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【ボーダレスジャパン鈴木雅剛】20代のみんなへ伝えたい「自分の道を切り拓く、20代の働き方」

高校や大学で留学やインターン、学生起業などさまざまな経験をしても、新卒一括採用で一括りにされてしまうことに違和感を持つ若者が増えている。これからの時代に合った道の切り開き方は必ずあるはずなのに――。そこで、VENTURE FOR JAPANでは自分の未来のあり方を想像して「挑戦するキャリア」の第一歩を踏み出すための、オンラインイベントを開催している。第3回目のゲストはソーシャルビジネスを通じて社会課題を解決しているボーダレスジャパン代表取締役副社長の鈴木雅剛氏。どのような思いから起業に至り、何を成し遂げたいと考えているのかについて語っていただいた。

社会問題を解決して良い社会を次世代につなげたい

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小松 まず、ボーダレスジャパンの事業内容を教えてください。

鈴木 ボーダレスジャパンは、貧困や環境、差別・偏見など世界中の社会問題をビジネスで解決する、ソーシャルビジネスの会社です。より良い社会を次世代に残していくために、今から14年前、社長の田口と共に、26歳のときに立ち上げました。

たとえばバングラディシュで貧困層を作り手にするレザーブランドの工場を立ち上げたり、差別や偏見をなくすための国際交流シェアハウスを作ったりなど、社会課題を解決するための事業を事業部ではなく会社化しており、現在は世界13カ国で35のグループ会社を展開しています。

小松 会社化しているということは35人の社長を輩出しているのですか?

鈴木 そうです。グループ全社の余剰キャッシュを原資にして、起業家に資金や仲間、経営ノウハウを自由にシェアすることで事業の成功確度を上げて、より大きな社会インパクトを創出する「社会起業家の共同体」の仕組みを作りました。

というのも、社会問題を解決したいと思って単独で起業しても、リソースの問題から失敗するケースが多いんです。でもソーシャルビジネスが消えてしまうのは、社会にとって大きな損失であることに間違いありません。

ボーダレスジャパンでは独自のエコシステムによって、去年は新しく10人の社長が10の事業をスタートさせていますし、5年後には年100人の社長を輩出させたいと考えています。いずれはグループを数万社にまで拡大したいと考えています。

小松 1年で10人の社長を輩出したとはすごいですね。鈴木さんは学生の頃から起業を考えていましたか?

鈴木 大学院のときに、近しい事業内容で起業することは決めていましたが、具体的なイメージはありませんでした。

原体験となったのは、学生時代の塾講師での経験です。僕は塾講師の仕事を楽しんでいたけれど、お金のために働いている人は仕事がつまらなそうだったんですね。一方で社会に目を向けると、母子家庭のお母さんはフルタイムで働けないから雇ってもらえないし、障がいがあると働きたくても働けないという現状が目につきました。

人は働くことで幸せに生きられるのに「つまらない仕事だけどお金のために働く」人や、「働きたいけど働けないからお金がない」人がたくさんいる社会は、良い社会とはいえません。だから、誰もが楽しんで働ける職場を作りたいし、そういった働き方を広げたいと考えていました。

仕事は、目的を実現させるための手段でしかない

小松 起業して最初はどのような事業を立ち上げたのでしょうか。

鈴木 最初はソーシャルビジネスではなく、不動産の仲介事業を立ち上げ、売り上げの数%をNPOなど資金不足の団体に寄付するビジネスモデルを展開していました。

この事業で規模を拡大できるイメージはありましたが、自分たちは社会問題を解決したいのに、間接的にお金を送る(寄付する)ビジネスをしていることに違和感が拭えなかったんですね。やっていてもつまらなくて。

そうじゃなくて、困っている人たちと一緒に頑張ることに意義があるし、その人たちの変化を目の当たりにすることが自分たちのモチベーションにもつながると気づき、直接的に社会問題を解決するソーシャルビジネスだけをやる会社に舵を切りました。

小松 自分の仕事が、目的と間接的か直接的かは大事ですよね。事業をピボットさせることに不安はありませんでしたか?

鈴木 全くなかったです。違和感をなくすためには次の道に進んだ方が楽しいしハッピーだと思いました。大切なのは留まり続けることではなく、前に進むこと。何を変えたら目的の実現につながるのか、目的に執着することが大事だと考えています。

最初に取り組んだのは、差別と偏見をなくすシェアハウス

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小松 ソーシャルビジネスに舵を切ってから、具体的に何をしたのか教えてください。

鈴木 最初はシェアハウスの事業を立ち上げました。不動産仲介をしていたときに、外国人のお客様の物件を探しても、オーナーさんや管理会社からは、近隣とのトラブルや家賃滞納などのリスクがあるからとNGが出ることが当時は珍しくなかったんです。

日本語学校で話しを聞いても、留学生はせっかく日本に来ても、学校はもちろんアルバイト先でも周りにいるのは外国人ばかり。日本人は日本語学校の先生だけというケースが非常に多かったですね。

