【観劇記録】東京詞華集『万華鏡百景色』

去年観劇して、今もなお繰り返し視聴する作品。
本当に本当に大好きなショーなので記録に残しておく。
身内に公開していたのを推敲したものなので、長い。


簡潔に言うならば、栗田優香先生のショーがブッ刺さった話。

東京詞華集『万華鏡百景色』
まず作品紹介の時点で「これは好きかも……」と思っていたのですが、まあ見事に刺さりました。


物語は、少女が万華鏡を手にしたことで始まる。ちなつさん(鳳月杏さん)が演じるキャラクターは、おそらく万華鏡の付喪神であり、付喪神がストーリーテラーとして時代を紡いでいくショーなのだが、オタクは付喪神が好きなのだ。そして少女と付喪神という関係性は夢が広がる。

江戸時代

物語は、花魁役のうみちゃん(海乃美月さん)が花火師・れいこさん(月城かなとさん)から万華鏡を受け取るところから始まる。
この花火師、顔が良すぎる。暗い髪色が似合いすぎる、ビジュアルの時点で大優勝である。
花魁の海ちゃんは色鮮やかな着物を見に纏い、美しい佇まいで一際目を惹いた。その上で周囲の付喪神たちが対照的な無彩色を纏い、無表情で傘を回している様子が非常に秀逸であった。無機質な演技がモノとしての存在感を際立たせていた。
加えて、「かごめかごめ」の選曲が怪しさを引き立てており、この曲の解釈の難しさがさらに深みを与えていた。
そして万華鏡と花火が重要なキーワードとして与えられるのである。


明治時代

文明開化を歌い上げる点灯夫・おだちん(風間柚乃さん)が非常に可愛い。衣装もよく似合っており、見物人を叩きながら「文明開化の音がする〜」と歌う姿に、明治オタクとして頭を抱えた。一緒に牛鍋を食べよう。
そしてみんな大好き鹿鳴館だ。
れいこさんがフランス将校、海ちゃんが令嬢として登場するのだが、このときの2人は絵画から飛び出してきたような、まさにプリンスとプリンセスである。
さらに、お菊夫人を彷彿とさせる展開が天才的である。
菊の精の衣装は白でありながら、黄色いライトを当てることで菊の花のように見せる演出が粋であった。
調べたところによれば、日本の花火は球形であり、菊型と牡丹型があるそうだ。花火→菊型→お菊夫人という繋がりから着想を得たのだろうか。
花火が散るものである以上、その儚さが物語全体に深みを与えている。


大正時代

銀座のモダンガール(モガ)とモダンボーイ(モボ)の登場で、舞台が一気に華やかに。ぱるみちる&あみりりのペアが非常に可愛いかった。
そして、ピンク髪のマネキン・雅さん(雅耀さん)が麗しすぎて、「こんなにピンク髪が似合う人いる!?」と驚いた。
カフェのシーンで、パンフレットを確認して気付いた。なんと夢千鳥の彦乃がいたのである。スプレンディットに囚われ続けているオタク、感涙。

さて、ちなつさんに芥川を当てたのも、職人技だろう。

「地獄変」を舞台にした物語だが、あえて良秀ではなく芥川をメインに据えた点が素晴らしい。芥川が良秀や物語に引っ張られる構図が、文豪の危うさを際立たせていた。
るねぴ(夢奈瑠音さん)をはじめとする男役たちが業を体現しており、その表現力は見事であった。赤いドレスをまとい炎(業火)をイメージさせる演出や、菊の花と布で炎を表現する細やかさが秀逸である。
また、カフェではペンで描いていたのが、地獄変の場面では筆に変わっているところも良かった。こうした細部に至る演出が、地獄変の本質を際立たせている。

「地獄変」を学校で学んでいてよかったと思った。
好きなゲームである明治東亰恋伽に出てくる話で「思いを込めて書いたものには付喪神が宿る」というものがある。この「業」も芥川が書いたことにより宿った付喪神なのではないだろうか。
最後にちなつさん演じる芥川が首を絞めるシーンがあるのだが、それが芥川自身なのか、それとも良秀なのか。その曖昧さを残した演出が芸術として完成されていた。
こうした退廃的な人間の姿を描くのは、栗田先生の真骨頂である。夢千鳥も同様に好きだったが、この作品でもその技量を存分に発揮していた。
あと、退団者を多く出してくれた点も非常に嬉しかった。


