アメリカ大統領就任式
アメリカ大統領就任式・前夜(前回の投稿より)
パンデミック犠牲者追悼セレモニーを終えて。
さて、いよいよ政権移譲のとき。
トランプ、ホワイトハウスを離れる
トランプは、世の中はジャングルだという持論を持っていた。「殺るか殺られるか」、2つに1つ。この4年間、殺られる前に嘘で世界を撹乱し、分断を煽った。トランプを見送る離任式に集まった群衆はかつてないほどに少なかったが、2週間前にも聞いた不穏な「USA!USA!USA!」のコールを続けている。自分のリクエスト通りに空砲21発に送られて、トランプはメラニア夫人とともにエアフォースワンで「またどこかで会おう」と強気な言葉を残してフロリダ州の別荘へ去っていった。セレモニーでは終始後継者の名を口にすることはなかった。
入れ替りにバイデン&カマラたちは教会で祈りを捧げるところから歴史的な1日をスタートさせた。歴代大統領の中ではめずらしくカトリックとのこと。
メディアがふりかえるトランプ時代の終わりと新時代への期待
こちらはCNNのキャスターの言葉。
「この2ヶ月、アメリカの民主主義は試練の時でした。アメリカ国内だけではなく、世界中がそれを目撃していました。アメリカの民主主義はここに息を長らえました。」「アメリカの人々にとって2週間前のキャピトル/アメリカ連邦議会議事堂襲撃はトラウマとなりうる出来事でした。それ以上にこの4年間はトラウマでした。」
これをBBCが見事な映像編集でまとめている。
なるほどアメリカがこの4年間に何を見失って、アメリカがアメリカたるべき姿を取り戻すに十二分な演出が大統領就任式典の随所に盛り込まれた。そのうちの1つ、キャピトル襲撃から上院議員を守ったヒーロー、議事堂警察のユージーン・グッドマン巡査がカマラ・ハリスのエスコート役を担った。
色が意味するもの
CNNの中継ではどんな服をきているかについての解説が入った。デザイナーのルーツにも多様性への気遣い。そして女性陣の洋服の色にもこだわりがあった。
ヒラリー・クリントン 紫色
ミシェル・オバマ 赤紫色
カマラ・ハリス 青紫
バイデン政権の民主党カラーは「青」。共和党カラーの「赤」との融和、連帯を表現するために「赤+青=紫」を身にまとった。実はヒラリー・クリントンがトランプとの大統領選において敗北宣言をしたときにも紫色を選んでいた。ビル・クリントンは紫色のネクタイで同席した。その他にも紫色には「忠誠心」という意味があるようだ。いろいろな意味があってあの色が選ばれたと、この記事を読んで知った。
いざ就任式へ
キャピトルの階段を一歩一歩のぼる、バックショット。
階段をのぼりきったところで手をふる光景。
レディー・ガガによる国家斉唱
胸には金色の鳩がオリーブの葉をくわえたブローチを身に着けて「平和」をアピールしたと自身のTwitterで。2週間前ここで悲惨な事件が起きたことを吹き飛ばすほどのパワーをもった歌唱パフォーマンスは映画がミュージカルのワンシーンのようだった。これがアメリカ。
カマラ・ハリス新副大統領宣誓
HISTORY MAKING KAMALA HARRIS 女性、アフリカ系、南アジアにルーツをもつ初めての副大統領。自分には何の関係もないこととわかっていながらも、新しい時代が到来したことに胸が熱くなった。
少し順序が前後するが、就任式後のパレードで姪の手をひいて歩くカマラ。印象的なパールのイヤリングを片方落としてしまう。それをセカンドジェントルマンがサッと気づいて拾って自分のポケットの中にしまい、颯爽とパレードを続ける。このシーンも前夜の手袋の件に続いて自然体で素敵だった。
アマンダ・ゴーマンの詩
この就任式のパフォーマンスで新たなスターも誕生した。ハーバード大学卒の活動家・詩人である彼女は2036年の大統領を目指すという。以下オバマ元大統領のツイートより「歴史にのこる日に、アマンダ・ゴーマンは十二分にふさわしい詩を届けてくれた。彼女のような若い世代が何よりもの証である。私たちが見つけようとする勇気さえあれば光は常にそこにある。私たちが成ろうとなろうと思う勇気さえあれば光は常にそこにある。」
バイデン新大統領宣誓
バイデン家に127年にわたって伝わる聖書に手を置いて宣誓。
怖れではなく希望を。分断ではなく連帯を。私欲を捨てて、国のために尽くす、みんなの為に働く大統領像を語るスピーチにはみんなのお父さんのような寛大な包容力を感じた。BBC(動画、全文)リンク参照。
就任式の感動さめる間もなく、第46代バイデン大統領は仕事にとりかかる。予告通りトランプ時代からの方向転換に舵を切るべく次々と大統領としてサインをしていく。バリ協定復帰、WHO復帰、マスク着用義務付け、メキシコとの壁建設中止、ムスリムの渡航禁止解除などなど17項目。いまそこにある危機は待ってはくれない。トランプの置き土産を風刺してこのバイデン大統領のツイートにイラストが多数寄せられている…その1つをみて思わず笑った。ホワイトハウスの執務室がパーティー散会後の散らかり様。
3代にわたる大統領そろい踏み
現職大統領が就任式を欠席するという異例な事態ではあったが、オバマ、ブッシュ、クリントン、この3人がバイデンを祝福することによって、「アメリカが戻って来た」というような安心感をアメリカ国民に与えたようだ。(CNN)
新バイデン政権体制
バイデン政権は男女比50:50を実現した。まず初日のジェン・サキHW報道官による記者会見も見ていて気持ちの良いものであった。権威的でもなく、高圧的でもない。至って当り前のことが戻ってきた。「真実と透明性を会見ルームに取り戻す。」会見は毎日行うと。ひとしきり記者からの質問に答えたあと「では、また明日」と笑顔で初日の会見を終えた。
ワシントンDCを彩る花火
トム・ハンクスが司会をつとめた祝賀コンサートのフィナーレは盛大な花火だった。パンデミックと暴動の恐怖で沈んでいた人々の心をどれだけ勇気づけたことだろう。こういうことをやってのけるのがアメリカ。多様性を許容する民主主義の国が戻って来た。