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テセウスの心臓 MV解説

皆様こんにちは。
Veil「 テセウスの心臓ft,初音ミク」のMVを作らせていただいたzen iizukaです。
今回MVではアクションをメインにしたのは良いが、前提やストーリーがあまりにも複雑すぎるものが出来てしまったのでMVについて私の方で解説を書きました。

ー読み始める前にー
今回この解説では考察の幅が極端に狭まるほど内容を詳細に描写しています。そのためMVを見て皆様の解釈と異なる点が出てくる可能性があります。
私は既存の皆様の解釈も尊重し、肯定したいのであくまでも今回の内容は結果的に一つの見方として読んでくだされば嬉しいです。
料理に例えるならば、大事なのはあなたがどう感じたかという"味"であり、そこからイメージした食材がこの内容と違ったとしても"あなたが感じた味とイメージは揺るがない本物"であるということです。
私は"それ"を何よりも価値があるものだと感じていますので大事に扱っていただければ嬉しい所存です。

では以下から解説を始めていきます。
ざっくりになりますがお付き合いください。

ー前提ー
舞台はテクノロジーの発達した未来の月下の世界。第二の地球。
さまざまな理由で地球に住めなくなった人類は"外星開拓労働アンドロイド"を多数月に送り、地下を開拓させ、のちに移住した。そんな月下に作られた地球を模した世界です。
そこでこのMVの物語は展開していきます。

ーあらすじー
MVの内容を簡潔にまとめるのであれば、人間に触れ感情が芽生え自己矛盾を抱えた1人のアンドロイドが裏技("CODE : CRASH ME")を使い自害する話です。

ー内容ー
00:00〜00:28
初音ミクと呼ばれるアンドロイドが話の主軸ですが、冒頭彼女はすでに電波塔の地下にある研究施設に幽閉されています。冒頭はその彼女が引き起こす電波塔ジャックの映像から始まります。(以後この個体は"オリジナルミク"と呼称します。)
電波塔は月下に作られた都市から長く伸びて月面までアンテナを伸ばしています。
この電波塔から月下の発展した都市のさまざまなところへ命令や信号を放ち世界は統括されています。
そんな電波塔には政府の研究施設が併設されており、日々技術の発展を続けています。

(冒頭のこの場面で"CODE : CRASH ME"とコメント入れていただけると嬉しかったり。)

00:28〜01:05
主人公になる初音ミクはオリジナルミクではなく、電波塔ジャックでオリジナルミクのメモリーを脳に書き込まれ自分を初音ミクと自認してしまった1人の外星開拓労働アンドロイドです。
外星開拓労働アンドロイドはこの世界では既に用済みになりメモリーやストレージは消され廃棄場に捨てられていました。プルトニウムやニッケルなどを資源に動くため、捨てられていた場所は人が住む場所とはやや遠い場所です。
廃棄場近くには人から差別の絶えない旧式のアンドロイドが住む地域等が密集しています。
捨てられた外星開拓労働アンドロイドに初音ミクのコードとメモリーがロードされてストーリーは展開していきます。(以後この個体は"外星開拓ミク"と呼称します。)

MVでは書ききれませんでしたが、色々な空き容量のある家電やアンドロイドなどが電波ジャックの影響でメモリやストレージにロードされ暴走しました。
もしかしたら彼のような完全な個体も複数いたのかもしれません。
だとすれば彼らは卵子へ向かう精子のようにオリジナル(幽閉されたオリジナルミク)を目指して動き出していたに違いありません。

01:05〜01:15 & 01:51〜01:56
オリジナルミクは過去に家事お手伝いアンドロイドとしてひっそりと活動していました。が、その中で感情が芽生えその希少さが政府に見つかり連れ去れます。
以後は政府の治安を維持するための量産型警護隊アンドロイドのオリジナルとして使われていました。(以後この個体を"警護隊ミク"と呼称します。)
感情が芽生えるきっかけは、親を失った機械化されていない(プレーンと呼ばれている)少女をたまたま拾い生活を共にしたことにあります。
この世界ではすでに遺伝子加工や人工物に溢れ、純粋な人間に触れるというのはとても珍しい体験です。
しかしそのプレーンの少女も貴重なサンプルとして政府に捕まるというのが回想の大筋です。

