時代考証・・・がんばろっ…という話
最近のなろう小説では、中世ヨーロッパ風の舞台設定が多く見受けられます。物語としてはとても面白く、楽しく読ませてもらっているのですが、時代設定が甘い部分があると、どうしても気になってしまうことがあります。
特に映像化された際には、その設定の甘さが目立ってしまうことがよくあります。個人的には文章で楽しむのが好きなので、映像化された作品を見たときに「あれ?」と驚くことも少なくありません。
おそらく制作に関わっている方々も、「たぶんこんな感じ」や「○○はこの時代にあったらしい」といったリサーチはされているのだと思います。なので、全く時代考証がされていないわけではないでしょう。
ただ、どうしても甘い部分が目立ってしまうのです。特に気になるのが「価格設定」や「物の丈夫さ」に関する部分です。
気になった点
1. 窓ガラスが付いた馬車
例えば、15世紀後半の設定であれば、窓ガラスやタイヤ、サスペンションの改良が進んでいるため、窓ガラスが付いた馬車も可能でしょう。しかし、それ以前の時代に窓ガラスをはめ込んだ馬車が登場すると、少し動いただけで窓ガラスが割れてしまうはずです。
御貴族様といえど、窓ガラス付の馬車が走れるのは、道路整備、ゴム付のタイヤ、サスペンションなどの改良があってこその技術なのです。
2. 昭和初期にお金持ち以外が眼鏡をかけている
明治から昭和初期(昭和一桁代)以前の表現で、庶民が眼鏡をかけている描写を見かけますが、当時はレンズが輸入品、フレームも高級品だったため、庶民が気軽に手に入れることは難しかったはずです。戦後になってようやく国産レンズが一般社会へ普及し始めたのです。
3. 半紙を落書きや嫌がらせに使用している
半紙1枚の価格は、現代では10円未満ですが、江戸末期だと今の貨幣価値で約300円、大正時代だと約200円(大卒初任給を基に換算)ほどになります。贅沢品とは言わないまでも、無闇に使えるものではなく、いたずらや嫌がらせに使用するのは現実的ではありません。
一般的には、一度使用した紙を漉き直して再利用するもので、現代のような真っ白な漂白紙はこの時代には存在していませんでした。
このように、物語に没入するためには、時代背景の正確な設定が大切だと感じます。もちろんフィクションである以上、多少の自由は許されますが、もう少し時代考証をしっかりしていただけると、より説得力のある作品になるのではないでしょうか。