官僚組織とコミュニティ

組織関連について、最近、考えていること

会社には、大きく2つの側面があると考えている。
① 営利組織として、利益を拡大すること
② 共通の価値観や理念などにもとに集まるコミュニティ

会社によって、この2つの側面の比率は大きく異なる。
究極、①のみを目的とする会社であれば、会社は利益を拡大することだけを目的とし、また、そこで働く人も、利益獲得に貢献し、高い報酬をもらうことを目的として会社に所属する。こういう会社も、こういう働き方の人もいる。
一方で、②のように、会社に何かの共感性を持って集まる、という面はもちろん多くの会社にある。ミッションやビション、理念に共感して、人が集まる。

組織運営の面では、①を追求し、規模の経済を働かせて、大きな利益を得ようとすると、官僚型あるいはピラミッド型といわれる組織構造にはなる。そこには、あくまで機能として、上司部下が存在し、指示命令系統が発生する。この組織構造は、ルールがしっかり守られている前提で、効率的に組織運営するという観点では優れている。
ちなみに、ピラミッド組織だからといって、各自に裁量権が生じないと考えることは誤りで、どういったルールを作るかが問題であるだけで、ルールの範囲内でしっかり裁量権は生じる。

一方で、②の共感性をもって集まった組織では、そのままでは各自が独自の判断で行動する。ただし、コミュニティーの性質によって、組織運営は大きく異なる。例えば、年齢が上であることがコミュニティの価値観上、重要だとすれば、自然と年功序列の枠組みができる場合もあるし、専門性の高いコミュニティーでは専門性の高さが序列を生む場合もある。
特に明確な序列の枠組みがないと、もし、他の人に何かをしてもらいたいとすれば、説明し、理解してもらい、お願いする、という関係性になりやすい。
そのため、何かの序列がない組織では、意図的に行動規範などのルールで序列を作り、その中で、各自が独自の判断で動けるようにしようとするが、コミュニティの性質上、なかなかルールを作ったり、徹底したりすることが難しい場合もある。
このコミュニティのルールを徹底していくと、宗教的と言われる場合もあるが、コミュニティの中にしっかり価値観や行動規範やルールが浸透している状態ともいえ、コミュニティとしても秩序が保たれやすい。

会議運営や情報開示などでも違いが出てくるように思われる。
①の場合、ピラミッド型組織における各役割は明確であり、それに必要な情報が提供され、目標が設定され、成果で測定される。このため、純粋に①のみの観点であれば、より多くの情報共有は業務的には必要なく、また、多くの情報はノイズにさえ、なりうる。また、本来は大勢を集めた会議などは情報共有の観点でも、意思決定の観点でも必要ない。

一方で、②のコミュニティー的な観点では、情報公開されることが前提であり、また、定期的に皆で集まり、共感度を高めることは極めて重要ではある。宗教などでも定期的に集うことの重要性は常に言われることではある。

どちらか一方によることができる組織はいいが、大抵の場合、この2つの要素を会社は持っている。経験上、会社の組織の目的やステージで、①と②の比重をどう置くか、が難しく、また、ブレンドして運営すると、どちらの観点も中途半端になってしまうので、様々な施策の意味・目的が、①、②のどちらにつながるものか、明確に意識したほうがいいだろうと、最近考えている。

会社も、ミッション・ビジョンドリブンな会社は、②のコミュニティーの要素が出やすい、あるいは、外から見ても見えやすい。しかし、例えば、入社してみたら、組織運営は①で、入社後強い違和感を感じてしまう人がいる、という場合もある。また、会社としても、上場を目指す、あるいは上場後だと、計画的な利益追求をしなければならないが、②のコミュニティの要素が強いと運営の効率化はされず、いい人達の集まりで、やさしい会社だが、業績は上がらない会社になってしまう場合もある。

また、30名くらいまでのスタートアップの場合、どうしても、会社の方向性や組織がなかなか定まらないので、そもそも①のようなピラミッドを作れない場合も多く、②のコミュニティ的な要素を帯びやすい。人数も少ないので、阿吽の呼吸で運営が回り、そのときは、コミュニティとして、非常に楽しい状態に一時期なるが、規模が一定以上になると、途端に組織運営が回らなくなる。そこで、①のようなピラミッド組織とそれに合わせた権限規定を導入すると、コミュニティとしての会社を期待している人は途端に合わなくなる場合もある。一方で、会社側も、離反を恐れて、①のようなピラミッドを作りながら、フラットな関係性の両立を目指してしまうが、多くの場合①が機能しなくなり、組織の拡大に耐えられなくなる場合もある。

加えて、組織運営への移行を強化するために、他社の経営幹部を採用するが、その幹部と経営者との間でもしっかりピラミッド組織運営ができていないと、部署毎にバラバラの運営がなされるピラミッド組織ができあがる。こうなると、共通のコミュニティの要素が崩壊しはじめる。

次に再度、ミッション、ビジョン、行動規範などを整備し、コミュニティの強化を図るが、なかなか徹底できない。

意外とこういった経路を減るスタートアップの組織はある気がする。

これは、自戒の念も込めてだが、強い会社では、①のピラミッドの運営も、また、②のコミュニティーの運営も、徹底して行われているが、多くの会社では、①と②のいいとこ取りだけをしようとして、結局中途半端になってしまっている会社のほうがいい気がする。会社にあわせ、適切にブレンドして、そのうえで、①、②が徹底されている状態は難しいが、その模索が必要だと最近、強く感じている。

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