昭和初期

昭和初期のシーンは、関東大震災の後を描いているということを、パンフレットで知って驚いた。地獄変の業火から関東大震災の火事を連想させるように、繋げて描いている。栗田先生は、やはり天才である。
「リンゴの唄」が流れるということは、WWII後の物語だと考えられる。

闇市のドンを演じるれいこさんであるが、どんな役でも似合う。おだちんの警官役も最高であった。
ワルい雰囲気を醸し出しながら、時代の重さをコミカルに昇華させる大砲の歌が印象的である。どうしようもない戦後の時代を明るく生きようとする姿かもしれない。また、ジョッキを豪快に投げるシーンや、賄賂を持ちながら踊るおだちんの姿も非常に良かった。れいこさんとおだちんの悪友感も抜群である。

一方、うみちゃんが演じたのは娼婦の役であった。戦前は闇市のドンと恋人同士だったが、戦後の世界では一生交わることのない運命であるということが巧みに描かれていた。ちなみに、れいこさんの過去のシーンでは星凪くんが登場しており、これはもう安定の配役であった。

昭和後期〜平成初期

昭和後期から平成初期を描いたシーンでは、スチールのピンクの衣装が非常に素敵です。るねぴ、れんこん(蓮つかささん)、英くん(英かおとさん)、りりちゃん(白河りりさん)、羽音ちゃん(羽音みかさん)、羽龍ちゃん(きよら羽龍さん)が披露した「DOWN TOWN」が素晴らしかった。この曲がそもそも好きで、この公演で退団するれんこんに多く歌わせてくれた栗田先生に感謝だった。銀橋に彼が登場した瞬間から涙が止まらなかった。
続くおだちんの「FANTASY」は中原めいこの曲であった。そりゃ好きに決まっている。おだちんの歌唱力も抜群で、安定感が素晴らしかった。
おだちんがもはやプリズムだから。

ちなつさんのピンクの衣装、脚が長すぎる。ちなつさんは自分をどう見せれば一番かっこよく映るかを完全に理解していると思う。
客席降りでは、自分の席には来なかったが、ちょうど後ろにぱるくん(礼華はるさん)が現れた。イケメンがニコニコしているの助かる。


平成から令和へ

平成から令和にかけてのシーンでは、ぱるくん率いる若手が「STAY TUNE」を歌って踊る。そこらの男性アイドルより余裕でかっこいい。
翔琉くん(一輝翔琉さん)のカッコよさはリア恋レベル。たぶん同い年くらいだから。ZBOYSにはぷくぷくちゃん(和真あさ乃さん)もいて、完全にZ世代を集めた構成だった。ずるすぎる。

渋谷のシーンでは、King Gnuの楽曲を使うあたり若い。モノトーンの衣装で満員電車の風景を描くのが現代の東京を象徴している。
おだちんやれいこさんがカラスを演じており、他の人々の衣装も非常に凝っていてオペラグラスが足りなかった。地雷系や、スケボーを持たせた衣装あまりにも宝塚では他では見ない衣装で尚のこと良かった。
うみちゃんがの衣装だけが色がついていて、カラスが4原色を認識できるという特性を活かしてるのかなと思った。
パンフレットによると、カラスが死を誘うという迷信に基づいているらしいけれど、何からインスピレーションを得たのだろうか。


フィナーレ

フィナーレまでしっかり物語の一貫になっていて、非常に完成度が高かった。
まさか目抜き通りを歌うれいこさんとちなつさんを見る日が来るとは思わなかったですよ。うみちゃんのドレスは帯のようなデザインが取り入れられており、テーマにぴったりでした。
デュエットダンスでは花火師と花魁の物語が美しく締めくくられた。花火が散る演出が儚く、れいこさんがうみちゃんに向ける眼差しが優しすぎて涙した。この二人のデュエットダンスをあと何回観られるのだろうかと考えるだけで当時はずっと泣いていました。(実際にこの公演中に退団発表をされました。)


まとめ

大好きなショーで、あの月組のメンバーでやってくれて本当に良かったと思っているし、多分これ以上好きなショーに10年くらいは出会える気がしない。


全然関係ないけど『ゴールデン・リバティ』『PHOENIX RISING(フェニックス・ライジング)』初日舞台映像をみた。
長髪のおだちんとか聞いてないんだけど〜〜〜〜〜!?!?


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