藪の中で「藪の中」を3回観た。2018橋の下世界音楽祭
2018年6月1日~3日まで、三河国豊田市では橋の下世界音楽祭でした。
矢作川の川原に自生してた自然の竹数百本と木材、あと太陽光発電だけで、3日間だけの町が今年も幻出しました(只今絶賛撤収中)。
今年は土日の2日間足を運んだんですが、なんでこんなに観たんだろう?というのが、ハラプロジェクトによる演劇、『藪の中』(芥川龍之介作、原智彦構成・演出)でした。4回の公演のうち、3回観ました(タートルアイランドのライブより優先したくらい)。
会場の外れ、藪の中で「藪の中」。太陽の下、月の下
会場の写真は一切ありません。インスタなどに上がっているので、気になる方はどうぞ。
この演劇は無電力演劇で、劇場は矢作川の川べりからほんの数メートルのところ。遠くからは賑やかな音楽が。耳元には鳥の声や、水の流れる音。目には川から乱反射する光が、一切の舞台装置でした。
夜の部では、灯油ランプの灯り。演者たちが、たそがれ時、かわたれ時の微妙な明暗の中で浮かび上がる。
「怖い」と子どもの小さい声。そりゃぁ、怖いだろう。
真実なんて藪の中の現在性。ポスト・トゥルース、オルト・ファクト
芥川龍之介の「藪の中」は青空文庫にも入っているし、「羅生門」をはじめ、映画化や舞台化もたくさんされています。
ハラプロジェクト版の「藪の中」は、原作にほぼ忠実な構成で、たぶん観客のすべてが、この事件を捜査する”検非違使”として証言を訊くという形式なんだろうと思いました。(そういう意味では映画「羅生門」とは全然別物)
詳しくは書きませんが、本当に原作に忠実なので(原作読んだ人は知ってると思いますが)、強烈な”スッキリとしなさっぷり”を味わいます。
ダメ押しとばかりに、すべての証言が終わったとき、木樵り、旅法師、放免、媼、多襄丸、女、死霊は、それぞれ虚ろな目で観客(=検非違使)を一瞥して、深い沈黙へと戻っていきます。
今、藪の中で「藪の中」をやるっていうのは、実にリアルタイムです。これだけ「真実」が、そう見たい人にはそう見えて、そう信じたい人にはそう信じられる状況の話が、物語の舞台からは1,000年、芥川の原作からもほぼ100年経って、”橋の下”の喧騒を離れた場所に来た人だけが体験できるオルト・ファクトとして表現されたことに素直に感動しました。
結論:体験しなかった人はざまあみろ!
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