いわゆる接見国賠において、違法性が認められた最高裁の判例を整理。
目的は、金岡先生の下記記事にある、「接見交通系の国賠で、法令解釈が最高裁まで争われた末に賠償が命じられているような事案と本件とで、何が違うのかとも思う。」という点について、「賠償が命じられているような事案」を整理・確認するためである。
なので、違法と判断され、(当然過失があることを前提に)賠償が命じられているような事案を中心に整理する。
国賠請求を(一部)認容した原判決に対し、国が上告。上告を棄却した(すなわち、国賠法上の違法・過失の責任を認めた)。
判旨は以下のとおり。
いろいろ言いたくなることはさて措き、過失判断にかかわる部分については、以下のとおり。
検察官上告、すなわち原判決も違法・過失判断をしているということなので、当然検察官の上告理由書には、刑訴法39条3項について、かく解すべきである(原判決は法令の解釈を誤ったものである)という主張に続けて、当然例の主張が出てくる。
最高裁は、上記上告理由第二については、文字どおり一蹴している(というか、判文上に全く現れていないので、「一顧だにしていない」というべきか)。
当然調査官解説が気になるところであるが、調査官解説には、かろうじて上告理由について、上記上告理由「第二」を掲記するのみで、これを排斥した判断については「全く」(脚柱ですら)触れていない。このことが後に影響してくるのだが、それは追って。。。
今度は、原々判決において国賠請求を(一部)認容したが、原判決がこれを破棄し、国賠請求を棄却したのに対し、弁護人が上告。原判決を破棄し、被上告人(国)の控訴を棄却した(すなわち、国賠法上の違法・過失の責任を認めた)。
判旨は以下のとおり。
過失判断にかかわる部分については、以下のとおり。
この事件は、国(検察官)が上告したわけではないので、上告理由書はなく、答弁書があるのみである。答弁書は公開されていないので、国(検察官)の答弁内容は不明である。
とはいえ、例の主張があったことは間違いないと思われるので、これも、過失を否定する国の主張については一蹴した(一顧だにしなかった)といえよう。
なお、調査官解説にも、「過失」を認めた点について、全く言及が見当たらない。
転機はこれである。
先ほどと同じ第三小法廷であり、金谷利廣裁判官は両方に名を連ねている(先ほどの事件では裁判長)。
判旨は以下のとおり。
そして、上記判旨には出てこないが、重要なのは、過失を否定し、国賠請求を認めた原判決を破棄しているということである。
上告人は国なので、当然例の主張が上告理由書に登場する。また、原々判決は、「接見設備がないことを理由に右各接見を拒否した青山検事の措置は、違法であり、捜査機関として遵守すべき注意義務に違反するものとして青山検事に過失があったものといわなければならない」として直ちに過失を認めた(国の過失を否定する主張をあえてしないという訴訟戦略があったことは容易に推察される)のに対し、原審においては、この点について別途争点になっていたようで、原判決は担当検事が「検察庁内に接見室がない場合には接見を拒否できると考えたことについて「相当の理由」があったと認めることはできないと判示しており、この点について上告理由書で具体的に反駁している。
最高裁は、違法としつつ、担当検事の過失を否定したものであるが、その判示は以下のとおり。
「広島地検では,接見のための専用の設備の無い検察庁の庁舎内においては弁護人等と被疑者との接見はできないとの立場を採っており,そのことを第1審強化方策広島地方協議会等において説明してきていること」を理由として挙げることは全く蛇足であり、かえって、相当ではないと考えるが、どういう趣旨で挙げているのだろう。「加害者の依拠した見解は、加害者の属する組織における公式見解と同じであり、加害者個人の判断に何ら過失はない」という考慮なのだろうか。そんなことで国家賠償請求が否定されるなんてことがあってよいのだろうか。
なお、調査官解説では、個々の要素については言及せず、以下のとおり丸っと言及されているにとどまる。