マイクロRNAとは?簡単に分かりやすく解説。遺伝子の働きを制御し、細胞の変化に作用する司令役
先日、2024年のノーベル生理学・医学賞に、アメリカ・マサチューセッツ大学のビクター・アンブロス教授と、ハーバード大学のゲイリー・ラブカン教授が選ばれたことが発表されました。
マイクロRNA発見の功績が評価された、今回のノーベル賞授与。
みなさん、マイクロRNAとは一体なにか、ご存知ですか?医学と栄養学にとって大注目なものなんです。
そこで今話題のマイクロRNAについて、簡単に分かりやすく解説します!
マイクロRNAとは?細胞に命令を与える司令役
マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子の働きを制御する役割を持っており、細胞に命令を伝える司令役のような存在です。細胞の発達や機能の発揮において、根本的に重要な「細胞命令成分」と言えます。
マイクロRNAは、細胞に良い影響も悪い影響も与え、様々な変化を引き起こします。DNAの95%の領域から放出され、数千種類存在すると言われており、マイクロRNAの組み合わせや、栄養バランスなどの組み合わせによって細胞は変化します。
マイクロRNAは遺伝子レベルで細胞に作用する
私達の体は無数の細胞からできており、細胞内にあるDNAが遺伝情報を保持しています。遺伝情報は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写(コピー)され、その情報を元にタンパク質が作られます。
マイクロRNAはこのメッセンジャーRNAに結合し、その働きを制御します。例えば、細胞の癌化や転移にも関わりますし、細胞の老化を早めたり、抑えたりします。細胞の機能回復や向上、細胞の修復にも影響を与えます。
このように、マイクロRNAは遺伝子レベルで細胞に作用するので、その強力な影響力から医療や栄養学の分野で注目されているのです。
食事や運動でマイクロRNAの働きは変わる
マイクロRNAは、私たちの体内で絶えず変化し、細胞の状態を動的に調整しています。細胞がどのように変化するかは、マイクロRNAの種類や栄養バランスなどによって決まります。
マイクロRNAの種類と組み合わせは、細胞の状態によってダイナミックに変化することもわかっており、運動や食事・精神状態によっても細胞は変化します。
食事から摂取するマイクロRNAの影響
人間だけでなく、魚や動物、野菜や果物なども、マイクロRNAで細胞をコントロールしています。私たちは生物を食べることで、マイクロRNAも摂取しています。
マイクロRNAはエクソソームに包まれて体内に吸収される
動植物(細胞を持つ生き物)を食べた場合、食物由来のマイクロRNAは、エクソソーム(※)という小さなカプセルに包まれて、体内に吸収されます。
食物由来のマイクロRNAは、消化管でも壊れることなく吸収され、体内で機能することが証明されています。
※エクソソームについては、こちらの記事をご覧ください。
研究報告例:食事から摂取するマイクロRNAの影響
いくつかの研究で、食物由来のマイクロRNAが健康に影響を与えることが示されています。
例えば、「牛乳由来のエクソソーム内マイクロRNAが、腫瘍抑制効果を示す」(Otsuka K et al. Mol Nutr Food Res. 2018;62)や「ブドウのマイクロRNAが大腸炎を抑える」という研究報告があります(Songwen Ju et al. Mol Ther. 2013)。
また、「母乳から赤ちゃんへもマイクロRNAが伝わる」ことがわかっています(Jeffrey D. Galley and Gail E. Besner. Nutrients. 2020 Mar; 12(3): 745. )。
更に、食事から摂取したマイクロRNAは、保存や加工・調理によって減ることがなく、消化管に入った後も、比較的高い生物活性を維持することも証明されています(Philip A et al. Mol Nutr Food Res. 2015;59:1962–1972. )。
私達の体は、食物からDNA命令を受け取っている
つまり、私たちは、食物からもマイクロRNAを食べており、細胞を変化させられているんです!食生活がなぜ大事か?人類はいよいよ核心に迫ってきました。
動植物(細胞を持つ生き物)を食べることで、私達はエクソソームを介してマイクロRNAを体内に取り入れている
エクソソーム(マイクロRNAを含む)は生物からしか得られない
人工成分(薬剤や合成物)にはエクソソームはない
マイクロRNAは細胞を(良くも悪くも)変化させる
食物由来のマイクロRNAから、食生活が健康にとって非常に重要なことが証明されてきているのです。