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語学留学 (アメリカ)その5  寮Eigenmannの住み心地

語学留学する時に大学付属の語学学校をおすすめする理由の一つに、その大学の寮に住めるという点も挙げられます。寮には一般の大学生も住んでいますから、友達になれないまでも自然な形での交流はありますよね。エレベーターに乗るとき「お先にどうそ」なんて言ってみたり、寮の食堂でのおしゃべりを耳にしたり。中には大学生と本当に友達付き合いをしている人もいました。

私はインディアナ大学付属語学学校で英語を勉強した時、Eigenmannという名前の寮に入りました。大きい大学ですからキャンパスの中に寮がいくつもあって(たぶん10棟以上)、Eigenmannはその中の一つです。たしか14階建てぐらいの大きい建物で、その大半は個室だったと思います。私は別の語学学校で二人部屋の寮に入り、ルームメートの寝返りで起こる二段ベッドのきしみ音で眠れなかった経験があるので、お金が多少割高でも「個室(一人部屋)」を申し込みました。Eigenmannの男女のフロアーは完全に分かれていて、私の部屋があった6階は女性用で、語学留学などのインターナショナル・スチューデントが多く入っていました。建物全体の共通の部分、例えばキッチン付きの「社交ルーム(リビングルーム)」やコンピュータールーム、地下のダイニングホールなどは男女入り混じっての利用でした。学生寮は男女のすみ分けが一般に厳しいと思いますが、フロア毎に分けていたのは、シャワールームがフロア単位で共用だったからだと思います。寝室そのものは個室でしたが、部屋にはシャワーも洗面台もなく、かわりに各フロアに6つぐらいのシャワーブースと数個の洗面台のついたスペースが設けられていました。そこに自分の部屋からバスローブ姿やかなりの軽装で廊下を歩いて行くわけなので、男性が混じると困ることになりますよね。

「バスローブ姿」と書きましたが、アジア人はたいてい普段着(部屋着)姿でシャワー後の着替えを持ってシャワー室に向かいます。でもヨーロッパ系の人の中にはバスローブ姿で現れる人たちもいて、その姿を見る度に「かっこいい」と思っていました。文化や体格の違いでしょうか、サマになるんですよね、欧米人のバスローブ姿は。

部屋は6帖ぐらいの広さでしょうか、ベッドと勉強机とクローゼットでほぼ一杯。友達を呼んだとしても、一人を机の椅子に座らせて自分ともう一人はベッドの上に座るという感じでした。防音はまずまずで、隣人の音に悩まされるなんてことはありませんでした。もっとも私のお隣さん(フミちゃん)は日本人だったので、マナーがよかったのかもしれません。フミちゃんはとても気立てのいい子で、日本の大学の英文科で勉強していて、近い将来アメリカの大学に留学したいと言っていました。そのための語学留学でした。フミちゃんとは語学学校のクラスが違っていたので、たまに地下のダイニングホールで同席するぐらいの関係でしたが、日本語で話せる人がすぐ傍にいるのは、いろいろな意味で心強かったです。

フロアの住民の面倒を見るレジデンス・アシスタント(RA)のような人がフロアの中心近くの部屋に住んでいて、6階のRAケイティ(仮称)はいつも部屋のドアを開けて、皆が声掛けしやすいようにしてくれていました。「面倒を見る」といっても手取り足取りというわけではなく、こちらから質問すると答えてくれるって感じでしたけれどね。彼女はインディアナ大学の大学院生で、RAをすることで給料をもらったり、自分の部屋代がただになるといった特典があったようです。この手の学費補助はアメリカでは多いですね。院生や大学生をうまく使って、大学の様々な業務を回していき、学生たちをある意味養っていくシステムですね。学生にしても給料がもらえたり、学費が免除になるという「実利」がもちろんあるし、社会人になる前のいい準備、いい経験も積めるというわけです。もちろん、履歴書に「経験」として書けるし、それなりの評価もしてもらえます。そういえば語学学校の先生たちの一部も博士コースに在籍する大学院生たちでした。

