バランスのよい食事の基本。まずは食品のカテゴリーを学ぼう|食の大切さと身体への影響 #1
これまで「栄養学を通して、自然環境や体の仕組みに触れることができる」とお伝えしてきました。今回のシリーズ記事では、食品の分類と、食べ方が体に与える影響について、実践的な方法と食べる順番について詳しく解説していきます。
※本記事は、ベジタブルテック(株) 代表取締役 岩崎の動画のリライトです。栄養学について解説しています。動画はこちら。
前回の振り返り
前回は、地球の資源から始まる「三大栄養素」の成り立ちについてお話しました。二酸化炭素・水・太陽の力によって「炭水化物」が作られ、その炭水化物を濃縮保存したのが「脂質」です。そして、空気中で一番多い成分である窒素が雨や、雷を通して大地を循環し、「タンパク質」が生まれる過程を説明しました。
五大栄養素=三大栄養素+ビタミン+ミネラル
栄養成分の三大栄養素に、ビタミン・ミネラルを加えたものが「五大栄養素」です。ビタミンやミネラルについては、別の回で詳しく説明します。
この五大栄養素をうまく摂取することで、生命活動を維持し、様々な状況にあわせたパフォーマンスを発揮することはできます。栄養学は、こうした食べ方を追求し、科学的に型証明してきた学術分野です。
今回は、これらを踏まえて、食品のカテゴリー分類と、食べ方による体への影響について深堀りします。
食品の栄養学と身体の栄養学
世の中にはたくさん食品があり、「この食べ物にはこんな成分や効果がある」という情報がありますが、こういったものは食品の栄養学、あくまで食品の説明なんです。
私たちの栄養の必要量は、生活スタイルや体調に応じて変化します。
例えば、デスクワークや肉体労働、サッカー選手とマラソン選手では必要な栄養が異なります。これが「身体の栄養学」で、目的に合わせた食品を選ぶことが重要です。つまり、「食品の栄養学」と「身体の栄養学」をうまく組み合わせることで、より効果的な食事が可能になります。
食品カテゴリーマップを活用しよう
では、自分にあった食品を選ぶにはどうすればいいか。
食品に特に多く含まれている栄養成分を「主成分」と言い、この主成分を知るところから始まります。
あらゆる食品は、7つのカテゴリに分けることができます。これは「食品カテゴリーマップ®」と言うツールです(※一般社団法人 日本栄養コンシェルジュ協会 作成)。
食品の主成分と、身体に働きかける影響に基づいて、食品を7つに分類しています。「食品カテゴリーマップ®」は以下から無料でダウンロードできます。累計3万ダウンロードされており、医療やフィットネス施設などで広く利用いただいています。
では、それぞれのカテゴリを詳しく見ていきましょう。
カテゴリー1「主食」(デンプン・糖質)
カテゴリー1は、主食にあたる食品です。成分としてはデンプンと呼ばれる糖質が主体です。お米、パン、麺類、イモ類、かぼちゃなどがこれに当たります。大豆以外の豆類もここに入ります。グリーンピースもデンプンなので、このカテゴリーです。緑色なのに、野菜ではなく主食なんです。
これらはエネルギー源となる糖質を提供します。しかし、例えば「山かけそば」のように、そばと芋を一緒に食べると、実はどちらもカテゴリー1の食品なので、糖質を摂りすぎる可能性があります。
同じカテゴリに含まれるのは、同じ栄養成分の食品と考えることができます。ですので、同じカテゴリーの食品ばかりだと栄養が偏ります。
カテゴリー2「主菜」(タンパク質+脂質)
カテゴリー2は、タンパク質と脂質を含む食べ物で、さらに「植物性か動物性か」という脂の種類によって5つのサブカテゴリに分かれます。
2-A:大豆製品(納豆、豆腐、豆乳など)。植物性のタンパク質と脂質を含む
2-B:イカ・タコ・カニ・貝類など。脂質は少ないが、コレステロールやプリン体が多いので、コレステロール値や尿酸値が気になる方は注意
2-C:魚類。「多価不飽和脂肪酸」という良質な脂はこのグループ
2-D:鳥類(鶏肉・卵など)
2-E:四本足の動物(牛・豚・鹿・羊など)、ハムやソーセージなどの加工食品も含む
2-Dと2-Eには動物性脂肪が含まれるので、摂り過ぎに注意が必要です。肥満や生活習慣病のリスクになります。
このように、カテゴリー2は5段階に分かれています。Aほど脂の量が少なく、順番が進むほど脂の量が増えていきます。簡単に言うと、A・B・Cの中から選んでいくと、ダイエットや健康管理にはいいと言えます。部位によってはEもいいでしょう。フィレ肉や赤身肉は、脂の量も少なくなります。
カテゴリー3「副菜」(食物繊維+ビタミン+ミネラル)
カテゴリー3は、副菜です。きのこ、海藻、こんにゃくといった食品が含まれます。主成分は食物繊維です。人間は消化することができないので、カロリーになりません。大腸まで移動してウンチの材料になり、腸内環境を整える効果があります。ビタミンやミネラルも豊富に含まれており、よく「食べましょうね」と推奨される食品です。
