生地に、柔らかく甘いペーストがよく合う。
うーん。これはお店ではなかなか売られていないサンドだろうな。自分で作らないと有り付けない、そんな組み合わせを生み出せるのもフォカッチャサンドの魅力なんである。