昔の人は「薬味」を健康に取り入れていた!?
薬味と聞くと、料理に香りを添えたり、味を引き立てる存在として思い浮かべる方が多いでしょう。そんな名脇役のような存在の薬味が、実は名前の通り「薬」のような役割を果たしてきたことをご存じでしょうか?
健康維持に役立てられてきた薬味
昔の日本では、現代のように医療や公衆衛生が発達しておらず、感染症や病気が非常に身近で、健康を守ることが日々の重要な課題でした。そのため、人々の健康に対する意識は高く、さまざまな工夫がされていたのです。
1.ウェルカムドリンクの香煎
例えば、体調が悪くなったとき、遠方に住むお医者さんを呼びに行くのは一大事。山を越えてやってきたお医者さんを家に迎えると、最初に振る舞われたのが「香煎」(こうせん)と呼ばれる塩入りのお茶でした。
運動で汗をかくと、脱水だけでなく塩分も失われ、低ナトリウム血症を引き起こします。香煎は、汗で失われた水分と塩分を補給し、体調を整えるためのウェルカムドリンクだったのです。
現代でも、運動後の水分補給だけでなく、適度な塩分補給が重要とされていますが、昔の人の先見の明と知恵には驚かされます。
2.温泉旅館の梅昆布茶
また、温泉旅館などでよく用意されている梅昆布茶も、実は古くから医療的な意味を持っていました。温泉で汗をかいたり、リラックスして体温が下がったりした後、梅昆布茶を飲むことで更に発汗を促し、身体を冷やして体温調整を行っていたのです。
香辛料や唐辛子は、身体にとりいれることで汗をかき、体温を調節することができます。牛丼屋さんの紅生姜や、レストランにおいてある塩コショウもまた「薬」味だったのです。
3.強力な薬だった砂糖
昔のお医者さんは、「印籠」(いんろう)と呼ばれる小さな箱に、コショウなどの薬味や薬を常備して持ち歩いていました。携帯用薬入れですね。
当時は砂糖も薬として扱われており、幸福感を高めたり精神をリフレッシュさせる効果が期待されていました。ただし、当時は「砂糖は中毒性が高い強力な薬」と見なされていたため、一般の人々が簡単に手に入れることはできず、医者だけが取り扱うことが許されていたのです。
このように、薬味を用いた知恵が昔から日本にはありました。
野菜を粉にして持ち歩くことができ、健康を支える「飲む粉野菜」もまた、この文化の流れを受け継いだ「現代の薬味」と言えるのかもしれません。