【ベガルタ】来季も関口と共闘したいがための、決死の予算シミュレーション
先日、ベガルタ仙台を長きに支えた関口選手の契約満了が発表されました。
今月36歳を迎える関口選手ですが、
アジリティもドリブルも未だ健在、直近3シーズンでリーグ戦80試合に出場し、ピッチの内外から持ち前の明るさと負けん気でチームを鼓舞し続ける姿はまさしく「柱」でした。
事実上の降格が決定した湘南戦のホイッスルの後、涙を流しうつむきながらピッチを一周する姿に、もしかしたらもっともっとその前から、「背負わせてしまってごめん」と呟いたサポーターも数多いと思います。
だからこそ、「22年も関口選手と共に闘い、もう一度J1へ昇格するんだ。ユアスタで関口ガガンガンだ。」と、そう思っていました。
私も、きっとみんなも、そしてきっと関口選手も…
貧乏か?貧乏が悪いのか?
年齢感じさせないやん。見た目も声も若々しいやん。
3年間でリーグ戦80試合に出る精神的支柱のバンディエラやぞ?
補強の目玉でやってきた高給取りのキュラソー代表じゃないんだぞ?
関口選手の年俸が2,000万だか3,000万だか知らないけど、代わりに年俸1,000万の選手取ってコスト下がりましたお財布厳しいもんでねって、だとしたら本当にそれでいいんか?
なんて思ったりもしたんですが、
ちょっと感情的すぎた気もするので、とりあえずベガルタ仙台のお金周りを整理したうえで、22年度予算をシミュレーションしてみます。
一応、経営企画職(営業のみんなが稼いできた貴重なお金で社長と数字遊びをする仕事)として会社の予算編成なども行っているので、多少はそれらしくできるんじゃないか。私はベガルタ仙台の経営企画、と思い込んでやってみます。
本件については、りゅうたさん(Twitter:@ryu___)のブログが先行者として、もの凄いスピード感でブログを上げられております。ご紹介の許可をいただいたのですが、アウトプットのスピードが速いのすごい。
私めっちゃ時間かかった。
ちなみに、私自身はベガルタ仙台や出資会社・スポンサー様と全く関係なく、ましてや「選手と忘年会」なんてできるわけない立場なので、公開された情報や報道を頼りに作成しています。
現状認識
予算を策定する上で、まず「収益・費用の構造」を整理しましょう。
「どの数字を見るべきか」が明確になります。
ベガルタ仙台の会計年度(FY:Financial Year)は2月-翌1月で、FY21は実績未確定のため、FY21予算を基に見ていきます。
(以下、断りない限り単位は百万円)
まず、ベガルタ仙台の「本業の収益」を表す「営業収入」のFY21予算です。
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FY21の営業収入予算は18億62百万円でした。
構成比をみると、「ベガルタ仙台の収益の柱」が分かります。
「広告協賛」(56%)
「分配金」(20%)
「入場料」(13%)
この3項目で収益の9割近くを稼いでいることになります。
予算をシミュレーションする際も、「この3項目の成長率の設定」が大事になります。
続いて、
ベガルタ仙台の「本業の費用」を表す「営業費用」のFY21予算です。
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FY21の営業費用予算は22億8百万円でした。
これも構成比をみていきます。
圧倒的に「トップチーム経費」(59%)が大きいですね。
営業利益 △3億46百万円とある通り今期は赤字予算です。コロナ禍で収益が厳しい中、何とかJ1に居続けるための予算でしたが、結果は痛恨…
「税前利益」まで見るとこんな感じ。
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税前利益と営業利益がほぼ一緒ですが、ベガルタ仙台は基本的に本業(営業利益まで)で数字を作る会社です。
ちなみに、イニエスタ選手要するヴィッセル神戸は、
営業利益△51億円の赤字を、特別利益52億円でカバーしました。すごい。
赤字ってやばいんじゃ?