文化や言語の違いからなかなか家も借りられず、日本人とのコミュニケーションも取れない分断された世界で生活を強いられるのはおかしい。この差別と偏見をなくすために、外国人は日本で安心して住めて、日本人は外国人と一緒に生活することで国内留学を体験できるシェアハウス「ボーダレスハウス」をスタートしました。

小松 実際に、自らが直面した社会課題を解決するための事業から始めたのですね。

鈴木 人は過去の経験からしか物事を考えられないし、経験していないことをいくら考えても、具体化しようとしたら経験者からの助言が必要になります。だから、自分たちが経験した中で解決したい課題を事業にしようと考えました。

未来に対してのベストはわからなくても、課題がわかっていて解決するためにはこれがベターだと思える事業に挑戦する。その積み重ねで経験値を上げていくことが大切だと思っています。

事業のピボットで一度だけ経験した、辛いリストラ

小松 起業後、鈴木さんがしんどかった経験があれば教えてください。

鈴木 一度だけ、リストラをしたことがあるんです。それが一番しんどかった。

小松 それは、事業が厳しくてリストラをせざるを得ない状況だったのでしょうか。

鈴木 いえ、不動産仲介には宅建主任者が必要でしたが、事業をソーシャルビジネスに切り替えたことで、宅建主任者が必要なくなったんです。

大好きで大切な仲間だから、どうにか一緒に頑張りたかったけれど、新しい事業モデルにはなかなか合わず、無理にとどめてもお互いのためにならない状態になってしまって。それを、本当に苦しい気持ちになりながら直接伝えたところ、本人も理解してくれたのですが、すごくしんどかったですね。

小松 それは辛いですね。鈴木さんは仕事において、楽しいこととしんどいことの割合はどれくらいですか?

鈴木 リストラや会社が潰れかけるとしんどいですが、それ以外で正直しんどいという感覚があまりないです。危機的状況になっても、次に何をするかを考えて前に走り続けているから、しんどいと感じないのだと思います。

小松 前に進むためには、既存の手法に見切りをつけることもあると思います。そのときの、鈴木さんの判断軸は何でしょうか。

鈴木 目的を実現させるために、その手法は整合性が取れているかどうかです。たとえば、貧困問題を解決するという目的に対して、一度決めた手法でやり切ってみて、「今のやり方では遠回りだ」と判断したら、やり方を変える。

この、「やり切る」というのはとても大切なことで、世の中で事業がうまく立ち上がらない理由は、やり切る前に止めてしまうからだと思うんですね。やり切らないと、本当はその先にあったかもしれない成功ポイントを見逃すし、何を変えるべきなのかの検証もできませんから。

違和感があるなら、「付き合う人」「やること」「場所」を変える

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小松 いま振り返ってみて、起業前や学生時代に、もっと学ぶべきだったと思うことはありますか?

鈴木 実現させたい社会のイメージや、自分なりの哲学をもっと早い段階で確立させていたら、ボーダレスジャパンの立ち上がりはもっと早かったと思います。経営には哲学が必要ですし、社会を良くするためには社会哲学を養う必要もあります。社会哲学は何歳でも身につけられるから、学生の頃から育めたらよかったなと思いますね。

小松 事業を始めて14年、社会が変わってきた実感はありますか?

鈴木 まだ大きなうねりとしての実感はありません。でも、ソーシャルビジネスで社会改革をしたい学生は明らかに増えているし、世界で何十万人という貧困者がきちんと生活ができるようになって、笑顔が増え始めている実感はあります。でも、まだまだ社会的インパクトは小さいので、より大きなインパクトを与えて社会を変えられるよう頑張りたいです。

小松 ありがとうございます。最後に学生や20代の若手社会人に向けてメッセージをお願いします。

鈴木 伝えたいのは「現状は変えていいんだよ」ということ。会社を辞めてはいけないという呪縛に縛られている人がいまだに多いのは問題だと思っています。そのままで幸せならいいけれど、違和感があるなら変えるべきです。

僕の場合は、世の中にあるビジネスは社会貢献のためにあるのに、それで本当に社会が幸せになっているわけではなく、環境破壊や貧困問題などさまざまな社会問題が生じていることに違和感がありました。

しかも、そうした社会問題に対応するのは行政やNPOばかりで、ビジネスで解決するプレイヤーは本当に少ない。だから、古い仕組みで置いてきぼりの人や仲間外れを作って利益を出すのではなく、みんなで働いて利益を得るのが新しい社会だと信じて事業を拡大しています。

「やりたいこと」や「夢」を聞かれて答えられる人は少ないと思いますが、生きていく中で何かしらに違和感を持つ人は多いはずです。「付き合う人」「やること」「場所」の3つを変えてみるとかならず変化は訪れ、新しい世界が広がります。違和感に正直に。そして現状を変えてみる。その勇気を持って、ぜひ行動を起こしてほしいと思っています。

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