カテゴリー1・2・3がそろうと、糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルに食物繊維も摂れるので、五大栄養素をほぼカバーできます。これらをバランスよく食べることが、基本的な食事管理です。
では、カテゴリーの4・5・6・7は何かと言うと、食べなくてもなんとか生きていくことができる食べ物です。なぜなら、五大栄養素は1・2・3でそろうからです。4・5・6・7を食べるメリットもありますが、場合によってはデメリットもあるので注意して食べないといけません。
カテゴリー4「乳製品」
カテゴリー4は乳製品です(ミルクやチーズ、ヨーグルトなど)。栄養価の高い乳タンパク・乳糖・乳脂肪や、ビタミンやミネラルも含まれています。赤ちゃんがミルクを飲んで成長するように、非常に栄養価が高いことがわかります。乳製品は栄養価が高い一方、乳脂肪も多いので、ダイエット中は注意が必要です。大人がカテゴリー4を食べ過ぎると、お腹に脂肪がつき、横に成長してしまうこともあります。
カテゴリー5「多脂性食品」(脂質)
カテゴリー5は、多脂性食品という脂を主体とした食品です(ごま油やオリーブ油、マヨネーズ、ナッツ類、アボガドなど)。食べ過ぎると肥満の原因になります。持久力が必要な時は、皮下脂肪として適度に脂質を蓄えていると持久力につながります。
カテゴリー6「嗜好食品」(果糖含有)
カテゴリー6は、嗜好食品、砂糖や果糖を含む食品に分かれています(スイーツやジュース、果物など)。甘くておいしいので、精神安定であったり、運動時のエネルギー補給にも非常にいい商品です(果糖は、筋肉に入ってすぐエネルギーとして活用できます)。ただし、運動不足の人がデザートやおやつを食べ過ぎてしまうと、甘味の強い果糖は内臓脂肪になりやすいので、要注意です。
カテゴリー7「アルコール」
カテゴリー7は、飲んだ直後から効果を発揮するアルコールです。
このように食品を主成分で分け、7種類で考えると、食品の選び方のハードルが下がると思います。
同じ糖でも太り方が全く違う
食べ物を選ぶ際には、カロリーだけでなく、「どのカテゴリーに属するか」も重要です。例えば、カテゴリー1のデンプン質(ご飯やパン)は、体内で血糖と呼ばれるブドウ糖に変わり、エネルギーとしてすぐに使われます。
ブドウ糖は、糖質の中でも血糖値として常に一定レベル以上にしておかないと、低血糖で意識が朦朧とし、場合によっては昏睡したり、最悪の場合は命に関わります。この血糖値になるデンプン質は、カテゴリー1の食材から効率よく吸収できます。
一方、カテゴリー6の果糖(果物やスイーツ)は、内臓脂肪として蓄積されやすく、同じカロリーでも太り方が大きく異なります。
果糖はブドウ糖の「3倍」の内蔵脂肪がつく
2009年の研究で「種類の異なる糖を摂り過ぎた場合、同じように太るのか」という実験があります。ブドウ糖と果糖、それぞれ200kcalオーバーさせて食べた場合、カロリーは同じです。
ブドウ糖(カテゴリー1)と果糖(カテゴリー6)、カテゴリーが違うと、太り方に違いはあるのか?
なんと実験結果では、果糖はブドウ糖の「約3倍」もの内臓脂肪が蓄積されることがわかっています。
これは非常にショッキングな結果です。例えば、「主食のご飯を100kcal減らして、代わりに甘いデザートを100kcal食べよう」とした場合、カロリーは見かけ上同じなので大丈夫と思いますよね。
しかし、お腹周りに対する影響力は、果糖はブドウ糖の3倍です。ご飯を減らしても同じ量のデザートを食べたら、おなかが出てきちゃうんですね。
なので、ご飯を減らして甘いデザートを追加する場合は、デザートの量を3分の1にして初めてカロリーのインパクトが同じになります。デザートを追加する際は量を減らさないと、脂肪が増える原因になりやすいのです。
健康的な食生活のために食品のカテゴリーを意識しよう
ということで、カロリー管理も大切ですが、食べ物のカテゴリーを意識することが、健康的な食生活には不可欠です。カテゴリーのバランスが変わると、カロリーの数値だけでは語れない影響が出てしまいます。食品カテゴリーマップを活用した、カテゴリーの管理が大事です。
食品の内容を理解し、自分にあった食べ方をすることが、健康維持や体型管理には効果的です。次回も引き続き、食べ方が体に与える影響について、実践的な方法と食べる順番について詳しく解説していきます。お楽しみに。
P.S.「バランスのよい食事を食べたい&作りたい」という方は、初めての方でも基礎から栄養学を学べる「栄養コンシェルジュ」がおすすめです。
オンラインの通信講座もあり、忙しい社会人の方にもぴったり。今回ご紹介した「食品カテゴリーマップ」の使い方も詳しく学べます。
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