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ここ以外の世界?
僕が「あの人」のことを考えるようになったのは、
山奥の本の蔵で一冊の本と出会った時からだ。
そこで、とてもびっくりするようなことを知った。
「この世界以外にも別の世界がある」
ということ。
僕が毎日生活しているこの村以外に人が住んでいるだなんて、想像もしたことがなかった。
その本によると、世界は大きく分けて「上の世界」と「下の世界」の二つに分かれていて、ここは「上の世界」に含まれているらしい。
「下の世界」は、ここよりずっと下に下って行ったところにある、と書いてあった。
地面を掘っていくとまたもう一つの世界が現れるなんて、信じられない。
さらに驚いたのは、その世界の人々は「物理法則」と呼ばれる決まりに縛られているということ。
「霊」に満たされたこの世界よりもずっと固くて、重くて、のろい「物質」というものに支配された世界らしい。
僕は、その「下の世界」の広さに、心底魅力を感じた。興奮した。
いま僕が住んでいるこの緑に囲まれた小さな村よりもずっとずっと広い世界みたいだ。
僕は、本の蔵にある本を片っ端から読み漁りはじめた。
ところどころ触っただけで崩れてしまいそうなくらい古い本や、まだ僕には難しくていまいち何を書いているか分からない本もあったけど、家にいる時と仕事している時以外は、ずっとその蔵に籠っていた。
ここ最近は毎日のように、寝る前に、差し込んでくる月の明かりにたよりにしながら本を読んだ。
その中で深く確かなことを感じた。
「僕が『あの人』を強く求める気持ちは、『下の世界』から来ているのだ」と。
僕はこの体で生を受ける前、「下の世界」の人として生きていたんじゃないかっていう気持ちが、新しいことを知っていくうちにどんどん強まっていった。
どうやら、「下の世界」というのは「上の世界」の一部の人たちが一時的に旅立つ場所で、ある一定の期間、そこで色々なことを体験したり勉強したりするらしい。
そしてある期間を過ぎると、固くて重い「物質」の体を服のように脱ぎ捨てた後、再びここの「上の世界」に戻ってくるものらしい。
僕は「下の世界」に生れ落ちた自分を想像してみた。
きっと、そこで「あの人」と出会っている。
その思いがさらに僕の探求心の火を掻き立てた。
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