見出し画像

前途多難の妊娠出産記(口唇裂編④)

口唇裂を持って生まれてきた娘。昭和大学の口唇口蓋裂センターでの通院(産前~出生後の総合診察)についてのお話。


■昭和大学 口唇口蓋裂センター訪問

切迫早産の入院中、主治医から「紹介状を作っておくから、出産前に口唇裂の治療を検討している病院に話を聞きに行った方が良いよ」と指示があり、病院の地域連携課を通じて初診の予約を取ってもらうことになりました。

通院するのは昭和大学藤が丘病院の口唇口蓋裂センター。決め手としては国内最大の治療数を誇る事と通いやすさ(自宅から1時間弱)です。
口唇口蓋裂は形成外科や口腔外科はもちろん、耳鼻咽喉科や矯正歯科、言語医療士などとのチーム医療による治療が大切になるため、専門のセンターで総合的に診察してもらうことになります。

早速、切迫早産の退院後にお話を伺うことに。センター長の先生が対応してくれました。
・口唇口蓋裂は単発の疾患として発症することが殆どで、唇裂/顎裂/口蓋裂全てを持ち合わせているパターンが最も多い。心臓病などの合併症を併発している確率は1/100くらい(口蓋裂のみ持っている方が合併症率が高い)。
・どこの病院や専門センターでも手術の内容に大きな差はないが、昭和大学では顎裂の処置にあたって初回(口唇裂)の手術時に人工骨を埋入し、腰骨から採取した血液をかけることで骨の育成を促す処置を数年前から実施している。今のところ約6割の確率で骨の形成が見られている。
・顎裂がある場合は、生後早めに手術前矯正(恐らくNAMのこと)をすることで今後の顎形成を良好に進めることができるが、保険の適用外かつ通院頻度が高くなることがネック。
・分娩予定の総合病院で形成外科医に診てもらい、生後2、3週間までに一度こちらのセンターで初診を受けて、今後の通院・手術等のスケジュールを決定する。

顎裂がある場合、裂部分に歯が生えず将来の歯並びにも影響が出てきます。そのため、腰の骨(腸骨)から採取した組織を歯茎に埋め込む必要がありますが、大がかりな手術かつ、実施時期が永久歯が生える前の6~9歳頃になります。この頃は子供もしっかり記憶に残る年頃なので、心身ともにハードで可哀そうだな…と思っていたので、人工骨という選択肢もあることに安心しました。

■生誕後の初診

娘を連れての診察結果は「左完全口唇顎裂」となりました。
・4、5歳くらいで目に見えない粘膜部分に裂がある「粘膜下口蓋裂」が発見されるかもしれないが、見た感じそれらしき兆候も見当たらない
・口蓋裂を併発していない場合は言語障害や中耳炎、受け口などにはなりにくい(鼻咽腔閉鎖不全は口蓋裂でなくても発症する可能性はあるし、子供はそもそも中耳炎にかかりやすい)が、筋肉の発達等に影響はあるため、いずれ言語療法士の先生に診てもらう必要はある。
・口蓋裂がないため、術前矯正を受ける必要もなし(というか出来ない?)。とにかく手術前に風邪を引かせなければ日常生活における規制はなし(おしゃぶりなどをさせてもOK)

3月の相談時に聞いた人工骨の埋入ですが、娘は上の歯茎がズレるように割れているため、人工骨を入れても上手く発育しない可能性があるとのこと…
ただ、唇の裂を閉鎖することによって生じる口唇圧により歯茎の段差も自然と矯正されることも見込まれるため、改めて次回の診察時に詳しく検査することとなりました。

娘は今後、生後3か月頃の唇顎裂閉鎖・鼻形成と、思春期が終わり鼻の成長が止まった頃に微修正を行うため、最低2回は手術を受けることになりそうです(初回手術時に人工骨が埋入できなかったり育たなかった場合は腰骨移植を実施するため計3回の可能性もあり)。

体重も順調に増えてるので、口唇裂の手術の日程は8月上旬に決まりました。書籍等では入院期間は7~10日間程で保護者(基本は母親)も付き添い入院ができると記載されていましたが、今はコロナ禍の影響で本人だけの入院&キーパーソンとなる1名が1日15分の面談のみ許されるという、かなり制限された対応となっていました。
全身麻酔&本人も記憶がない時期での手術になるとはいえ、こんなに小さくてか弱い生き物を数日間も一人ぼっちにさせてしまうんだ…と思うと、胸がぎゅっと痛むのでした…

今後のスケジュールとしては2回の総合診察および術前検査と、入院までに3回通院することになりました。

■総合診察①

5月上旬、総合診察として形成外科・小児科・耳鼻咽喉科の診察を受けに。
小児科ではエコー、耳鼻咽喉科では耳の中、形成外科では口の中をそれぞれ確認しましたが手術に影響するような疾患やリスクは特に見られませんでした。また7月に改めて手術1ヶ月前の診察となります。

さて、口唇口蓋裂は自立支援医療(育成医療)の対象となっており、申請すれば医療費補助を受けることが出来ます。医師の意見書が必要となるため、病院内の総合サポートセンターで作成を依頼し、後日書類を受け取りにいった後、区役所に提出しました。
が、ここまでしたにも係わらず、結果としては所得制限に引っかかり育成医療助成は受けられないので小児医療費助成の範囲内で頑張ってね!とのことでした。ズコー。児童手当も満額貰えないし、世帯年収が比較的高めと言っても遊んで暮らせるような生活をしている訳じゃないのにね…働いたら負けである。

■総合診察②

7月上旬、2回目の総合診察です。今回は主治医の先生がパソコンのペイントソフトを用いながら手術方法について詳しくお話いただきました。

・今回の手術は機能回復が目的。唇と歯茎と鼻部分を縫合し、裂のために途絶えてしまっている口輪筋および小鼻の修正を実施する。
・手術は小三角弁法(小さな三角形状に切開することで縫合児のゆがみを減らす)にとローテーション・アドバンス法(詳細失念…)を用い、右側の正常な唇の形と対称になるように形を整える。
・手を加えるほど皮膚の組織が薄少となるため、先生は手術回数を増やすことは望ましくないと考えている(特に鼻は回数を重ねると分厚く硬く、団子っ鼻のようになっていくため、推奨しないとのこと)。
・鼻孔の変形を防ぐ装置「レティナ」は装着し続けないと意味が無く、傷口も擦ることになってしまうため、先生は不要と判断している。
・術後の通院頻度は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年。メインは経過観測。

口唇口蓋裂児のいるご家族のブログ等を読むと、このレティナが鬼門のようで、嫌がって装着に一苦労すると見かけるので、退院後の生活はかなり大変そうだと…構えていたのでなんだか拍子抜けでした。
また、生後すぐの診察時に声を掛けてくださったご家族(主治医は別の先生)のお話によると、既に何度か修正手術をしてるとのことで、先生によっても考え方や方針が異なるようですね。

当ブログをご参考にしてくださっている皆さまには、是非主治医との綿密なコミュニケーションを取り、納得のいく形で手術に臨んで頂きたいです。

次回は術前検査・前日入院です。


いいなと思ったら応援しよう!