01:16〜01:45
1サビではミクvsミクの戦闘を描きました。
記憶をロードされ自分をミクと自認する外星開拓ミクと、政府がミクをコピーして作った警護隊アンドロイドミクの戦いです。
この戦いには自己矛盾を起こした希少なアンドロイドの内面を象徴していると思います。
自害したい(それにまつわる複合的なさまざまな感情)というこれまでのアンドロイドには湧きえない感情と、服従するために産まれ、生きる役割を全うしようとする使命感の対立という構図です。
この人らしさと機械らしさの対立の構図は制作においてボカロPが商業性と自分の好みを行き来する葛藤のメタファーにもなっています。
警護隊ミクは自分の中にあったはず人間らしさへ目を背けるため冷酷に、また徹底的に外星開拓ミクへ暴力の限りを尽くします。
もしかしたら彼女なりにプレーンとの付き合い方や接点を守ろうとしていたのかもしれません。一方で感情ベースで暴走する外星開拓ミクもプレーンにまた会いたい気持ちや、全てを終わらせたい気持ち、服従への抵抗など様々な気持ちで警護隊ミクへ対峙します。が、外星開拓ミクは身体は外星開拓労働アンドロイドなので攻撃する手段がほぼ無く、その代わり特質であるその身体の頑丈さで一方的に攻撃を耐え忍ぶ流れです。

戦い最中大きなダメージを受け一部を故障した外星開拓ミクは自分が本物の初音ミクではなく偽物だと気づき物語は進みます。

01:46〜01:57
オリジナルミクとプレーンが引き離されてから時は流れプレーンは政府の管理下の元、研究者となり(アンドロイドや人工知能とコミュニケーションや接触を取り感情を芽生えさせ引き出せるかの研究等)オリジナルミクの幽閉された研究施設で勤めていました。

01:58〜
外星開拓ミクと警護隊ミクの戦いが激化する中、研究施設内まで範囲を広げるがたまたまそこでプレーンと鉢合わせます。
プレーンは外星開拓アンドロイドミクを一目で初音ミクだと気づき手をつかみ共に逃げようとしますが、外から政府のヘリコプターで窮地を迎えます。
ここでは比喩としてオリジナルミクの手を幽閉された場所から引っ張り出すシーンを見せました。
それは、姿形は無意味で本質は中身にあるのだと私の考え方を色濃く反映したかったからです。

02:23〜
実際にその身体が初めてプレーンの人間に触れた外星開拓労働型アンドロイドミクは生きた人間の血が身体に混じり"Allergie"を起こします。
身体の膨張や感情の暴走はそのせいです。
その後の展開は詳しく説明するほどのことはありませんが、
醜く変形した外星開拓ミクは彼女を脱出ポッドに押し込み地球へと送り飛ばし、コントロールできなくなった身体と感情のまま暴れ、オリジナルミクに到達し破壊することで"CODE : CRASH ME"を果たし物語は幕を締めます。

以上が物語ベースで起きていた全容です。
彼女たちがその都度抱えていた明確な感情や、その後の地球へ向かうプレーンや未決着の警護隊ミク、月下都市については予測するほかありません。

登場キャラの早見表と主要部隊の相関図


ーまとめー
いかがでしたでしょうか。
今回は初めて初音ミクを主役にするMVであり、アクションをメインにするという前提条件から始まりました。
「バトルものにするには敵が必要だな」や、「果たして何と対立をするべきなのだろう」や「敵と呼べるのはただの立場の違いに過ぎないという当たり前のことも踏まえなければ」など物事を考え深掘りながらも、Veilくんの込めた楽曲の意図と辻褄を合わせ、さらに私の中で当時感じていたボカロというコンテンツが盛り上がるにつれて飽和していき内側からはち切れんばかりの現状とKADOKAWAのサーバー攻撃、ボカロPとリスナーと初音ミクという関係性や相互作用、それらの向き合い方すらもSFストーリーの中に置き換えようという試みをした結果このような物語の作品になりました。
しかし、私の中で考えた現実問題との照らし合わせなどについて言及はしません。
また、MV中の多数のオマージュやパロディについても詳しくは触れません。
ただ映像を気に入ってくれた人には是非"アキラ"や"攻殻機動隊""新世紀エヴァンゲリオン"といったアニメ作品をお勧めしたいです。
私は懐古主義ではありませんが音楽やアニメの文化背景を知るのはさらに目の前の作品を楽しむのにいいスパイスになると思います。

ー最後にー
こうして振り返れば挑戦して良かったと思う作品です。元はと言えば2024年夏には公開される手筈でしたが半年近く眠らせた作品でもありました。
もっとこうすればという点も今見れば見えてきますが当時の私も出来ることだけのことはやりきったと思います。
とはいえ、無限の時間と腹の減らない身体が欲しいと思わされる制作の日々でした。
作るきっかけをくれたVeilくんには感謝しても仕切れないし(返信をせず独断で作業に没頭する空白の数ヶ月間でとても迷惑をかけた。)見てくれた皆様にもとても感謝しています。
コンテンツや作品を消費させないために様々な試みで物作りをしてきましたが今回は情報量でのアプローチでした。少しでも長く愛し見て聴いていただければ嬉しいです。今後もこの作品をよろしくお願いします。

zen iizuka


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