って思う人もいるかと思いますが、単年度で赤字だからって倒産するわけじゃないです。(黒字に越したことはないですが)
例えば「私」が、
酒だギャンブルだキャバクラだユアスタだと収入以上に豪遊して、
その年は赤字だったとしても、私には貯金があるからクレジットカードの請求だってどんとこいです。
でも、その後毎年のように酒だ(略)と豪遊して貯金を食いつぶしてしまったら、もうお金は払えません。家や株を売ってもクレジットカードの支払いができないぞ、困ったな…。
これが、今ベガルタ仙台が陥っている債務超過です。
もう資産(銀行預金、選手の保有権、クラブハウス、練習場など)をすべて手放しても、負債を賄えません。普通は倒産危機の状況です。
でも、「私」だってリボ払いにしたり(するな)、親や友達やアコムから借金したり、とりあえずの金策さえ出来れば、なんとかクレジットカードの支払いができそうです。
「会社」にとっての死とは「約束の期日に約束のお金が払えなくなる」ことなので、ベガルタ仙台は経営危機ではありますが、とにかく支払いに遅れが出ないように、銀行の残高に気を付けながら経営しています。
(だから、年チケを買うとまとまったお金が入ってクラブが助かります。)
とはいえ、Jリーグは「債務超過であること」を認めておらず、本来、クラブライセンスのはく奪対象となります。
しかし、未曾有のコロナ禍で数多くのクラブが経営危機に陥り、しばらくの間特例措置と猶予期間で「債務超過状態であることの許し」をもらいました。
しかし、猶予期間であるFY22,23の毎期末時点で「債務超過額が増加してはならない」というルールが定められています。
「赤字だと債務超過額が増加」するので、つまり、FY22は絶対に赤字を出してはいけない年になります。
…と、いうのは半分正しくて、半分正しくない話です。
こんな話が今期(FY21)の中間決算時に出ていました。
佐々木社長は「昨年12月に社長に就任した際に『債務超過の解消が1丁目1番地の課題です』とお話しして、2年でめどをつけ、3年目で解消したいと考えていました」と当初は3年計画だったことを強調しながらも、2年で解消する方向へかじを切った。「本日の取締役会で、これを1年、前倒しして、2022年度中に債務超過を解消するために協賛金の増額と増資で対応することを了解いただきました(略)」
そもそも「債務超過が解消」されます。
「協賛金の増額(=営業収入の増加)」と「増資(=資産と純資産の増加)」で債務超過を解消ってつまり、
借金でクビが回らなくなった「私」に対し、会社からボーナスが出たり、私の才能を買ってくれた資本家が起業資金をくれたり、これですべての借金を返済しても、ちょっとは軍資金が残りそうだ、よし競馬場行くぞ。
みたいなことです。
つまり、「FY22で赤字だと債務超過額が増える⇒クラブライセンスがはく奪される」は会計上正しい予測ですが、上記の報道を踏まえると「その前に助かる」というのがもっと正しそうです。
じゃあ、
「どうせ助けてもらえるんだし赤字を恐れずにガンガンいこうぜ!」
って言いたいところですが、そういうわけにもいきません。
助けてもらうにも「限度」ってものがありますし、そんな態度のやつにカネ出ません。
しかも、「FY22以降3期連続赤字だとクラブライセンスがはく奪」されます。毎年赤字なんて放漫な経営は許しませんよ、というコロナ禍以前からのJリーグの方針です。
ということで、やっぱり私たちは「毎年黒字とまではいかなくても、慢性的な赤字体質ではない」くらいは目指さなきゃいけません。
予算組んでみた
「色々言ってるけど、結局どうすればいいと思ってんの?」
との問いには、
「もし声出しがシーズン開幕から解禁される ”IF条件” で黒字」
となる水準の費用予算
と、答えたいです。
「声出し解禁」すれば、ユアスタに熱狂が戻ります。きっと動員も回復することでしょう。
「たしかに赤字予算だけど、費用をジャブジャブ使うわけじゃないよ。声出し解禁されれば黒字になる水準の予算ですよ。」であれば、債務超過解消へご協力いただける各社(神)の皆様にご納得いただけるんじゃないかって、経営企画職的には思っています。
「声出し解禁」とは、近い将来有り得る「ある程度の日常」に含まれると思っています。
「警戒や対策を全く行わない日常」は相当未来になりそうですが、少なくとも私たちにとって熱望である「声を出して応援する」というのは決して遠くない未来だと思います。マスクさえしてれば。
(参考)
今季最終戦での「声出し応援」申請は却下されましたが、来期は100%動員できるそうです。次は「声出し解禁」かな?
