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『ザ・空気ver2誰も書いてはならぬ』DVD鑑賞
講演会で松尾貴史さんのお話を拝聴し、琴線に触れるところがあり、すっかりファンになってしまいました。御著書を拝読、ラジオを拝聴...その多岐にわたるご活躍を追いかけるのが大変なことになっております。
もともと観劇が趣味でしたが、この国の行く末が気になりはじめて政治クラスタになりつつあったところ、のめり込みすぎて己の生きる希望を見失いそうになったところへの救世主現れるといった心情でございます。
気になる役者さんに出会うと、過去のご出演作品まで遡って拝見する習性がございまして、この度もInstagramを拝見して早速お取り寄せ致しました。あいにくパンフは完売のようで、私の個人的な感想を勝手に述べさせて頂きます。
【ネタバレ注意】
4+1人のジャーナリストがそれぞれに個性的なアプローチで〈真実〉と対峙するお話。場面は総理官邸記者会見直前の官邸屋上。きっとこんな〈空気〉があるのかもね、とすんなりストーリーの中へ。暗転による間合いが幾度か入るのみで1つのセットを飽きさせないのは、お見事としか申せません。
2018年公演作品ということを鑑みても登場人物が、こちらはあの御方?あちらはあの御方?というように何かモデルとなる実在の人物像が見えて来る感じが絶妙。
安田成美さん演じる〈空気〉を読まないネットメデイア記者という異質な存在が官邸屋上に官邸前デモの映像を撮りたいと乗り込んでくるという設定は、東京新聞 社会部 望月衣塑子 記者 が政治部記者がひしめく官邸記者クラブの中に乗り込んでいく構図をデフォルメしたものかと想像してみたり。
馬渕英里何さん演じる〈総理にやけに近いところにいる大手放送局解説委員〉、松尾貴史さん演じる〈総理と会食することをステイタスとする保守系全国紙論説委員〉の掛け合いは秀逸。
松尾貴史さんがなさるモノマネはあーなってこうなっての流れかと、ようやく先日の講演会とリンクできました。...それにしても、ボチボチとか中途半端とか言う御方に限って、私はその御方がボチボチであったり、中途半端であると感じた試しがございません!それでいて、力むでもなし、飄々とどれも成し遂げていらっしゃるのは、生まれ持った天性のものと、日頃の鍛練があってのことかと。楽しみつつ一生懸命であられるからこそ、観ている者もそれにつられるのでありましょう。
眞島秀和さん演じる〈リベラル系全国紙官邸キャップ〉も...あの御方がこんな苦悩を抱えているかもしれないと、真に迫るところ。
柳下大さん演じる若手〈保守系全国紙総理番〉は、自分が新人だった頃と重ねやすい役どころ。松尾貴史さんとは対照的に、力みのある一生懸命を演じていらっしゃるのが微笑ましい。
〈美しい国〉〈怪文書〉〈奨学金〉〈watchdog〉等、台詞の端々に風刺が効いていて、現実と見紛うほど巧妙な構成だと感服致しました。
夜中に1人で拝見しながら久々に大爆笑してしまったのですが、ふと我にかえり思うことが。果たしてこれほどエッジの効いた風刺が翌年2019年に公演が可能だったろうか?はたまた今年2020年にはどうだろう?この物語のキーとなる〈アレ〉は中々にタブーな代物であるからこそ。
ジワジワと真綿で首を締めるように〈表現の自由〉を自主規制せざるを得ない〈空気〉蔓延る中で、よくぞDVDに残してくださったと感謝申し上げます。