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嗚咽に耐えるウォータープルーフ

(今日はめっちゃ長く、そして暑苦しいです。)


東京オリンピックの影響で、2020年のFUJIROCKがいつもより1ヶ月も後ろにズレ込むことが発表された時、
私は土砂降りで煙る苗場の空の下にいて、
自分にとって永遠のディーバであるSIAの歌声に咽び泣いていたのを覚えています。

本気で泣く時って誰でも顔がクシャッとなってしまうと思うんです。
多分。
私は漏れなくザブングル加藤さんのネタのような表情で、顔が力んでしまいます。

しかもその当時は、目を閉じたらSIAが幻として消えてしまうんじゃないかと、
目の前の光景が実は夢に見過ぎて自分で作り出した夢だったのでは、と怖くなってしまって、
顔をクシャりつつ絶対目を閉じまいと必死にこじ開けていた私は、
鬼の形相になっていたことは想像に難くありません。


そんな閉じそうだったり開きそうだったり、
雨に打たれたり滝のような涙を流したり、
私のアイメイクは非常に困難な状況下に置かれていたはずなのですが、
ドロドロなまま部屋に戻って鏡を見ると、

い、生きてるーーーっ!!

10年近く、毎年のように友人とFUJIROCKに来ていた私が、
体力の衰えには勝てずに「FUJIROCK卒業」を決めたのが3年前のこと。

それでもFUJIROCKへの未練は捨てきれずに毎年アーティストの発表を横目で見ていた最中、
SIAが初来日でFUJIROCKに来ることが発表され、
気づいた時には手元のスマホに「チケット申し込み完了」画面が表示されていました。


SIAさえ見られれば他を全て捨てても良い。


それと同時に、もし彼女の代表曲の一つであり私の人生のテーマソングとしている「Titanium」を聞けたのなら、一生FUJIROCKに参加できなくていい、とすら思っていました。


まぁ、そんなことはBjorkの時も、Atoms For Peaceの時も、むしろ毎年のように思っているので信用度のかけらもない決意ではあるのですが、
今年こそ解決したい問題がここで浮上します。


「何だかんだ工夫してもただ過ごしているだけで夜にはメイクが全落ちしている」問題。


落ちると事前に分かっているものを落ちるままにしてはいけない、
しかも部屋のスペースや時間、お直しできる状況下ではないことを考えると最小限の装備で挑まなければいけない、
「FUJIROCK用コスメ」1軍装備を見直す決意をしました。


ネットで情報を漁り、気になる「落ちない」アイテムを見つけては試す日々。


睫毛はフィルムタイプだから変な落ち方はしないし最悪ひじきなんてどっかに行っても良い、
肌はどうせ何度も日焼け止めを塗り直す上に夜には見えないから無視して良い、
リップもギリギリ落ちても勘で大体塗り直せる。

問題はアイシャドウと眉毛。
時間と共に芳しくなっていく簡易トイレの、銀色のシールでしかない曇った小さな鏡で直せる代物じゃない。
そのくせ、存在感だけはピカイチで、これがあるとなしでは大きく違ってしまう。

そんな時に教えてもらったのがNARSの「スマッジプルーフアイシャドウベース」、
そしてドラッグストアに売っている「眉毛コート」でした。

今まで全然「アイシャドウベース」というモノの重要性を認識していなかったことが信じられないほど、
発色も持ちも大きく変えた、こちらのアイテム。
二重の溝に粉が溜まってアイシャドウも剥がれてしまうアイラインも、もう避けられないモノだと思っていたのが嘘のようで。

とりあえずなんでも良いからと気軽に買ったその辺の「眉毛コート」も、
知らない内に消え去る眉尻がメイクを落とす前まで生き残り、下手したら弱い洗浄力のクレンジングじゃ落ちきらないんじゃないか位の威力でした。

