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山梨県 昇仙峡と武田神社
2024年5月、渓谷美日本一の景勝といわれる「昇仙峡」に行ってきた。長い年月をかけて削り取られたような断崖絶壁の岩肌、その岩の間から一面に伸びる木々の新緑、そして谷を流れる豊富な水に大きな滝、これは絶景だ。
約1500年前に開かれた「金桜神社」に水晶の研磨技術が伝授されたのは江戸時代後期。その頃地元の農民「長田円右衛門」が甲府に続く新たな道を開拓したことで御嶽昇仙峡の渓谷美が広く知られることになり、観光名所となったらしい。遊歩道を歩いてみると、驚くような大きい岩石がゴロゴロしており、自然が作った景勝に感動するとともに、この道を切り開くには相当な苦労があったと思わざるを得ない。
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県営駐車場に車を停め、久々の親子4人水入らずで片道約2.6㎞のウォーキングコースを歩くことにした。荒川の流れを左下に見ながら遊歩道を上りクリスタルファウンテンを目指すコースだ。天空の杜付近で大規模ながけ崩れがあったらしく、通れない箇所を迂回して臨時の階段が数か所にわたり設置されている。そこから遊歩道に入るとまるで岩石を積み上げたような覚円峰を眺めることができる。「うむ、この景色こそ、ザ昇仙峡だな!」
更に進むと斜面からせり出した岩石が河口側の岩石にもたれて門のような空間が作られている。石門だ。その下をくぐるのだが、よく見ると石と石は接触しておらず、その発見に思わず「おー!」と声が出る。石門を過ぎ昇仙橋を渡る頃、上から青いキャップにジャージ姿の高校生が次から次へと足早に降りてきた。皆すれ違いざま「こんにちは、こんにちは」と挨拶してくれる。こちらもそれに都度応じていたが、さすがに100名を超えると声が枯れはじめ?景色を楽しむ余裕がなくなる。橋の手前のスペースに暫く退避して川の流れを鑑賞し、高校生たちをやり過ごしてから橋を渡った。山道ではすれ違う時に挨拶するのがマナーだけど、、
昇仙橋を渡ると今度は右手斜面に、豪快に大量の水が落ちる仙娥滝が見える。この滝は地殻変動による断層でできたらしく、花崗岩の岩肌を削りながら落下する高さは30mになる。静寂に広がる滝の音と霧降のような空気に含まれるマイナスイオンを体中に感じながら遊歩道を上がる。
階段の向こうに鳥居と売店が見えて来た。鳥居をよく見ると「金桜神社」とあるので、ここから神社の神域となるようだ。帽子を取って一礼しエリアに入ると、水晶の販売店が並んでいる。妻はここで金運を上げる石を狙っているので時間がかかりそうだ。ということで娘と妻をそこに残し、息子と二人で遊歩道を引き返し車をクリスタルファウンテン周辺の駐車場に移した。
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再び水晶街道で合流すると、妻の手には大きめの紙袋。どうやら「アメジストを家の玄関に置いておくと幸運を呼ぶ」という販売員の常套句を信じたようだ。「お父さんも何か買う?」と言われ、車を停めた店を覗いてみることにした。そこで見せられた手品「このテラヘルツ鉱石は水晶を加工して作った人工鉱石です。1秒間に1兆回も振動する電磁波を出しているので氷を溶かします」と、大きな鉱石の上に氷を乗せると目に見えて溶け出した。「凄い!」と妻の感激の声、と同時に「よかったらこのブレスレッド、特別に安くしますよ」とおばちゃん、「二つ買うから半額にしてよ」と私、「半額に近いこの値段にしますよ」「よし買った」と瞬く間に商談成立。妻と私の腕には血流を良くするだろう昇仙峡水晶のテラヘルツブレスレット、夫婦揃って健康寿命が延びるに違いない。
昇仙峡のクリスタルファウンテンは600kgの天然水晶を上に乗せシンボルにした大きな噴水だ。濡れそうだがせっかくなので桟橋を渡り中を1周してみる。
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約2000年前、各地に疫病が蔓延した折、当時の第十代天皇は甲斐の国の標高2,599m金峰山山頂近くの五丈岩に少彦名命(すくなひこのみこと)をまつり、これが金桜神社の本宮となった。そして約1,500年前第二十一代天皇が昇仙峡のこの地に里宮を開き、その後大和の国の金峰山から仏の蔵王権現が祀られ、神仏あわせもつ日本三御嶽・三大霊場として広く知られて全国から崇拝者を集め隆盛を極めた。そして明治には神仏分離により神社として独立し現在に至っている。(パンフレット要約)
参拝する人々にとっては、その信仰の道が昇仙峡となるのだ。確かにこの想像を絶する渓谷の美しさに触れながら険しい道を行き、神社にたどりついた時には、本当に神々しい輝きを感じありがたい気持ちになったことだろう。
金桜神社は武田家代々の祈願所であり、徳川家康も参詣されたとされる。
階段下の鳥居付近にある駐車場は台数が限られて停められなかったので、上の本殿が見える駐車場に停める。下から階段を上がると200段を超えるので、妻は「よかったわ!」 本殿左手には左甚五郎の昇龍そして右手に降龍、境内には金のなる木の金桜、家康が腰かけた石、龍神の井戸、さざれ石など見所満載。せっかくなので息子と二人で下の参道から階段を上がった。樹齢一千年と言われる七本杉は見事だ。パワーを感じながら全て触れてみる。因みに御朱印は噂通り水晶だった。
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荒川ダムには驚いた。なんとコンクリートでなく「石」でつくられているのだ。専門的には「ロックフィルダム」というらしいが、下から見上げると城の石垣のように整然と積まれていて壮観だ。
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甲府市内に降りて武田信玄をまつる武田神社を目指す。ここのところ競馬において愛馬が「勝ち」から遠ざかっているし自分の馬券もパッとしないので、「勝運」をつけるべく参拝した。(家族には言っていないが)
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宝物殿に入る。信玄公直筆の詩が書かれた軍扇、北斗七星が描かれた軍扇、武田二十四将図には山本勘助、そして軍旗「孫氏の旗」(其のはやきこと風の如く、其のしずかなること林の如く、しんりゃくすること火の如く、動かざること山の如し」今は亡き私の人生の師匠がよく唄った「武田節」が聞こえてくるようだ。
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御朱印と勝守をゲットし参拝を終えた後、信玄ミュージアム(武田氏館跡歴史館)で武田氏三代に亘る歴史に触れた。ミュージアムの出口では堀田古城園の邸宅と庭を鑑賞できる。そして由布姫では蕎麦やうどんが食べられる。自販機で食券を買い「信玄肉付けそば」を注文した。これは夏季限定とあったが、つけ汁が温かく出汁が効いていて絶品、価格も770円とお手頃でお勧めである。