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我が家の新入り

普段はゲーマー寄りで、これといって物欲もなくファッションはユニクロでハッピーな高校男児である息子が、このところ音楽を聴くだけでなく自分でもやってみたくなったらしい。もっとずっと小さいころに、音楽を習いたいか興味があるかという確認をした時にはきっぱりやりたくないと意思表示をしたため習い事を強制はしなかった。今から何かを本格的に始めるにはちょっと遅いだろうが、別に本格的でなくたっていいのだ。そんなこんなで今年の彼の誕生日プレゼントに鍵盤楽器を買うことになった。本人は習いに行く気はさらさらなく、思春期のやつらがギターに勝手に手を伸ばす、的な雰囲気である。

念のため住まいのマンションの楽器規制を確認したのち、OKということで夫と彼は何やらみっちり相談、欲しいモデルを決めて注文した。が、コロナのせいだか何なのか、彼の誕生日は5月上旬だったのにいつまでもやってこない。もう月が替わろうという頃に、やっとそれは届いた。

彼らが選んだのはとてもシンプルなモデルで、キーボードというよりは電子ピアノと呼ぶべき雰囲気のヤマハのモデルだった。息子は大喜びでいじり倒している。ピアノは全くの初心者なので彼は運指のやり方も知らないが、今時の子は何でもユーチューブで情報が得られる。彼はそういうチャンネルを眺めながら、一生懸命ジブリの映画のテーマ曲のメロディーをぽろぽろと試すようになった。

自分は小さいころピアノを習っていたくちだ。中学に上がって辞めたがバイエルとハノンはやった。習いに行かなくなった後で、自分で楽譜を買って「メリークリスマス、ミスターローレンス」は弾けるようになった。その後は何十年もピアノには触っておらず自分の指はもう動かない。でも、今まで楽器との縁が全くなかった家に鍵盤が現れると、なんとなくそばに行きたくなり、触ってみたくなる感覚に襲われる。

そんなわけで、息子のために我が家の新入りとなった電子ピアノを前にして、なんとなく楽譜が欲しくなっている自分がいる。彼にやさしいジブリのピアノ作品集を買うときに、さりげなく自分にもなにか買ってみようかと思っている。


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