もう、これしかないと。これがベストだ、と。

トムフォードのエモーションプルーフシリーズとかも買ってみたけれど、
NARSには到底敵わない。
私はもうこの瞬間からNARSの犬になることを決めたのです。
(実際、求められてもいないのに長時間コスプレ撮影する予定の友達にゴリ推ししたりしてました)


日中は屋外で過ごし、夜は豪雨の中佇んだり号泣する予定のある人は是非使ってみて欲しい。
あの水没に等しい状況に耐えられるなら、汗も余裕っしょ、と思うのです。


ちなみに、私は「Titanium」で泣く予定が、1曲目の「Alive」のイントロを聞いた瞬間、既に号泣していたことをここに記しておきます。
(豪雨の中、一番最初の歌の歌い出しが「I was born in a thunderstorm」だなんて、状況とリンクしすぎて泣かないはずがありませんでした。)

ところで、フェスにとって雨や雷というものは時として最高の演出となり、「伝説のステージ」と評されるものも多くあります。

2009年のOasis然り、2013年のNIN然り。
NINのトレントなんて来日するたびに雨が降り、
ライブ中も最高なタイミングで雷鳴が轟くことから「嵐を呼ぶ男」なんて二つ名までいただいちゃって。
本人がその厨二的なネーミングを良しとしているかどうかは知りませんが。

私にも今回のSIAと同じくらい「伝説のステージ」として、恐らくずっと忘れないであろうライブがあります。


2015年のサマーソニックヘッドライナーで来日したファレル・ウィリアムス。


大ヒットナンバーである「Get Lucky」や「Happy」が披露され、会場が幸福感に満ちた中で迎えたラストナンバー。
このまま文字通り「Happy」なままで終わるのかな、と少し勝手にもがっかりし油断していた時に「Freedom」が流れ始めました。

「Freedom」のイントロが流れ出してから急に風が吹き始め、空が唸り、とうとう大粒の雨まで落ちてくる有様。
雨具の準備や「濡れても良い覚悟」ではない観客が続々と帰る中、雷雨の中で残った観客と一緒に「Freedom!!」と叫び続けるファレル・ウィリアムスの危機迫ったような空気に圧され、会場内は異様な興奮で包まれていたことを今でも思い出す度に、鳥肌が立ち泣きそうになります。

あの時だけは、「今アメリカで何が起こっているのか」という問題を私たちもリアルタイムで共有することを許されたような気がしました。


2014年に、ソロになってから初、アーティストとしてはかなり久しぶりにリリースしたアルバムでグラミー賞を獲ってからの来日ということで、各方面からものすごく期待値の高かったライブだったと記憶しています。


覚えている方も多いであろう、ファーガソンで起きた無抵抗の黒人青年を警察官が打ち殺し不起訴となった事件がきっかけで生まれた「Freedom」。
(私は音楽に対しては無知なので友人に教えてもらったことなのですが、グラミーを受賞したアルバム「GIRL」のリードシングルである「Happy」をマイナー調にアレンジした曲調で、「Happy」と裏表でセットとなっているそうです。)


2015年頭のグラミーの「Happy」のパフォーマンスでは、無抵抗を表す両手を掲げるポーズでファーガソンの事件に対し意思を示したことから、きっと今回のライブにも彼なりのメッセージがあるのではないかと勝手に期待していました。
だからこそ、エンターテイメントとしてのライブで終始「楽しい」だけで終わることに、オーディエンス側がメッセージを受け取る土壌がないと判断されたんじゃないかと、悔しい気持ちになりかけていたところでした。

もちろん、セット皆無で女性ダンサーとファレルのみという、
「GIRL」アルバムに込められた想いを表すかのような構成ではありましたが。

その少ないライブの要素である女性ダンサーすらはけた、何もない舞台の上で一人叫び続ける姿は、大々的に表現しないまでもファレルの強い思いが込められているような気がして、一人勝手に胸に刻みつけたのです。

そしてここから2016年、ビヨンセのスーパーボウルでの「Formation」強行突破に続くとなると、興奮せずにいられないのです。

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