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農業のジレンマが産む、野菜の栄養価減少。「良いエクソソームの循環」が解決の光となる【エクソソームが世界にもたらす大革命】#3

エクソソームが世界にもたらす大革命」をテーマにしたシリーズ、前回は「エクソソームの種類と質」について解説しました。

第三回は、土壌環境と農法がエクソソームに与える影響について、栄養学の観点から解説します。

※本記事は、ベジタブルテック(株) 代表取締役 岩崎の動画のリライトです。栄養学の観点からエクソソームについて解説しています。動画はこちら


環境がエクソソームに与える影響とは?

食品は「誰が育てたのか」「どのように育てられたのか」が非常に重要です。これは食の安心安全、トレーサビリティの問題です。

エクソソームで食品のトレーサビリティも証明できる

食品のトレーサビリティとは、「誰がどこで作り、どのように育てられ、どのような流通経路を経て、消費者の元に届いているのか」を追跡できることです。この情報を隠したがる場合、劣悪な環境が存在している可能性が高いです。
この情報を開示できるかどうか。今後、食品のトレーサビリティもエクソソームで証明できます。エクソソームの数や中に含まれる「積荷」の内容によって、育て方や流通の質を客観的に評価できます。
その食品が、本当に良い育て方・良い流通を経てきたことが、エクソソームで証明することができるのです

これまでは「良いものを食べよう」と言われても、「良いって何?」という疑問が残っていました。今後はエクソソームの観点から、客観的な評価が可能になります。

そうすると、超加工食品(※)にはどのようなエクソソームが含まれているのでしょうか。このようなことも、今後の栄養学で注目される点です。

※超加工食品
風味や色など、全て科学的に調合して設計して作られた食品。基本的に原材料のコストを下げるために添加物を多用し、脳を錯覚させることで、おいしく感じさせている。

サプリメントにはエクソソームが含まれていない

今までは「野菜が食べられないならサプリメントでいいよね。1つの成分だけだけど」と言われたとしても、野菜の代わりにはならないことをみんな感覚的に知っています。

では、なぜサプリメントは野菜の代わりにならないのか?

サプリメントはエクソソームを含んでいないないからです。生き物を食べることが細胞に与える影響は、非常に大きいのです。

良いエクソソームの循環が革命をもたらす

近年、私たちが食べているものは、「食材という生命体から、物質としての食品という加工物」へ変わりつつあります

食品を生命として扱うか。物として扱うのか。

もしかしたらこの違いが、これからの人間の健康を切り開くのかもしれません。これまでの生産性や合理性の発展をもう一超えて、本当に動植物の命を尊重した食品・食材を得ていくことが重要です。他の動植物の健康を考えることで、良いエクソソームが体内に入るわけです。

そのような良いエクソソームの循環が、これからの食事市場・健康市場に革命を起こしていくでしょう。

「土・農作物・人」はエクソソームでつながっている

ここまで、食事性エクソソームについて説明してきました。

植物は土に根を張り、土壌の微生物が出すエクソソームも吸収しています。土の中では、微生物と植物の間で生命体の情報伝達が行われており、私たちにも影響を与えています。みなさんご存知の通り、農業で土づくりが極めて重要なように、土は非常に大事です。

土の中には非常にたくさんの菌が存在しています。人類よりも圧倒的に数が多く多様な微生物が存在し、土の中で和をもって生きています。そして植物は、微生物の生育に適する環境を整えています。生育環境が良ければ、微生物のエクソソームの質も良いものになるので、植物の育ち方が変わります。

土から始まる生命体の情報が、人にも影響している

土の状態が植物の状態に影響し、植物の状態が動植物にも影響を与え、そして私たちの体にも影響します。土から始まる生命体の情報が、私たちにも影響しているのです。

微生物から始まち、エクソソームを通じて各細胞がレシピエントになり、それが次のドナーへと、我々までつながるわけです。ですから「土を食べたらいい」のでもなく「植物を食べたらいい」でもなく、土から始まる植物、そして動物、我々という、この1本串のストーリーが極めて重要です。

