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ベンチャーキャピタリストが忘れてならない、たった一つのこと

ベンチャーキャピタリストが忘れてはならない、たった一つのこと

それは、 「起業家へのリスペクト」 です。

ベンチャーキャピタリストという仕事は、起業家と共に歩むものです。しかし、時にその立場を勘違いし、上から目線になってしまうことがあります。ここで、ベンチャーキャピタリストが自らの立ち位置を冷静に見つめ直すことが重要になります。

キャピタリストの立場とは

ベンチャーキャピタリストには、 「自らリスクを負っているか」 という視点が欠かせません。自身がGP(ジェネラル・パートナー)として投資事業組合の出資を集めた場合や、投資事業組合に自己資金を投じた場合を除けば、多くのキャピタリストは 「雇われ」 の立場にあります。つまり、自身の資産をリスクにさらしていないのです。

仮にGPとして投資事業組合の出資を集めたとしても、 「個人の力なのか、会社のブランドによるものなのか」 は慎重に考えるべきです。名のあるベンチャーキャピタル(例:ジャフコ、グロービス・キャピタルなど)に所属している場合、個人の能力よりも 「企業の看板」 の恩恵を受けている可能性が高いのです。実際、そうしたVCで成功したキャピタリストの中には、退任後に目立った活躍が聞こえてこない人も多くいます。

起業家とキャピタリストの決定的な違い

ベンチャーキャピタリストは、 「リスク分散」 を前提とした仕事です。投資家から預かった資金を運用する以上、1社のみにフルコミットすることはできません。これは当然の戦略ですが、 「100%の情熱を持って一つの事業にフルコミットして挑む起業家」 と比較すると、どうしても 「安全策をとっている」 という印象は否めません。

一方で、起業家は 「たった一つの事業に全力を注ぐ」 存在です。リスクを一身に背負い、あらゆる業務を自らこなします。その姿勢こそが、キャピタリストには決して真似できないものなのです。

また、キャピタリストは仕事柄、多くの起業家と対話し、企業の機密情報に近い話を聞くこともあります。そのため、 「自分は視座が高く、広い視野を持っている」 と錯覚しがちですが、 「それは、起業家から教えていただいた耳学問に過ぎず、24時間365日、自身の事業のことを考え続けている起業家には足下にも及ばない」 という事実を忘れてはなりません。

ベンチャーキャピタリストの専門性とは

キャピタリストが実際に持つ専門性は、次の3つに集約されます。

  1. 営業(ソーシング力) — 投資案件を見つける力

  2. 資本政策・バリュエーション(株価算定) — 適切な投資判断を下す力

  3. 株式等の発行手続き — 企業の資金調達をサポートする力

しかし、これらの専門性は 「事業運営のごく一部」 に過ぎません。実際にスタートアップへ転職したキャピタリストは、自身の能力の限界を痛感することが多いのです。私自身、スタートアップに移り、その厳しさを身をもって学びました。

起業家への敬意を忘れない

起業家は、

  1. 会社のブランドを使わずに勝負する

  2. 一つの事業にフルコミットする

  3. 事業に関わる全てのことを自ら行う

こうした存在です。一方のキャピタリストは、

  1. VCのブランドのもとで活動する

  2. リスクを分散しながら投資を行う

  3. 営業・資本政策・株式発行手続きが主な業務

これを比べた時、 「なぜキャピタリストが起業家に対して偉そうにできるのか?」 という疑問が生じるはずです。

多くの 「勘違いキャピタリスト」 は、自身の立ち位置を冷静に俯瞰することができていません。これは、大企業の購買担当者や、金融業界のバイサイドの運用担当者にも見られる傾向です。特に、 「ナチュボン(金融業界の新卒資産運用担当)」 と呼ばれる人々と共通する部分があるかもしれません。

ベンチャーキャピタリストとしてのあるべき姿

勘違いキャピタリストとして生きるのも一つの選択肢ですが、 「真に価値のある投資をしたい」 のであれば、起業家へのリスペクトを忘れるべきではありません。

この業界は 「成果を出せない人には厳しい」 世界です。尊敬すべき起業家を理解し、敬意を持って接することができないキャピタリストは、いずれ淘汰されるでしょう。

最後に、私が改めて強調したいのは、

ベンチャーキャピタリストが忘れてはならない、たった一つのこと、それは「起業家へのリスペクト」である。

この姿勢こそが、良い投資を生み、VC業界全体の価値を高めるものなのです。





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