因みにRAという略語は大学(院)では二通りの単語になりえます。一つは上に書いたResidence Hall (Management) Assistantで、もう一つはResearch Assistantです。院生の経験としては教授の研究をお手伝いする(雑用をこなす?)Research Assistantのほうが経験の評価が高くはなります。寮のアシスタントは学生が入寮したり、寮での生活をするのをお手伝いする「学生向け」サービスですが、リサーチアシスタントは教授相手の研究補助業務ですからね。私もアメリカの大学院生だった時に3か月間だけですがアメリカ人教授のResearch Assistantをしたことがあります。何かの時にそれを書いた履歴書を大学の事務局に提出したことがあって、その時事務局のスタッフが「RAってResidence Hall Assistantをしたの?」と聞いてきいてきました。「いえ、〇×教授のResearch Assistantですけど」と答えたら、「え?そうなの」と相手の顔つきが変わったのを覚えています。こんな日本語なまりの英語を話すアジア人がアメリカ人教授のRAだったので驚いたのかもしれませんね。だからこそ最初に「Residence Hall Assistantだったのか」という質問になったのでしょう。でも、その教授は実は日本語ベラベラの方だったんですけれどね。へへ。あ、でも教授への業務連絡などはちゃんと英語で書いていましたよ。

Eigenmannに住んでいる間、食事はミールパスを買って寮のダイニングホールで食べていました。朝夕は自分の寮の食堂で食べますが(そのほうが便利ですから)、ミールパスはどの寮のダイニングホールで使ってもよかったので、昼はいくつかの寮のダイニングホールにお邪魔したり、その他のキャンパス内の飲食施設でランチを楽しみました。教室の近くにあって色々な施設の入っているMemorial Union (Student Union)が便利だったので、行く頻度も高かったですね。そこはお昼時は大混雑でしたが、大型食堂だったので席を見つけるのに困ることはありませんでした。Memorial Unionは多くの学生が利用しますから、寮の知り合いに会うことも多くて、同じフロアに住んでいるフランス人留学生ソフィー(仮名)と同席したこともありました。フランス語を習っているアメリカ人が彼女にフランス語文法を聞きに来たりして、「対等の関係」を築いているなあと自分との違いに驚きました。私、アメリカ人大学生に日本語の質問をされたことなかったので。一般の留学生と語学留学生の違いもあるんでしょうね。ソフィーとは寮の廊下ですれ違った時に挨拶をする程度でしたが、そのランチタイムを機に一緒に外食したり、おしゃべりをするようにもなりました。やはり、大勢の学生がいる中で自分だけポツンと一人で食事するのって心細いから、廊下ですれ違う程度の間柄でも、旧知の友に会ったような気分になって関係性が縮まったのかもしれません。

他の寮の食堂を利用して疑問に思ったのは、寮によって食事のゴージャスさが異なるのではないかということです。私が済んでいたEigenmannは個室が整備されているためか大学院生なども多く、やや「大人」の雰囲気でした。ダイニングホールで観察していても、若やいだ雰囲気というのはやや希薄だったと思います。そして食事内容も普通の感じでした。でも昼間に訪れたいくつかの寮のダイニングホールは利用者も若い女子大生が多く(おそらくその寮に住んでいる?)、食堂の壁紙も明るくて、食事の盛り付けも華やかだし、デザートもおしゃれで種類も多いのです。ただ、ランチタイムに他の寮の食堂を利用している間はEigenmannの食堂を利用していないので、直接比較はできていません。ランチの内容確認のためだけに広いキャンパスの中を往復30分以上かけて歩いて、両方のダイニングホールを比較するのもバカバカしいですしね。「他の寮の食堂のほうがおしゃれ」。そんな印象と思い込みも手伝って、時間がある日のランチタイムは他の寮の食堂までせっせと足を運んでいました。

次回は寮での国際交流の思い出を書きたいと思います。


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