英・LCC社とのパートナーシップ&三菱ガス化学との共同事業で加速する、ハイブリッド型ビジネスへの成長戦略
今回は、さる10月9日にお知らせした「英国Liverpool ChiroChem社(以下“LCC”と表記します)とのmRNAを標的とした低分子医薬品の共同創薬事業に関するパートナーシップ合意」、「三菱ガス化学(以下“MGC”と表記します)とのRNAを標的とした医薬品(核酸医薬)開発の共同事業に関するMOU締結」の2件の発表について、それらの意義等をご説明したいと思います。
スペシャリティファーマを目指す成長ロードマップ
本題に入る前にまずは、当社の成長戦略について押さえておきたいと思います。
当社は創業当初より、「mRNA低分子医薬品、核酸医薬をはじめとしたmRNAに関連する創薬を主軸とした製薬会社、すなわちスペシャリティファーマとなり、社会に責任をもって医薬品を提供する」ことを目標に掲げ、その実現のための企業運営を進めてきました。
また、当社が健全かつ効率的に経営を進めてゆくため、また社会から信頼される会社となるために、経営組織を整えて株式上場を目指そう、という目標も掲げておりました。
そこで、当社ではこれら2つの目標を各々達成するため、会社の成長ステージに応じて以下の企業形態をとる成長戦略を掲げています。
1) 当社創立から上場まで:プラットフォーム型バイオテク企業
2) 上場後の急成長:ハイブリッド型バイオテク企業
3) 急成長後の持続的な成長:製薬会社(スペシャリティファーマ)
ハイブリッド型バイオテク企業の実現に向けた本格的な舵切り
当社は、これまでにプラットフォーム型バイオテク企業としての経営基盤を確立したうえで2024年2月に東証上場を達成しました。しかし、現状に安住することなく、さらにここから果敢にハイブリッド型バイオテク企業に変革し、成長していこうと考えています。
※ここで言う“ハイブリッド型ビジネス”とは、これまでに当社が行ってきた製薬会社と共同創薬研究を行うプラットフォーム事業とあわせて、自社でパイプライン(医薬品候補)を創っていく事業を開始し、2つの事業を合わせて(ハイブリッドで)成長してゆくビジネスモデルのことです。
実は、プラットフォーム事業に注力して、パイプライン事業を先送りすることも企業運営方針として考えられなくはありませんでした。その方が少ないリソースでも運営可能で、むしろ楽に経営できるとも考えられます。
しかしそれでは、パイプライン事業による高成長が望めず、創業当初に目標に掲げたスペシャリティファーマへのゴールが遠のいてしまいます。また、楽に経営できると申し上げたプラットフォーム事業においても、顧客を安定的に獲得できるのかという不確実性のリスクがあります。
これらのことから、当社経営陣は創業当初の計画に沿って、ハイブリッド型ビジネスの実現に向けて本格的に舵を切ることを決断しました。
英・LCC社とのパートナーシップは低分子医薬品の自社パイプライン創出の鍵
上場後の新経営体制のもと、ハイブリッド型ビジネスの実現に向けて本格的に舵を切ること、その足掛かりとなるものが10月9日にお知らせした2件のリリースです。
まず一件目、「LCCとのmRNAを標的とした低分子医薬品の共同創薬事業に関するパートナーシップ合意」についてです。
mRNA標的低分子医薬品の創出は、当社が現在手掛けているプラットフォーム事業の根幹に当たりますが、これまでは製薬会社とのパートナーシップのなかで行うことを前提に考えておりました。
その理由の一つは、重厚な化学実験施設や化学者が必要であること、そしてもう一つは、研究開発の期間と費用が掛かることです。そのため当社はこれまで、低分子医薬品を自社パイプラインの候補とすることは、現在の企業規模から難しいものと考えておりました。
そんなところへ、当社とちょうど相補的な化学のリソースを持つLCCとめぐり合うことができ、同社と提携して研究開発費用を折半できるのであれば、当社が低分子医薬品の自社パイプライン創出を手掛けることも可能になってくるとの判断に至りました。
低分子医薬品が対象とする疾患領域は一般的に市場規模が大きいので、低分子医薬品のパイプラインを創出できれば、当社の今後の成長に大きく寄与することが期待できます。
三菱ガス化学との共同事業は核酸医薬の品質向上や製造過程管理に貢献
続いて二件目、「MGCとのRNAを標的とした医薬品(核酸医薬)開発の共同事業に関するMOU締結」についてです。
核酸医薬は、当社のような比較的小規模な会社でも研究開発が可能な医薬品であり、当社が最初のパイプライン候補として手掛けるには最適と考えられます。一方で、ヒトに投与する医薬品としての品質規格への適合や製造過程の適切な管理という観点での製造法については、まだまだ改善できる余地があるものと考えられます。
したがってMGCとの共同事業を進めてゆくなかで、医薬品の研究段階から品質を担保するための製造方法等についての検討も進めることにより、開発以降のプロセスがスムーズに進められ、将来の成功確率も高まることが期待できます。
3つの意義とハイブリッド型ビジネスへの期待
以上をまとめますと、今回のリリース2件は、当社にとって以下の3つの意義があります。
1) 従来のプラットフォーム事業に加えて、新たにパイプライン事業にも本格的に取り組むこと
2) 核酸医薬という比較的小規模な会社でも研究開発が可能な医薬品の自社創薬に取り組むこと
3) 低分子医薬品という当社単独での開発は難しいと考えていた医薬品の自社創薬にも取り組むこと
また当社のみならず、LCCの「低分子医薬品のパイプライン創出」に対する、そして MGCの「核酸医薬の製造」に対する強い意気込みとその意思表示でもあります。
これからは、ハイブリッド型ビジネスに舵を切った当社のパイプライン事業にも、ぜひともご注目いただきたいと思います。今後とも、皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。