声出し応援の緩和を準備 政府に技術実証を申請―J1浦和
Jリーグ、来季からの100%観客入場を正式決定!! 声出し応援は引き続き禁止
と、いうことで、
「声出しがシーズン開幕から解禁される”IF条件”」
で黒字となる水準の費用予算で、
「実際には声出しが期初から解禁されないFY22の予算」
をシミュレーションします。
予算案は以下の3バージョン作成しました。
①If 全試合声出し解禁
②Positive 後半戦声出し解禁
③Negative 声出し解禁無し
まず、「興行収入の前提」です。
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22年のJ2は22チーム、「試合数」は1試合減です。
「1試合当たりの入場者数」は以下の通り仮定しました。
①If 全試合声出し解禁:11,000人(19年はJ1で14,971人)
②Positive 後半戦声出し解禁:8,000人(①と③の中間)
③Negative 声出し解禁無し:5,000人(※)
※22年はコロナ・五輪・代表ウィークによる中断がないため土日開催前提。21年の土日開催の平均動員数は6,481人。×80%だと5,184人≒5,000人。
上記の前提で、「営業収益」はこちら。
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①If 全試合声出し解禁:19億81百万円 前年差+1億19百万円と増収
②Positive 後半戦声出し解禁:18億11百万円 同△51百万円とやや減収
③Negative 声出し解禁無し:16億40百万円 同△2億22百万円と減収
③だと色々と厳しそうな予感がしますね。
「興行収入」は、
入場料とその他(飲食等?)が前提の入場者数×顧客単価で算出。①や②の前提だとかなり収益増です。
分配金は2億8百万円で確定。J2クラブは本来は1億5百万円ですが、降格救済金に救われています…。
2021年度配分金について
「広告協賛」は、
J2降格を踏まえて前年比90%(全案一律)。
「本日の取締役会で、これを1年、前倒しして、2022年度中に債務超過を解消するために協賛金の増額と増資で対応することを了解いただきました(略)」
前述と同じ引用ですが、債務超過の解消方法として協賛金の増額も言及されいてるので、J2降格という要素と総合して前年比90%と設定。
保守的に「前年比80%」もよぎったが、「それ取締役会通らないだろ、取締役会には協賛金増額するスポンサーの取締役が出てくるんだぞ」と頭の中でリトル佐々木社長が言ってました(経営企画あるある)。
グッズ・SOCIOは観客動員数に応じて80~90%設定、動員≒熱狂に比例しそうです。
それ以外は100%。
問題の「営業費用」から「税前利益」まで一気にいきます。
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作成手順は以下の通り。
(1)「トップチーム経費」以外の「営業費用」を設定。
・事業経費は5%削減、それ以外は前年比100%。
・予備費50百万円設定、これは利益調整にも昇格へのラストピース代にも使える便利なお金。
(2)「営業外損益」「特別損益」を前年比100%で設定。
(3)①If 全試合声出し解禁の前提で、「税前利益」が10百万円(ギリ黒字)となる水準に「トップチーム経費」を設定。
「トップチーム経費」は10億39百万円、前年差△2億61百万円、前年比80%という水準になりました。そこそこ削減が求められます。
これは選手だけでなくトップチームの監督・コーチ・スタッフ(HP見る限り20人弱)も含まれる(はず)で、単価設定や体制次第で選手以外からも削減可能です。
そもそも13億円の今期予算はどこへ消えたんだって話もあります。今季は「違約金が厳しかった」なんて一部報道もありますし、来季はクエンカやマルティノスなどのの高給が予想される選手もいません。詳しい状況は不明ですが、「そうした要素が軽くなれば何とかなる水準じゃないかな?」というのが肌感です。13億円の解明はまた次の機会にしましょう…。
「税前利益」は、以下の通り。将来的にはここが黒字であるべきです。
①If 全試合声出し解禁:10百万円 と黒字になるように設定
②Positive 後半戦声出し解禁:△1億61百万円 +予備費50百万円使用可
③Negative 声出し解禁無し:△3億31百万円 +予備費50百万円使用可
個人的な超主観ですが②なら「有り」な水準に思えます。ウィズコロナと言えるシーズンで(予備費使わず)1億程度の赤字で済むのならOKじゃないですか?だめ?
