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第5波で重症化率・致死率ともに低下 大阪府のデータを分析
新型コロナウイルス感染症の主流がデルタ株に置き換わりながら拡大した第5波(2021年夏)で、陽性者の重症化率が第4波までと比べて3分の1を下回り、1%程度になっていたことが、大阪府が集計したデータからわかった。
致死率も、第5波前後で2.64%から0.36%に大きく低下していた。
大阪府の公開資料と感染症対策企画課への取材で集計データを入手し、詳しく分析した。
(冒頭グラフの元データは末尾に掲載してあります)
60代以上で重症化率・致死率が大きく低下
「重症」についての定義は厚労省や一部自治体で異なるが、大阪府が集計しているデータは、国基準の定義と同じく「ICU入室」「人工呼吸器装着」「ECMO装着」にいずれかに該当する患者を指し、東京都基準の重症者定義より広い。
年齢層別に第5波前後で比較してみると、高齢陽性者の傾向に顕著な変化がみられた。60代以上の重症化率は9.34%から4.72%に、致死率は9.92%から3.71%に低下していた。
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若年陽性者が増加したが高齢陽性者は大幅減
また、年齢層別陽性者の割合も第5波前後で大きく変動がみられた。
第4波までは60代以上の陽性者が全体の約25%を占めていたが、第5波では約8%に低下していた。
逆に、30代以下の割合は約47%から約66%に増加していた。
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全年齢の重症化・致死率が第5波で大きく低下したのは、もともとリスクの低い若年陽性者の占める割合が増えたのに加え、リスクの高い高齢陽性者の重症化・致死率が低下したことによるものだ。
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20代以下の重症・死亡例は極めて稀
一方、40〜50代は陽性者数全体に占める割合にほとんど変化はなく(約28%→約26%)、重症化・致死率は、高齢者層ほど劇的な変化ではないものの、やや低下していた。
30代以下の若年陽性者は、前述したように、第5波で大きく増加した(第4波までの約1年半より、第5波の半年間の方が多かった)。だが、重症例は102人、死亡例は5人にとどまった。
20代以下に限ると、第5波での致死率は0.002%(5万人に1人程度)、重症化とあわせても0.06%(1万人に6人程度)と極めて稀だった(29人[うち死亡1人]/49,416人)。
30代も、第5波での重症化・致死率は0.46%(1千人に5人程度)で、第4波とほとんど変わらなかった。
コロナ禍が始まって以来の約2年間で、大阪府の30代以下の陽性者数は累計11万人を超えたが、重症者は201人、死者は13人となっている。
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第5波の陽性者の大半はワクチン接種未完了者
第5波では、ワクチンの接種が各年代で加速した。
第5波での陽性者は、ワクチン2回接種後のいわゆる「ブレークスルー感染者」も含まれるが、大半がワクチン2回接種者以外だった。
大阪府によると、6月1日から12月12日判明分までの陽性者のうち2回接種後のブレークスルー陽性者は2980人だった(12月22日発表資料)。
期間は少しずれるが、第5波(6月21日〜12月12日判明分)の陽性者数は100,844人であるため、この間のブレークスルー陽性者の割合は3%以下だった。
比較的ブレークスルー感染者が多い60代以上でみても、7〜9月の陽性者全体に占める割合は25%以下だった。
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ブレークスルー陽性者の重症化・致死率は、60代以上でそれぞれ1.9%にとどまり(12月22日発表資料)、第5波の60代全体(重症化率4.7%、致死率3.7%)より明らかに低かった。ワクチンの重症化予防効果は一定程度あったといえる。
ただ、第5波前後の重症化・致死率の(特に高齢者における)劇的な低下は、少数のブレークスルー陽性者の「ワクチン重症化予防効果」だけでは説明できず、主な要因は他にあったとみられる。
東京都では50代以下の重症化・致死率が上昇
季節性要因(夏場)、病原性の変化(いわゆる弱毒化)なども考えられるが、一つ注目すべきデータがある。
季節性・病原性でほとんど変わらないはずの東京都で、大阪府とは逆に、第5波における重症化率・致死率が一部の年齢層で上昇していたのだ。
東京都モニタリング会議の資料(2021年9月30日)によると、第5波で60代以上の重症化率・致死率は下がっていたものの、40〜50代では重症化率(陽性者数に対する重症者数の比率)が0.83%(第4波)から1.38%に、致死率も0.17%(同)から0.25%に上がっていた。
30代以下でも、重症化率・致死率ともにやや上がっていた。
東京都の重症化率の推移(都基準集計)
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東京都の致死率の推移
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病床が逼迫すれば重症化率も上昇か
大阪府と同様、第5波では陽性者の大半が低リスクの若年層だったため、全体の重症化率・死亡率ともに第4波より低下しているが、50代以下で悪化したのはなぜか。
考えられる有力な要因が、第5波では大阪府では病床がさほど逼迫しなかったが東京都では病床が極めて逼迫したという「医療提供体制」の問題だ。
東京都と大阪府の病床利用率は、第4波(4月〜)と第5波(7月〜)で次のように推移した(グラフは厚生労働省特設サイトより)。
東京都の病床使用率(2021年4〜9月)
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大阪府の病床使用率(2021年4〜9月)
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特に、国基準の重症者病床使用率(青線)に注目すると、東京都は第4波でピークは5割を超えていなかったが、第5波では8割を超え100%に迫る状況が起きていた。一方、大阪府は第4波でピークは100%に迫る時期があったが、第5波では5割を大きく超えることがなかった。
このように、第4波と第5波で重症者病床の逼迫度は、東京都と大阪府でコインの裏返しのように対照的だったのである。
この事実を踏まえて、第4波と第5波の重症化率・致死率と重症者病床の逼迫度、ワクチン接種率を比較したのが次の表だ。
東京都の60代以上を除き、各年齢層で「病床の逼迫度が高まると重症化・致死率が高まり、逼迫度が低いと重症化・致死率が低くなる」という相関関係が見出すことができる。
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病床が極度に逼迫すれば、重症化リスクがあっても入院できない人が増え、早期治療が遅れ、重症患者の救命率も低下するであろうことは容易に推測できる。
東京都の60代以上の重症化・致死率が、病床が逼迫した第5波の中でも低下したのは、季節性・病原性・治療法の進展・ワクチン重症化予防効果といった複数の要因があわさって、病床逼迫要因を上回る影響を与えたのではないかと考えられる。
実際に「重症化・致死率」を左右するのは複数の要因があり、各要因の寄与度を厳密に測ることは困難だが、今回の分析から、とりわけ50代以下の重症化・致死率に関しては、病院逼迫度の比重(寄与度)が非常に大きいことがうかがえる。
大阪府は第4波で直面した著しい病床逼迫(特に重症者病床の不足)の教訓を踏まえて病床拡充を進め、第5波の拡大にも耐えることができた。
一方、東京都では第4波で危機的状況にならなかったこともあり、デルタ株に備えた病床の拡大が十分に行われていなかったきらいがあった。
第5波における東京都と大阪府の重症化・致死率の違いは、医療提供体制の充実にどれだけ努めたかという政策的、人為的な要因が招いた可能性が高いのである。
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大阪府の年代別重症化率・致死率グラフ集
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大阪府の年代別重症化率・致死率データ集
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