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タクシー配車アプリを例にユーザーインタビュースクリプトの具体例解説

ユーザインタビューを効果的に行うためには「観察」「理解」「解決策」の順にスクリプトを構成することが最適です。この方法をnoteで解説したところ、具体的な質問例を求める声がありましたので、今回はその具体的なアプローチを紹介します。例として市場にすでに存在するタクシーの配送アプリを取り上げ、「観察」「理解」「解決策」のステップに従って、どのようにユーザインタビューを進めるかを見ていきます。


インタビュースクリプトの重要性

インタビュースクリプトの重要性とその概要を本題に入る前におさらいしましょう。適切なユーザーのインサイトを捉えるためには、このスクリプトが不可欠であり、ユーザーのリクルーティングと同じくらい重要です。

例を挙げると、20代から60代までの広い年齢層を対象に高級車についてインタビューを行った場合、年収やライフスタイルの違いから一貫したインサイトを得るのは難しいです。

同じように、ユーザー層を統一してリクルーティングしても、インタビューの内容がバラバラだとインサイトの獲得は困難になります。そのためデプスインタビューでは、リクルーティング、インタビュースクリプトの作成、実施、そしてそのサマリー作成に細心の注意を払う必要があります。

観察・理解・解決策とは

インタビュースクリプトを「観察」「理解」「解決策」という順序で構成する理由を改めて確認しましょう。

UXインタビューの目的は仮説を検証することにあります。しかし仮説に固執しすぎると誘導尋問に陥りがちで、ユーザーから仮説に沿った回答を無意識に引き出そうとしてしまう恐れがあります。このような状況を避け、真実のユーザーの声を聞くために「観察」「理解」「解決策」という段階を踏む必要があります。

観察段階では、具体的な商品やサービスの説明をせずに「ユーザーがこのような状況で困るだろう」という仮説に基づいたシチュエーションを提示し、実際に困っているか、その時どう対処しているかをユーザーに語ってもらいます。

理解の段階で、なぜそのような行動をとるのか、なぜそのような状況になるのかを深掘りし行動の背景を理解していきます。

最終的に解決策の段階では「もし我々の商品やサービスがあったらどう感じるか」といった質問を通して、提供するソリューションが実際にユーザーにとって有用かどうかを検証します。

この3段階のアプローチによって仮説による先入観を避け、ユーザーから得られたインサイトを基に、我々のソリューションが実際に価値を提供できるかどうかを明らかにできます。

タクシーの配車アプリを例にした「観察・理解・解決策」

「観察」「理解」「解決策」の各フェーズにおける質問の例を紹介します。ここでは、タクシーの配車アプリのコンセプトテストを前提に説明します。

このテストでは、アプリがユーザーの具体的な課題を解決できるかどうかを確認することを目的としています。インタビューの対象者は、主に買い物時にタクシーを頻繁に使用する高齢のユーザー群です。

テストの重点はもし配車アプリを使用することで、通常のタクシーを捕まえるよりも300円コストが上がる場合でも、その価値を感じて利用を続けたいと思うかどうかにあります。

観察のフェーズ

観察フェーズでは、普段の買い物時にタクシーをどのように利用しているか、その流れをユーザーに聞いていくことが重要です。具体的には、その過程で遭遇する困りごとがあるかどうかを探ります。

例として挙げられるのは、自宅の近くでタクシーがなかなか見つからない状況や、タクシーを待っていても捕まえるのが難しい場合。タクシーが頻繁に通る場所まで歩いて10分ほどかかる状況などがあります。

また、お正月などの繁忙期には特にタクシーが捕まりにくく困るといった声もあるでしょう。これらの日常生活の中の経験を伺い、ユーザーがどのような状況にあるのかを理解することから始めます。

買い物に行くとき、普段どのようにしてタクシーを利用しますか?
(例:事前に予約しますか、または道端でタクシーを拾いますか?)

タクシーを待っている際、どのような困りごとが発生することが多いですか?
(例:タクシーがなかなか来ない、自宅の近くでタクシーを見つけるのが難しいなど)

タクシーを利用する際、特に不便を感じる時期や状況がありますか?
(例:お正月などの繁忙期や悪天候の時など)

理解のフェーズ

理解フェーズでは、ユーザーが直面している状況に対してどのような行動を取っているかを確認します。たとえば、タクシーがなかなか見つからないときの対応を尋ねた際「電話一本で家まで来てくれたらいいのに」といった願望を表明することもあります。

このような願望や不満は重要なインサイトとなり得ます。さらに、サービス利用時の具体的な行動に関する情報も収集することが重要です。

例えば、タクシーを呼び目的地に向かう際にマップアプリを使っているかどうかを質問すると、「マップアプリは便利だよ。タクシーに道を説明するときに使うんだ」といった返答が得られることもあります。

このような回答から、ユーザーが日常的にアプリを使用することに慣れているかどうかが分かります。配車アプリの提供を計画している以上、ユーザーにアプリ使用の習慣がある方が望ましいといえます。

この理解フェーズで、このような周辺的な質問を通じてユーザーの状況を深く探ることが大切です。

タクシーが見つからない時、どのように対応していますか?
具体的な行動や代替手段を教えてください。

タクシーで目的に向かう時、マップアプリを使用することはありますか?

タクシーを呼ぶ際に最も重視するポイントは何ですか?
(例:到着までの時間、料金、車の快適さなど)

解決策のフェーズ

解決策フェーズでは、その段階で検証したい内容に応じて提示するものが変わります。コンセプトの検証であれば、ストーリーボードを示すこともあれば、モックアップや実際のアプリを使って使用感についてのフィードバックを求めることもあります。

今回のケースではコンセプトテストに焦点を当てていますので、アイデアをユーザーに伝え「先ほど話した状況で、アプリを使って自宅前までタクシーを呼べる機能があればどう思いますか?」といった質問をし、これに対するユーザーの反応を観察します。

配車アプリの例で言えば、トラッキング機能を利用して自宅の近くにタクシーがいるかどうかを確認できる点や、自宅前まで来るだけでなく何分で到着するか、またトラッキングを通じてタクシーが自宅の周りで迷っているかどうかが分かる機能についても検証します。

これらの機能が実際に便利だと感じられるか、使ってみたいと思えるかどうかのユーザーの反応を見ます。最終的に、これらのアプリ機能を使うことで通常のタクシー利用よりも300円コストが増えることになるが、それでも利用したいと思うかを確認します。

アプリを使って自宅の前までタクシーを呼べる機能があった場合、それをどのように感じますか?利用を検討しますか?

タクシーの到着時間や現在位置がリアルタイムで分かる機能があれば、タクシー利用の経験はどのように変わると思いますか?

仮にこのアプリを使用することで、通常のタクシー利用に比べて料金が300円高くなる場合でも、その便利さは追加料金を支払う価値があると感じますか?

まとめ

今回の記事では、効果的なユーザインタビューを行うための「観察」「理解」「解決策」という3段階のスクリプト構成法に焦点を当て、具体的な方法としてタクシーの配送アプリを例に挙げて解説しました。このアプローチにより、ユーザーの真のニーズや問題点を発見し、提供するソリューションが実際にユーザーにとって価値があるかどうかを検証することができます。

今回は具体的な質問例をご紹介しましたが、実際にインタビューを行う際は検証したい内容に合わせてカスタマイズしてみてください。

弊社ではUXデザインコンサルのご相談をお請けしております。お気軽にお問い合わせください。

株式会社VERSAROC
代表取締役 江渕大樹
hiroki_ebuchi@versaroc.co.jp

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