現行法の条文は、以下のとおり。
手続法上の相互関係について。
未成熟子の養育費のみを請求する手続については、
①父母が婚姻中の場合
②父母の離婚訴訟の手続中の場合
③父母が離婚している場合及び父母が婚姻していない場合
とがある。
②について
最判H1.12.11は、 裁判所は、離婚請求を認容するに際し、親権者の指定とは別に子の監護者の指定をしない場合であっても、申立により、監護費用の支払を命ずることができるとしている。
なお、上記最高裁判決は、「現に子を監護養育している夫婦の一方が他方に対して離婚訴訟を提起するとともに、子の養育費の支払を求める付帯請求の申立ては、離婚の際にその申立人が親権者に指定される場合であっても、人事訴訟手続法15条1項にいう『子ノ監護ニ付キ必要ナル事項』についての申立てとして適法であると解すべきである。」として養育費の支払を命じた原判決(東京高判S62.11.24)の判断を是認したものである。
上記東京高判S62についての鎌田泰輝・横浜地方裁判所判事(当時)の解説であるには、反対説(「最近の通説」とされている。)につき、次のとおり解説されている。
なお、岡垣学といえば超有名人であり、容易に無視できるような見解ではない。
最高裁判決についての調査官解説は、大きくは「離婚判決に附随して養育費の支払を命ずることができるかの問題点」について検討する中で、上記岡垣学の問題意識について言及しているが、ややポイントがズレているように感じなくもない。
すなわち、調査官解説では、「古くは、子の監護費用の分担は、監護者の指定と独立しては、監護に関する処分の対象とならないと解する扱いが有力であったようであ〔る〕」、「現在の家裁の実務は、監護費用の分担を、監護者の指定とともにしかなし得ないとは解しておらず、監護者の指定と独立してでも、子の監護費用分担の処分をなし得るものとしている」とし、「本判決も、民法766条1項の解釈としては家裁の実務が採っている立場を前提として、原審判決の判断を正当とした」とするが、親権者に指定された父母の一方が他方にその費用の負担を求め得る実体規定、手続規定の分析は全くしていない。あくまで、「監護者の指定を不可欠の前提とはしていない」という家裁実務を前提として、「監護者の指定なくして」、すなわち「親権者も」監護費用(養育費)を請求し得る、という論理運びをしているようである。
最高裁判決の判文をみても、上記と同様の理解を前提としていることがわかる(親権者が監護費用を請求し得るか、という問題の立て方をしていない)。
なんとなく消化不良感が否めない解説&判決ではあるが、実務的には結着した問題ということだろう。
①・③について
②についての判断が全てのように思われる。