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”あの人”の優しい胸に、もう一度包まれたい……

僕の名前はアシンヌ。

小さな村に住む、まだ12歳の子供だ。

もちろん女性と愛し合ったことなど、一度もない。

なのに、数日前、突如として一人の女性のことを思い出した。

唯一の、女の人。

すごく昔の記憶。

その人のことを思うと胸の奥がキューッと絞られたようになって苦しいような気持ちいいような、よく分からない気持ちになった。

それ以来、家にいるときも、畑で仕事しているときも、ずっとその人のことを考えるようになった。

すごく昔の記憶のはずなのに、最近な感じがする。

20年? 30年? いやもっと前かもしれない。

それでいて、今の僕くらいの年齢の時の、記憶。

ありえない。

そんなことはありえないことは分かっているのだが、どうしても”そんな感じ”がする。


僕を、その女の人は抱き締めてくれた。

何でなのかは分からない。その後のことも覚えてない。

ただ、その時の感触と気持ちだけを、思い出した。


優しかった。

すごく優しかった。

深いところから解きほぐされて、とろけていくような、すごくいい気持ちだった。

きっと、この嬉しい感じ、気持ちのいい感じは完全には言葉にできない。

だけど、確かなことは一つある。


どうにかして、「あの人」にもう一度会いたい。




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アシンヌ
僕はまだ子供で、広い大人の世界を知らない未熟者ですが、こんな僕でも支えてくださるという方がいらっしゃったら、きっとこれ以上の喜びは他には見つからないでしょう。