③は「厳しい」印象です。これだとトップチーム経費をもう少し削らないと、債務超過を解消してもらうにしても、「放漫」な印象を与えそうです。
後は、今後の情勢をどう読むかですね。オミクロン株など予断は許しませんが今々の時点ではコロナは落ち着いています。
東京五輪の少し前、満員のEUROでマスク無しで大合唱し感染拡大しましたが、日本ならwithマスクも徹底できそうです。夏暑そうですが。
欧米の1年後に規制緩和というのも日本らしいタイミングに思えます(適当)。
政治や国民感情もあるので楽観的な予測はいけませんが、「あまり保守的すぎるのもJ2舐めてない?」とも思ったりします。
いずれにしても、私が予算案のシミュレーションするならこんな感じです。
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終わりに
いかがでしたでしょうか?
主観や「エイヤ」が入り混じっておりますが、とはいえ一つ一つ仮説を置いた数字でシミュレーションすれば、参考材料になると思っています。
また、このnoteを書くことで「関口選手が退団したのは経費削減しなければいけないから、理解すべき」と言いたいわけではないです。
むしろ、このシミュレーションをした今もなお「関口は残してほしい」と思っています。債務超過の目途が立っているのならなおさら。
この12月で36歳というベテランながら、アジリティもスキルも年齢ほどの衰えは感じないですし、それは今季もスタメン中心に28試合出場したのがその証明だと思いいます。
2列目ならどこでも、戦術次第でインサイドハーフやウイングバックも高いレベルで対応できる選手で、来季も高い稼働率で活躍してくれたと思っています。
ピッチの内外で「精神的支柱」であったこともサポーターなら言わずもがなです。
若い氣田選手や加藤選手、新加入の大曽根選手、凱旋?が噂される遠藤選手、仙台の宝の佐々木匠選手、彼らが穴を埋めるのかもしれませんが、もし代わりを獲るなら当然そのコストだってかかります。
「チームで一人ずば抜けて高い」ならともかく、少なくともチーム上位の年俸に十分見合う存在だと確信していただけに、こうしてウジウジとnoteを書いてしまいました。
むしろ、関口選手をチームに残せる理由を見つけたくてこのシミュレーションを始めたまであります。
でも、「チームや予算の編成の状況」や「債務超過はどのような計画で解消される」のか、部外者の私にはこの先の詳しい事情がわかりません。きっとその中で、関口選手と別れざるを得ない理由があった、ということなのでしょう。
たしかにトップチーム経費の削減は不可避ですし、復帰後は獅子奮迅の活躍で3人の監督の期待に応えてきた選手ですから、プロとして誠意ある評価が必要なのも間違いないです。
でも、それにしたって、なんか悪い意味ので「コンサル感」あるというか、「ここから上はバッサリ感」があるんですよねー。なんて思ったり。
(レディースやグッズの件しかり、何度かコンサルは入ってそうだけど。)
まあ、いつまでも後ろ向きでいても何も変わらないので、来年一緒に闘ってくれる選手の一報を期待してオフシーズンを過ごしましょうか。
毎年この時期って、朝早くに目が覚めて、不安と期待の入り混じる変な気持ちでニュースをチェックしますよね?自分だけ?
それにしても、「①If 全試合声出し解禁」なんてシミュレーションしましたが、これは本当に早く実現してほしいですね。もう興行収入なんて二の次で実現してほしい。
なんか誰それが「移籍決定的」みたいなニュースもありますが、まずユアスタに熱狂を取り戻して、金持ちになって、J1に戻って、関口もみんなも、もう一度迎えにいきましょうか。
金持ちは無理かもしれんけど。
(後記)
会社の予算案全然作れなくてつらい。