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新型コロナウイルス感染症治療薬候補③レムデシビルについて 臨床試験解説PART1

【この記事は現在進行中の臨床試験を紹介・解説するものであり、特定の医薬品を推奨するものではありません。現在、新型コロナウイルス感染症に有効であるという確かな知見が確立された薬剤はありません。】

 今回はレムデシビルの臨床試験について解説したいと思います。
尚、より詳しい臨床試験情報は、こちらのリンク(臨床試験ポータルサイト)をご参照ください。

 まずはレムデシビル自体の解説を簡単に。
当初レムデシビルはアフリカにおけるエボラウイルスによるエボラ出血熱の治療のために開発されました。残念ながらエボラ出血熱への効果は立証されませんでしたが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖を抑制する可能性が示唆されたため臨床試験が実施されることとなりました。
 日本国内をはじめ、世界各国においても未承認の薬剤のため副作用の種類やその割合について確定的なデータがないため言及は差し控えることとします。

 さて、本題の臨床試験ですが本邦において複数存在しますので一つずつ紹介したいと思います。
 まずは、国立国際医療研究センター病院で実施されている「COVID-19に対するレムデシビルの安全性および有効性を検証する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較臨床試験」を取り上げます。こちらの試験は3/26に最初の症例が登録され研究がスタートしています。尚、レムデシビルは注射剤であり、1日1回・連日投与(最長10日間、なお退院した場合その後は投与しない)が行われます。

 この試験は、プラセボ対照比較試験というもので、
①試験薬を投与するグループ
②プラセボという成分が何も入っていない薬剤を投与するグループ
の二つのグループの治療経過を比較します。

 治療経過とは、具体的に言うと投与開始後15日目の患者さんの状態が
1.死亡
2.入院、侵襲的機械的人工換気又はECMO の使用、
3.入院、非侵襲的人工的換気又は高流量酸素装置の使用、
4.入院、酸素補給が必要、
5.入院、酸素補給が不要 - 治療の継続は必要(COVID-19 関連又はそれ以外)
6.入院、酸素補給が不要 - 治療の継続も不要
7.入院なし、活動の制限及び/又は自宅での酸素療法が必要、
8.入院なし、活動に制限なし。
上記の8段階のどれに当てはまるかで判断されます。
 また重篤な有害事象の頻度や血液検査結果の推移などから安全性についての検証がなされます。

 試験薬を投与するグループとプラセボという成分が何も入っていない薬剤を投与するグループを比較することで、試験薬の真の効果(有効性)を知ることができます。そして、患者さんは自分が治験薬を服用しているか、それともプラセボを服用しているかは分かりません(これを盲験といいます)。
 これは、もし自分の飲んでいるものが治験薬とわかってしまうと効くような気がしてより良い結果が出ることもあれば、逆にプラセボとわかると飲んでも無駄だと思ってしまい効かなくなる(いわゆるプラセボ効果と言われるものです)ことがあるために行います。
 またこの二つのグループは、年齢や性別、喫煙の有無などの治療の効果に影響を与える要素に偏りが出ることを防ぐためどちらのグループになるかはランダム(無作為化)で決定されます。

 この試験はランダム化されかつ、プラセボの対照群が設定されており試験の質が高く、この結果はレムデシビルの効果を評価するための非常に重要な資料となると考えられます。試験の推移を注意して見守っていきたいと思います。

あとがき(用語解説)
二重盲検は医師等の治験薬を投与する側も誰が治験薬を服用し、誰が偽薬を服用しているかわからないことを言います。その場合はグループの割り当てを担当しているごくわずかな人だけがその情報を知っており、秘密にされています。
逆に参加者と医療者双方ともにどちらを服用しているかわかっていることを非盲検試験、医療者のみがわかっていることを単盲検といいます。