化学肥料や農薬を使い続けると土壌菌は失われる

土の微生物や土壌菌を測定して数が少なければ、その土は栄養状態が良くないので、種を撒いても育ちが悪く、農作物の収穫量は減ります。
生産量が少ないと儲からないので、何をするかというと、化学肥料を入れるわけですね。これはこれで助けられた時代もありましたが、土壌に化学肥料を入れることは菌に頼らないという方針でもあります。

更に収穫量を増やそうとすると、育てた農作物に虫食いがあったら困るし、疫病が流行るのも問題があるので、農薬を撒くわけです。

農薬は虫や菌を殺すものですから、当然、土壌菌は減ります。
土壌菌が減って土の栄養が減るので更に化学肥料を利用し、農薬と化学肥料を使い続けるループに入ると、最初の出発点である土壌菌は失われてしまいます。これは農法を否定する話ではなく、あくまで栄養学的に見た場合にこのような構造になっているということです。

近年、農作物の栄養価は大きく減少

実際、土壌と植物の状態と農作物の栄養価を調査した研究報告も、数多く発表されています。いくつかご紹介します。

1.約50年で「43種類の農作物」の栄養価が減少

栄養科学の革新的な研究を掲載している学術誌「Journal of the American College of Nutrition」によれば、1950年から1999年にかけて、43種類もの農作物の栄養価が減少していることが報告されています。
また、2050年までにジャガイモや小麦に含まれるタンパク質が6~14%失われることも予測されています。

2.約60年間で小麦のたんぱく質が23%減少。ミネラルも激減

自然科学の研究論文を扱う学術誌「Scientific Reports」によれば、1955年から2016年の間に、小麦に含まれるタンパク質が23%減少していることが報告されています。更に、マンガン・鉄・亜鉛・マグネシウムなどのミネラルも顕著に減少していると発表しています。

このように、土壌の変化が農作物の栄養価を下げていることが数多く報告されています。

農業が抱えるジレンマ

農作物の栄養価減少には、収穫量を増やす農法が関係しています。

収穫量を増やして生産量を増やせば、当然出荷数も増えます。虫食いのないように、農作物が大きく育つように、農薬を撒いて雑草や菌が繁殖しないようにするわけです。更にたくさんの農作物を育てようとすると、土の栄養が足りなくなるので、化学肥料を多く使うことになります。

大量生産には農薬・化学肥料が必要

このように農作物を大量生産するには、農薬・化学肥料の2つが必要です。そしてこれらによって土壌の微生物は減少し、農作物の栄養価が低下します。土壌内の菌や微生物を無視した農法では、農薬と化学肥料を大量に使い続けることが不可欠になるわけです。

そして生産量を増やすと、当然規格内になる形の野菜を作ることになるので、どうしても規格外の廃棄野菜がでてしまいます。「農作物を作っても、すべてが流通するわけではない」という無駄が発生し、結果的に大量生産がまた必要になるというジレンマがあります。

土壌菌が減ると、農作物の栄養価も減ってしまう

植物は生き物なので、土の中にある栄養を奪い合うことになります。
土の中の菌が少なければ、菌が放出するエクソソームは植物に伝わらなくなります。外因性エクソソームがない状態で育てられた植物は、外部から得られる栄養が少ないので、人工肥料によって見た目は大きくても、エクソソームの質や量は変化してしまいます。

その結果、「農作物の栄養成分が低い」ことにつながっていると考えられるのです。

このように、土壌の菌を無視した農法では、栄養の少ない農作物が増えてしまいます。栄養成分だけでなく、植物・農作物が、菌のエクソソームの影響も伝達されているからです。

「微生物・動植物などが健康的に生き、その情報を人に伝えてくれるか」が、本当の栄養学になってきます。

栄養の循環も環境や生物の健康も、「エクソソームがないとダメ」ということがポイントです。次回は、エクソソームの循環と食事性エクソソームの摂り込み方について解説します。お楽しみに。