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【レポート】音楽の空間デザイン「Songs for 異人池建築図書館喫茶店」 2024.11

複数の音楽/スピーカーを使った空間デザイン。

新潟県新潟市にある、建築設計事務所「EA Research and Design Office」が企画運営する「異人池建築図書館喫茶店」の音楽を担当しました。


「異人池」「ケヤキ」「どっぺり坂」

音楽の全体コンセプトは「異人池」「ケヤキ」「どっぺり坂」。

異人池建築図書館喫茶店の近隣にかつて存在した「異人池」。
この絵本は池の発生から無くなるまでのおよそ100年を描いた物語。
窓から見える印象的なケヤキ。
建物の隣にある「どっぺり坂」。40mほどの長い階段の坂道。

異人池の成り立ちや周辺環境から着想を得て、7曲制作。

心地よい静けさを感じられる、有機的な音楽空間を作りました。

新潟市の音を楽曲に取り込む

今回、カトリック新潟教会で録音したパイプオルガンの音や教会の鐘の音、窓から見えるケヤキのざわめき、どっぺり坂を走る足音、寄居浜の海の音、西海岸公園の鳥の声、古町商店街の雨音など、異人池建築図書館喫茶店にゆかりのある周辺の環境音を楽曲内に散りばめました。

カトリック新潟教会

チューリッヒ出身の建築家マックス・ヒンデル氏の設計によって、1927年に献堂された教会。ロマネスク様式を取り入れた和洋折衷の木造建築。

異人池があったころのカトリック新潟教会。

日曜日のミサに参加し、教会のパイプオルガンを特別に演奏・録音させていただきました。このオルガンは1929年に設置され、空気アクション式パイプオルガンとして、日本で現役として使われている最古のもののひとつとのこと。楽曲内には実際に演奏した音を取り入れています。

1929年設置。手鍵盤1段、足鍵盤5ストップ。ドイツ・パーテルボルン市 Anton Feith社製作。

また、教会内で反響する雨音や12時に鳴る鐘の音を集音。

寄居浜

寄居浜では、岩の間で反響する波の音を録音。

西海岸公園

西海岸公園の森の中では鳥の声や海風で木々のざわめく音を録音しました。

ケヤキ、どっぺり坂

窓から見えるケヤキがざわめく音や、どっぺり坂を走る子どもの足音、落ち葉を踏みしめる音を録音。楽曲内に散りばめています。

古町商店街

路地裏の折り重なる屋根に変則的に降る雨音をパーカッションのように組み込んでいます。

また、古町商店街の通り過ぎる人や車の音を楽曲の背景音として使用。

本棚上段スピーカー+小型スピーカー9台​

本棚上段のスピーカーと店内に点在させた小型スピーカー9台から7曲を再生。それぞれの曲はズレ続けながらも調和し合い、いる場所によって聴こえ方がグラデーションのように変化します。

<#1 / 本棚上>

ピアノ、カトリック新潟教会で録音したパイプオルガンや鐘の音、教会内の空間の音を使用。神秘的なピアノの旋律や、教会で歌われているミサの曲を再解釈したオルガンのフレーズを入れた楽曲。鐘の音は1時間ごとに時報的な機能として鳴ります。また、#2と#3の楽曲要素の一部をミックスしました。​

​<#2 / カウンターテーブル下>

石琴、木琴、マリンバ、どっぺり坂を走る足音や石が転がり落ちる音を使用。レンガ造を音楽で表現した、深淵な楽曲。

​<#3 / 柱前>

アコースティックギター、窓から見えるケヤキの葉や枝が風で揺れる音を使用。周期的に鳴る和音と環境音を組み合わせた、静謐な楽曲。

​<#4 / トイレ>

ピアノ、オルガン、マンドリン、アコースティックギター、シンセベース、バイオリン、パーカッションなどを使用。どっぺり坂や窓から見えるケヤキを音楽で表現。不規則な静けさと動きを組み合わせた、少し神秘的な楽曲。

​<#5 / 階段上・柱前>

寄居浜の波の音やマリンバ、クラリネットを使用。石がコロコロ動いたり、風が吹いている様子を音楽で表現した楽曲。

​<#6 / 本棚下>

新潟市の西海岸公園の森で録音した、鳥の鳴き声や木々のざわめき、アコースティックギターのハーモニクスやアルペジオを使用。森林の静寂さを音楽で表現した楽曲。

​<#7 / 本棚下>

西海岸公園の森で録音した、鳥の鳴き声や木々のざわめき、古町商店街の雨音、アコースティックギターのアルペジオ、様々なパーカッションを使用。森のざわめきを音楽で表現した楽曲。

EA Research and Design Office、異人池建築図書館喫茶店、カトリック新潟教会の皆さま、ご協力いただきありがとうございました。

<2024年11月22〜24日 異人池建築図書館喫茶店にて>

撮影(建築内部):藤井浩司(TOREAL)