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読書記録『ペスト』カミュ

本日も一冊本を読めたので、その感想を。

というのも今までインスタの方に読書記録をあげていたのですが、インスタに投稿するのはなんとなく気が進まないので、こちらに書くことにします。

小説を普段読まない人にとっては「また読書記録かよ」と思うかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。

それではあらすじから始めよう!

本日はシマウマが横にいます。


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194※年、アルジェリアのオランにペストが発生した。
外部と遮断された町で、猛威を振るう疫病を前に、医師には、一市民には、無神論者には、何ができるのか?
理不尽で巨大な悪に苦しみ抗う人びとの心理と言動を描き、災禍のたびに読み直される現代の古典。
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前読んだ『日没』という小説の解説欄にこの小説が紹介されていたので、手に取り読了。


一言で言うなら、非常に重厚な文学だった。

面白さとしては、本屋大賞や今話題の新刊と思えば少々苦戦するが、難解な不朽の名著と思って読めば、まぁまぁ楽しめるといったところだ。


というのも、主人公の医師リユーとその仲間たちが、永遠とペストと闘う話であるためストーリー自体は難しくない。

しかし、文体が手記のような三人称視点で進められていくのでセリフが少なく、一文一文が翻訳の影響かわからないが、非常に抽象的であるため、理解に時間がかかるのだ。
(なお手記を書いている正体は物語の最後にわかる仕様になっている)

加えて、定期的に注釈が振ってあり、いちいち文末に戻ってその意味を確認する作業を要するため、少々読むのに体力を使う。

その作業すら、小説を普段読む人なら問題なく楽しめるかもしれないが、普段からあまり読まない人には少々勧めにくいのは事実である。

と、ここでこの作品を読んで印象に残ったところを2点紹介する。
※若干のネタバレあり。


1)コロナとの類似性

まず改めて、この物語はフランス領アルジェリアのオランという町でペストが大流行するという架空の話なのだが、フィクションとは思えないほど、リアリティがあった。

アルコールを飲んだらウィルスが浄化されるというデマが流行るとか、店から食糧や物資やらが減るとか、はじめは他人事だった民衆が徐々に焦り始め、次第に絶望しながらもペストに順応していく様子とか。

コロナウィルスを経験した後に書かれたのではないかと思うほど、類似点が多かった。


疫病が流行る系は、大学時代に『月の落とし子』という小説を読んでいたのだが、こちらの方がまだ架空の物語感があって読みやすかった。

しかしこちらと比べると今回の『ペスト』の方が、市民の様子が鮮明に描かれているので、本当に過去の作品なのかと作者のカミュには平伏するばかりである。

どうやら2020年に読了してきたらしい。


また、時代設定が1940年代となっているため、当時のアルジェリアでは電話など通信手段があまり発達していなかったよう。

そのため、ロックダウンとなると、離れて暮らす家族や恋人に二度と会えなくなる恐怖と不安が鮮明に描かれており、物語ラストの開門シーンでは「おお!よかったね〜」と心の中で拍手を送った。
(物語はラストで、一応ペストが収まってロックダウンも解除されて終わる)



2)リユーとタルーの海水浴のシーン

個人的に一番印象的だったシーン。

医者であるリユーと外国人であるタルーはともに保健隊として、ペストに立ち向かっている仲間だ。

彼らは、それはもう寝る間も惜しんでペスト患者の治療に取り組んでおり、毎日のように人の死と立ち会っているため疲労困憊である。

そのような状況下でタルーの発したセリフが心に残った。


「(中略)結局のところ、ペストのなかだけで生きるのはあまりにばかげているからね。もちろん、犠牲者のために闘わなくてはならない。けれども、他方でなにかを愛することをやめれば、闘うことは無意味になってしまう」



「マジでそれな」と思った。
要するに、たまには息抜きしないと気が滅入ってきて生き甲斐まで失ってしまう、ということだ。


世の中には、何かやるべき大きな課題があるとき、「その課題にのみ全力で向き合いその他のことは全て捨てるべし」というタイプの人と「やるべきことがあっても、他の趣味や勉強をやめる理由にはならない」というタイプの人がいると思う。

間違いなく私は後者であり、だからこそ来年に資格の試験があるというのにも関わらず、試験に関係のない本を読み、「ほぇー。アルジェリアって昔フランス領やったんやー」などと言っているのである。


個人的には、そういった本業とは関係ない学びは大切だと考えていて、そういった雑学にも満たない知の集積こそが、人としての深みを将来的に与えてくれるのではないか、と思っている。
(前者のタイプの人からは「甘えんな」と言われそうだが)

Se劣性でN型に振り切っている私にとって、読書とはS型にとっての筋トレのようなもので、本を読んで様々な語彙や教養を知っていれば知っているだけ、かっこいい人になれると思っている。
(読書記録なのに無理矢理MBTIの話に繋げようとしてしまう、、)



以上が、『ペスト』の感想だ。
重ねてとなるが、読むのに体力を使うタイプの本であるため、読書初心者には正直勧めにくい。

しかし、誰もが知る名作を読むことができたという点で、この本に出会えてよかったと思う。



最後に表紙の絵ですが、ジュール=エリー・ドローネーの「ローマのペスト」という作品らしいです。
天使に命じられた悪魔が家に槍を突いた数だけ、死人がその家から出たという物語に由来するものとのこと。

こういう絵を見るとゾクゾクしますね、、!!

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