フットボールとグローバル化によるつまらなさ
先日、ブラジル対ウルグアイをたまたま見ていて、ブラジル相手にソリッドな攻撃を挑むウルグアイ側を応援していました。
もちろん、それは知る人ぞ知る知将マルセロ・ビエルサがいるから。度々、日本代表の候補監督にも挙げられる人ですが、まあ来ることはない飛ばし記事ばし記事ばかりでした。
そんなビエルサは、試合後の会見で、あまり試合に喜ぶことなく、現代フットボール界に対しての提言をしました。
ビエルサの発言は、詳しくは記事を参照して頂きたいにですが、要約すれば、この中でビエルサは、フットボールが、元は貧しい大衆のものアイデンティティ、文化であったこと、その魅力が近年ビジネス化によって失われたことを批判しています。
今回は、このフットボール、ビジネス化、グローバル化に詳しく解説と私見を加えさせていただきたいと思います。
例に挙げるのは、プレミアリーグです、近年ビジネス的な投資対象としてかなりあり方が変化したリーグだと思います。
1つ目にオイルマネーによる成功。
これはチェルシー、ついでマンチェスターシティ、ニューカッスルがそに例です、オイルマネーを持つオーナーが、莫大な強化費を提供し、積極的な補強を行なってきました、
なぜそういうことに動いたかといえば、一つに自国のイメージアップとして、国家戦略に組み込まれたからですね。これはスポーツウォッシングの問題として、度々問題化されますが、よく言えば、元々、中東にある偏見を無くそうという戦略であり、その一方で、宗教や人権問題といった目を逸らさせるための戦略でもあるわけです。
2つ目に、アメリカの投資家による投資。
これは、リヴァプール、アーセナル、アブラモビッチ売却後のチェルシーがその例です。元々、欧州に比べれば、アメリカは、フットボール文化自体馴染みが薄く、国内で野球やアメリカンフットボールといった他のスポーツに遅れをとっていた流れがあります。
その流れの中で、彼らは、フットボールだけに注目しているわけではありません、他のスポーツにも投資しているのが特徴的です、リヴァプールのFSGはボストンレッドソックス、チェルシーのトッド・ボーリー率いるゲーゲンハイムは、大谷翔平がいるロサンゼルスドジャースを保有していると言ったら、分かりやすいでしょうか。
近年はあらゆるデータが取られてようになり、スポーツ科学の分野も発達したなか、フットボールの市場を株価などと同じように投資の対象として見ているわけですね。
3つ目にグループ化。
これは、マンチェスターシティのシティグループ化が代表的な例です。あるいは、プレミアリーグの例から外れますが、ブンデスリーガのレッドブルグループが有名です。また、アストンヴィラも同じような流れの中にあり、またグループではないですが、ブライトンやマンチェスターユナイテッドも他のリーグにチームを保有しています。
これは単純に、国境を跨いで徒党を組んで、選手の情報や方法を共有したり、選手を広く囲おうという感じですね。
この3つの動きだけとは言いませんが、こうした流れの中でプレミアリーグは、現在競走力の最も激しいリーグになったといえますが、その一方で、他の問題と同じように、グローバル化による貧富の格差は拡大していっているように思います、その結果として、チーム売却の話が絶えませんし、選手の移籍金は高騰化していっています。
またビエルサが言及しているように、投資対象として、若い選手への投資は増えている傾向にあるように思います。貧しいクラブが、スター選手を産むのでなく、その候補となった時点で投資対象となり、草刈場となっています、チーム愛などでスターが残留を選び、プロビンチャクラブが成長していくということは明らかに減っていってます。
もちろん、日本も傍観者ではなく、横浜F.マリノスはシティフットボールグループの傘下にあり、最近では、大宮アルディージャのレッドブルグループによる買収が噂されています。また、Jリーグのサウジとの提携の話もあります、
豊かになるグローバル化と謳いつつその一方で、世界中の未開拓地がなくなり、閉じた空間としてありつつあるのが、現代のフットボールの正体だと思います。果たして、それは面白さに寄与しているでしょうか?
日本の海外サッカー好きは、当たり前に極東から海外のビッククラブを応援しますが、弱肉強食の世界のなかで、元のフットボールのアイデンティティ、生まれ育った地元のクラブを応援し、文化的に根ざすというあり方は、ビエルサにいうよう失われていっていると言えるでしょう。