ロマンと業績、大きな市場とニッチ市場

自社の属している環境と、経営者の意思を以下のような観点で考えてみても、面白いかもしれない。

ミッション・ビジョンあるいはロマンといえるものと、会社の業績はどちらが優先事項か。これは、ミッション・ビジョンの達成を目指せば、業績が拡大すると思っているが、業績拡大が優先事項ではない、という考え方、と、関連する事業で会社の事業を拡大していくことで、自ずとミッション・ビジョンが実現できる、あるいは、より実現できるサービスを生める状況に近づくという考え方である。近いようでいて、この順番の違いは経営上、大きな違いを生む。また、前回書いた、組織の官僚的な側面と、コミュニティ的な側面の話ともつながり、ミッション・ビジョンの達成にはコミュニティ的な面と、会社業績の目標達成には、官僚的な側面とつながる。ということは、この優先順位で、組織においてどちらの側面を優先すべきか、にも影響する。

もう一つ、すでにある市場あるいは絶対起こる市場でビジネスを展開する場合と、小さい市場あるいはまだあるかわからない市場を作ろうとする場合で、ビジネスのスピードが異なる。前者のような市場は、すぐレッドオーシャンな市場になるが、勝てれば、一気にビジネスを拡大できる。ただし、こういった市場で勝てるには、スタートアップでも経験豊富な経営者がいる場合や、もともと強い営業やマーケの組織を保有している会社、そして資金力も重要な要素になる。あまり初めて起業した経営者や経営の浅い経営陣がやるべき市場ではない。一方で、後者のようなニッチ市場で高いシェアを取るということは起業では王道ではあるが、成功してもニッチな市場で頭打ちが早めに来る。

IPOする企業で、前者のような市場を勝ち抜いた会社は、上場する時点でも事業規模が大きく、その後も大きく拡大できるが、後者のようなニッチトップでIPOをすると、その市場自体が大きくなればいいが、そうでなければいずれニッチ市場で稼ぎつつ、大きな市場にでなければならない。当然、ニッチ市場での勝ちパターンも通用せず、業績は悪化し、株価も頭打ちになり、IPOゴールと言われてしまったりもする。

組織と関連では、大きな市場で戦う場合、しっかり官僚型の組織を作って運営しないと回らないのだが、ニッチ市場だと組織自体が小さく、官僚型組織がしっかりできていないくてもなんとか回ってしまう。また、ニッチな市場ゆえに、コミュニティにもニッチで熱い人が集まるのだが、今度、そのようなコミュニティが出来上がってしまうと、大きな市場に出ることを嫌がる場合もある。組織の面でもニッチトップの企業が、一定規模を超えるのはなかなか難しい。打破しようとM&Aなどをするにしても、官僚型の組織運営がうまくないと、買収した会社をコミュニティ的な側面では管理できない。

自らの経験も含め、よくある話な気がする。自社の市場や優先順位をもう一度、考えてみてもいい気がする。

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